スキマ信州とは、2018年にスタートした長野県のローカルWebメディアである。
スキマ信州のキャッチコピーは、「信州のスキマを好き!で埋める長野県のローカルwebマガジン」。今まであまり知られてこなかった場所やお店などの隠れスポットや、信州通ならではの視点から紹介される信州の楽しみ方が複数のライターによって書かれている新しいカタチのWebメディアだ。
Skima信州(スキマ信州)〜信州のスキマを好き♡で埋める長野県のローカルwebメディア
本記事は、スキマ信州が提示する新しい観光のあり方と「スキマ」というコンセプトと現代社会のつながりについて、社会学的視点から考察したものである。
世界のフラット化が進んだ現代において存在感を増すスキマ
スキマ信州のような、ニッチなものにフォーカスするスタイルのメディアは英国の社会学者アンソニー・ギデンズがいうところの後期近代的(late-modernity)なメディアであるといえる。後期近代においては、通信手段の発達によって人間の身体は場所にとらわれなくなる(脱-埋め込み)と同時に、交通インフラの発達などによって、格段に人類の移動性(mobility)が増していった。
それと同時にグローバル化の波に飲み込まれた21世紀は、米国のジャーナリストであるトーマス・フリードマンがいうように世界のフラット化が急速に進んだ時代でもある。フラット化した世界においては、米国の社会学者ジョージ・リッツァが提唱した世界のマクドナルド化が進み、その合理化の徹底から生じる生活領域や消費の在り方の変化によって世界中どこに行っても同じような景色が広がるようになった。
郊外を走れば、マクドナルド、ユニクロ、ダイソー、コンビニ…というように。しかしその一方で、交通インフラが発達したことで世界のユニバーサル化は進み、今までは遠い観光地や秘境を訪れることができなかった高齢者や子供たちも世界中を旅できるようになった。
フラット化/コモディティー化/グローバル化に対抗するローカルWebメディア
フラット化する社会・グローバル化する社会おいてはその反動としてローカルなものを希求する動きが高まる傾向にあり、実際に世界各地でそうした傾向がみられる。世界的なポピュリズム政党の台頭に始まり、日本国内に目を向ければ近年の地方移住トレンドや地域づくり・地域活性化トレンドも、その流れの一部と解釈することが可能である。
このような時代の流れの中で新たに始まったWebマガジンであるスキマ信州は、まさにフラット化・グローバル化する社会おいてローカルなものを希求する究極的な形であるといえる。
世界がフラット化しどこでも誰でも行ける時代になり、且つ情報技術の革新によって世界中の情報にアクセスできる時代になった今日においても全然知られていない超ローカルな場所は、逆に価値が高まっているきているといえるのではないだろうか。
新自由主義的な個人主義/排除型社会への疑問符を突き付けるWebメディア
そんな反転して価値が高まっている超ローカルなものを、一部の層だけでなく広く一般の人にも知ってもらえたらいいなというスキマ信州の姿勢は、「自分さえよければそれでいい」という新自由主義的な個人主義の高まりによって進んだ排除型社会に対して疑問符を突きつけるメディアであるとも言えるのではないだろうか。
「こんな山奥にも人は住んでいる」「ただひたすらに地域の人のためにこだわりを持ってお店を営んでいるおばちゃんがいる」、そういった超ローカルな事柄に光をあてるスキマ信州は、新しいオンラインメディアの在り方を私たちに提示している。
それは、キャッチコピーにも象徴的に表れている。「信州のスキマを好き!で埋める長野県のローカルwebマガジン」という29文字のキャッチコピーのうちに「信州」「スキマ」「長野県」「ローカル」というローカル志向の言葉が4度も登場するのである。
スキマを好きで埋めることでつながるものがある
「スキマ」という言葉には“物と物の間”という意味以外に、特にマーケティングや社会ネットワーク理論界隈においては、“潜在的なつながりの可能性がある場所”“潜在的な需要がありながら誰も手を付けずに隙間になっている部分”という意味もある。
グローバルなものばかり見ていても、潜在的に人々が求めている幸せは見つからない。現代社会を生きる私たちは、今こそ超ローカルな「スキマ」に目を向けるべきではないのだろうか。そこには、不確実性が高く不透明な時代を生きる私たちが生き抜くヒントが隠されているかもしれない。そんなことに気が付かせてくれる超ローカルなWebメディア、それがスキマ信州なのである。
まとめ-Skima信州をもっと知りたい方はこちらから-
スキマ信州の成り立ちや、編集長が考えていることに興味がある方は、以下の信州池田活性化プロジェクト「Maple Tree」のHPに掲載されているフリーペーパーいけだいろ14号をご覧いただきたい。