新型コロナウイルスによって日本の観光はこう変わる-コロナ後に広まる8つの観光スタイル-

新型コロナウイルスによって壊滅的な状況にある観光産業。3月の訪日外国人観光客者は昨年同月比で93%減少と過去最大の減少幅を記録。三井トラスト基礎研究所は新型コロナウイルスの影響で2020年の訪日外国人観光客数は311万人減少、減少に伴う消費の落ち込みは4020億円に上るとの試算を発表しました。

壊滅的な状態にある観光産業は、新型コロナウイルスと共生する段階に入ったときどのように回復し、どのようにコロナ前と変わるのでしょうか?本記事ではポストコロナで広まると予想される6つの観光スタイルを紹介します。キーワードは「複数の選択肢」「地方」です。

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国内観光需要がまずは回復、地方への観光が人気を博す

新型コロナウイルスの後遺症として「中国人観光客を筆頭にインバウンド観光客への嫌悪感・受け入れたくない気持ち」が日本国内で数年単位で継続することが考えられます。これは受け入れ側の日本としてだけでなく、日本人が欧米に観光で訪れる際も同じように思われるでしょう。インバウンドに対する嫌悪感の高まりを受けて、日本に限らず世界中の国で感染拡大のピーク後は、国境を超えた観光ではなく国内観光から需要が少しずつ回復すると予想されます。

国内観光地の中でもまず人が向かうのは地方の観光地です。都市圏は人が密集しやすい観光地が多く、首都圏=感染者が多いという印象を持っている国民は都市を避けて観光を始めることが予想されます。これは地方にとっては観光回復の追い風と言えるので、これまで注目されなかった観光情報を少しずつ出していくことで長期的にみると、これまでは来なかった層に地方は訪れてもらえる可能性があります。

スキマな観光地に注目が集まる

ハーバード大学の科学者らの発表によると、医療崩壊を防ぐにはソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)期間が2022年まで断続的に必要になります。数年単位で三密を場合によっては防ぐ場合がある、これは人が密集する人気観光地はこの先数年密集を避けるような措置が取られる可能性を意味します。

そこで注目が集まるのが「スキマな観光地」。あまり人に知られておらずそこまで人は集まらないけど魅力的なスポットを訪れる観光スタイルが広まると考えられます。これまでも近代的なマス・ツーリズムに対して着地型観光でローカルな観光情報を発信する流れはありましたが、今後は人を避けつつも魅力的な観光スポットを訪れる「スキマな観光地」の動きが加速しそうです。

スキマな観光地について日本のトップランナーである「信州のスキマを好きで埋めるWebサイト Skima信州」についての考察はこちら

アウトドア・アクティビティに人が集まる

世界で最も早くコロナの封じ込めに成功している台湾では、収束するにしたがって地方におけるアウトドア・アクティビティを楽しむ人の数が増加しています。アウトドアは三密を避けられ、青い空の元外出自粛で動かせなかった身体をのびのび動かせます。さらに1つ1つのグループがグループの輪を超えて接触することも少ないので、たとえ感染者がいたとしてもコロナは広がりにくいでしょう。地方におけるスキマな観光と共に、アウトドア・アクティビティが最も早く復活する観光分野と予測できます。

サイクリングツーリズムが広まる

自転車はアウトドア・アクティビティの1つと考えられますが、複数人で密集して何かを食べたり遊んだりするのではなく1人1人が自分の世界にこもって自然を感じながら体を動かす点で差別化されます。近年はe-Bikeも注目されており、コロナの感染拡大を防ぎつつ楽しむ観光形態として注目されるでしょう。

観光のみならず、三密を防ぐ出勤方法としても注目されそうです。特に都市圏では電車やバスはできる限り避けたほうがいい移動手段になっています。そこで環境負荷も少なく三密を避けられ健康にも良い自転車通勤はコロナ収束後に流行ること間違いなしです。

e-Bikeについてもっと知りたい方はこちらの記事→e-bikeの効果的な活用が地方の観光と地域活性化を促進する-二次交通の課題解決-

新型コロナウイルス後は関係人口・交流人口を創出する観光が盛り上がる

新型コロナウイルスは「1つの選択肢しか持たないことのリスク」を浮き彫りにしました。不確定要素が多く予測が難しいリスク社会を生きる私たちは、複数の選択肢を常に用意しておくことで「1つがダメになっても他に○○がある」状況をリスクヘッジとしてつくることが求められます。観光でも最も早く打撃を受け始めたのは「中国人観光客の受け入れに特化した旅館・ホテル」や「インバウンドのみしか受け入れない」業務形態の観光事業者でした。

