「二地域居住」と「二拠点生活」の違いはなにか

haluta hakuba

2つの拠点を持ったライフスタイルが2000年代以降、注目を集めています。2006年頃に行われた国土交通省の『二地域居住に対する都市住民アンケート調査結果』(平成16年)によると、ほぼ半数が将来二地域居住を実践してみたいと回答しました。現在ではこの割合はさらに高くなっているでしょう。

ここまでで言葉の使い方に違和感を持った人がいるかもしれません。「二地域居住」と「二拠点生活」はどう違うのか?と。どちらの言葉も明確な辞書的な意味が当てはめられている言葉ではありませんが、使われる文脈や背景には少なからず違いがあります。

分析を通してみえてきたのは二地域居住が「地域」とのつながりを強調するのに対し二拠点生活は「住居」「居住スタイル」とのつながりを強調することでした。

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二地域居住とは都市と地方部に2つの拠点をもった新しいライフスタイル

二地域居住を制度面から支援する国土交通省によると、二地域居住とは「都市と地方部に2つの拠点をもち、定期的に地方部でのんびり過ごしたり仕事をしたりする新しいライフスタイルの1つ」を指します。

国は地方における定住人口や若者の数を増やすための方法の一つとして二地域居住を推進することで、都市と地方の人口バランスを是正することを目指しています。

国都交通省は平成19年(2007)から二地域居住という言葉を用いて二地域居住に関する調査を行っています。それまでは「半定住」という言葉が使われていましたが、2004年度に公開された国土交通省・農林水産省の「半定住人口による多自然居住地域支援の可能性に関する調査」あたりから「二地域居住」という用語を主に使うようになりました。

この報告書の中では「議論の過程で、当初の『半定住』という名称を『二地域居住』へと変更」したという記述もあることから、「二地域居住」という言葉は2004年頃に誕生したといえるでしょう。

二地域居住の目的は持続可能な地域をつくるための人材を確保すること

国土交通省のWebサイトによると政府は二地域居住を推進する理由を以下のように説明しています。

多様な価値・魅力を持ち、持続可能な地域の形成を目指すためには、地域づくりの担い手となる人材の確保を図る必要があります。 しかし、国全体で人口が減少する中、すべての地域で「定住人口」を増やすことはできません。そこでこれからは、都市住民が農山漁村などの地域にも同時に生活拠点を持つ「二地域居住」などの多様なライフスタイルの視点を持ち、地域への人の誘致・移動を図ることが必要となります。

http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/kokudoseisaku_chisei_tk_000073.html

要約すると人口が集積する都市の人々が地方の地域に拠点を持ちつながりが生まれることで、地方の地域づくりの担い手を確保するとともに都市と地方の人口バランスを是正することにあります。

二拠点生活とは都心回帰からの反動と拠点確保の多様化で誕生した概念

二拠点生活の意味を調べるためにGoogleで検索したところ「二地域居住」のときは政府のページが1ページ目で多くヒットしましたが、「二拠点生活」のときは1ページ目に一つも政府のページがