地方は新型コロナウイルスによって何が変わり何が変わらないのか

世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスは、これまでの地方の在り方・都市の在り方を根底から覆すほど大きな影響を私たちに与えています。都市封鎖まではいかなかったものの、不特定多数の人たちとの接点が多い都市のリスクを浮き彫りにすると同時に地方の共同体性が依然高いことなどが顕在化されています。

新型コロナウイルスと共生するフェーズに入った今、地方はどうなっていくのか、地方移住や地方創生・地域活性化は新型コロナウイルスの影響をどの程度受けどのように変わっていくのかみていきましょう。

新型コロナウイルスは地方移住を加速させる

新型コロナウイルスは都市がいかに多くのリスクと私たちが共生しているかを顕在化させました。これは東日本大震災のときも同様です。2011年は電気系統が遮断されたことにより身動きが取れず家にも帰れない、店からは商品が一気になくなるという体験を都市在住者はして「都会はいざというときに危ない」と感じました。その結果、地方移住が加速しました。

新型コロナウイルスも同じように、不特定多数の人との接点の多さがウイルスへの感染リスクを高めていたり、緊急事態宣言を見越しての極度な買い占めが起こったり、日常的なつながりがないことで近隣住民との助け合いが難しかったりと不安を感じる体験を多くの都市在住者がしました。2011年同様に都市のリスクを肌で感じた都市在住者のなかで、地方移住を検討する人は多くなることが予測されます。2011年当時は難しかったテレワークや電子決済の技術が都市地方問わずできるようになったのも地方移住を加速させるうえで見逃せない要素です。

新型コロナウイルスは関係人口・多拠点居住者を増やす

新型コロナウイルスを含む人類にとって予測不可能な出来事がさまざまなカタチで発生する現代において、私たちはリスクヘッジとして「複数の選択肢を持つ」ことが要求されます。1か所に住み、1つの仕事をし、1つの移動手段だけを使って生きていると、それらが予測不可能なリスクによってダメージを受けた際に逃げ場がなくなってしまいます。これは企業も同じです。

新型コロナウイルスから私たちが学ぶべきは「複数の選択肢を持つこと」であり、その代表例が関係人口や多拠点居住というライフスタイルです。1つの地域に全ての人のつながりや生活機能を集約させておくのではなく、いざというときに助けてもらえるような人との関係を持っていたり、避難できる場所を持っておくことは予測不可能性が増す現代において求められる危機管理能力となっています。都市在住者が地方とのつながりを持続的にもち、都会以外の場所に複数の拠点を持ち、会社に行かなくてもテレワークで仕事ができる状態を作っておく、そんなライフスタイルが今後ひろがっていくと予想されます。

新型コロナウイルスにより地方の中小企業は相当なダメージを負う

新型コロナウイルスは地方の地域経済を支える中小企業に大きなダメージを与えています。岡山市などの調査によると回答のあった301社のうち45%に当たる134社が前年同期と比べた売り上げで「影響が出ている」と回答。現時点で売り上げがダウンしていなくても予約や受注が減って「今後影響が出る見込み」と答えたのも82社(27%)ありました。岡山県の市内中小企業の72%がコロナウイルスによる影響があると回答しており、この数は今後さらに増えると予想されます。

岡山県以外の地方都道府県でも同様の影響は出ており、数年単位で中小企業が影響を受けることは必至です。店内で食べず家で個別に食べられるようテイクアウトに対応する店が増えたのも新型コロナウイルスの影響です。消費者が食べ物を取りに行く「テイクアウト」に加えて、減少による税収減・高齢化・公共交通の衰退などが絡み合うことで数十年前は普通の文化としてあった「出前」文化が地方で改めて広まると予測できます。(大手フードデリバリーサービスはコスパが悪くユーザーも付いてきづらいためなかなか地方には進出できない。)

新型コロナウイルスにより地方の郊外化はさらに進む

地方の地元密着店は外出自粛によりとても大きな影響を受けています。今の状態がもう数か月続けば潰れるという事業者も多くいます。モータリゼーション化によって駐車場がない地元の商店街から人々は離れ郊外化した場所に新たにできたショッピングモールやチェーン店にこの数十年で人々は流れていきました。モータリゼーション化と郊外化の波の中をなんとか生き残った店舗や、波の後に空き家になった場所に入った新世代の店舗が、今回の新型コロナウイルスによって大きなダメージを受けているのです。

リスクと常に共生し、いつ大きなダメージを受けるか分からない現代において、チェーン店は店舗を複数持つことでリスクを分散しダメージを軽減することができます。しかし地方の個人店はチェーン店のようなリスク分散ができません。チェーン店よりも愛のあるファンが多いことが個人店の強みではありますが、サスティナブルにファンを獲得し続けるのも難しいことです。新型コロナウイルスによってチェーン店のレジリエンスと個人店の厳しさが顕在化しました。

新型コロナウイルスにより地方で多い「会って話す」ことの価値が変動する

新型コロナウイルスにより人と接することを極力控えるために、多くの企業や団体がオンライン上でのビデオ通話を導入しました。これまで地方では片道1時間以上かけて会議に参加するような文化が当たり前に残っているところが多かったですが、年齢層が若くシステムが導入できるところから変化していく大きなキッカケになっています。一方、地方におけるまちづくりや地域活性化のための会議は年齢や所属が多様なケースが多いです。一部の人だけがオンラインで参加し多数がオフラインで参加しているような会議では意思の疎通が難しく後々、しこりを残すこともあるので注意が必要です。

地方の公的でない場でも「会って話す」ことの価値は変わっています。これまで当たり前のように話せていた人たちと急に「話せなくなる」ことで、逆に「会って話す」ことの価値が高まっています。都会では、会って話せる範囲に住む近隣住民とのつながりがなく誰とも話せないことがある一方、地方では日常的に近隣住民とのつながりが構築されていることが多くあります。移動が制限されて遠くの知り合いとは話せなくても、近所の知り合いとなら会って話せる。新型コロナウイルスによって、地方のご近所同士「会って話す」文化の価値が高まっています。

まとめ

新型コロナウイルスのような新種のウイルスが発生することは今後なかなかないかもしれないですが、新型コロナウイルスのような予測不可能なリスクは今後も人類を襲い続けます。そのたびに都市と地方のメリットとデメリットを人々は天秤にかけるでしょう。新型コロナウイルスが地方にどのような影響を与えるのか、今後も注視していく必要があります。

KAYAKURAでは地方移住・新しい時代のライフスタイルに関する講座や勉強会の講師・WSのファシリテーション、執筆、関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンドなど関連事業のサポート/コーディネートを行っております。お困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

参考

売り上げ影響7割超 中小企業調査 岡山市など、新型コロナで

-ラジオ版KAYAKURA-

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KAYAKURAは「新しい地域と観光を考える」をコンセプトに、地域と地域にまつわる言葉や動向を深く考える地域考察メディアです。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.