複数の選択肢は居住地にも当てはまります。拠点となる家を持ちつつも第2の故郷になるような地域と関係性を常に持つ「関係人口」は移住促進の流れの中で近年注目を集めており、リスクヘッジとして関係人口は今後ますます増えていくと予想されます。観光業界もこの流れに乗って「関係人口を増やすスタイルの観光」が人気を得ていくでしょう。それはこれまで以上に観光先の地域と密につながるような観光の在り方です。

関係人口について詳しく知りたい方はこちらのページで紹介している本をぜひご覧ください。→【2020年最新版】関係人口おすすめ本5選-入門書・事例集・ソトコト他-

新型コロナウイルス後は別荘・第二の拠点がある観光が盛り上がる

複数の選択肢を持つライフスタイルとして「別荘」があります。新型コロナウイルス拡大時には、緊急事態宣言前に軽井沢のような別荘地に避難する人が多くいて問題となりましたが、まさにこれはリスク社会において2つ目の選択肢としての別荘保有に価値があることを意味しています。

新型コロナウイルスのようなウイルスだけでなく、地震や地球温暖化の影響による大型台風などの災害リスクへの保険としても別荘のような第2の拠点は需要を増すでしょう。昔は地縁や親族(イエ)のつながりで複数の居点やいざというときの居場所は確保できましたが、核家族化し個人の孤立化が進む現代は昔のような共同体的セーフティーネットはありません。

第二の拠点は、新築の所有が難しい人は多いので年々地方で増加する空き家を改装した別荘や、定額のサブスクリプションで全国の拠点が利用できるADDressのようなカタチで今後注目を集めると予想されます。

別荘やADDressのような二拠点居住・多拠点生活についてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

→二地域居住とは?1年間実践してわかった二地域居住のメリットデメリット

→「二地域居住」と「二拠点生活」の違いはなにか

新型コロナウイルス後はヘルスツーリズム・メディカルツーリズムが広まる

新型コロナウイルスによって日々の免疫力向上や体調を整えておくことの大切さに注目が集まっています。観光分野では新型コロナウイルス後に医学的な根拠に基づく健康回復や維持、増進につながる観光ヘルスツーリズムや、インバウンドでは居住国とは異なる国や地域を訪ねて医療サービス(診断や治療など)を受けるメディカルツーリズムがコロナ前よりも普及すると予測できます。

観光地に行かなくても観光できるVR観光が広まる

不要不急の外出自粛・人が密集する場所を避ける行動は前述したように数年単位で続くと予想されます。そこで普及するのが観光地に行かなくても観光できるVR観光や動画での室内観光です。新型コロナウイルスの影響をうけてすでにVR観光は一部で始まっています。

山口県てしま旅館はキャンセル客からの残念という声に、VRで名物福ふく懐石を旅館で食べる体験ができるサービスを開始。2~3月で約100万円分キャンセルがあったというが、VR企画をキッカケに予約してくれたお客さんもいるとのことです。ふぐ料理セット(19,500円)もリリースから数日で15セットの売り上げがありました。

VR観光は高齢化により出歩くことが難しくなった高齢者が観光に行ったような気分になれるコンテンツとしても注目されており、観光地に行かない観光はこれからますます注目を集めそうです。

てしま旅館のように新型コロナウイルスを知恵で乗り切ろうと奮闘する企業の事例を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

→社会のピンチをビジネスチャンスに変えるために-新型コロナウイルスと過去の事例より-

まとめ-新型コロナウイルスは観光需要を大きく変えた-

今日まで世界中で国際旅行者数が増加の一途をたどってきました。観光産業は経済的に豊かになる国が増えれば増えるほど余暇活動として人気を博し規模は拡大します。新型コロナウイルスによって数年間は停滞しますが必ずいつかはコロナ前の水準を超えるでしょう。しかしコロナ後の観光需要はコロナ前とは確実に異なるものになります。新型コロナウイルスによって観光を支える経済状況や社会はどう変わるのか、人々の価値観やニーズはどう変わるのか引き続きKAYAKURAではウォッチしていきます。

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。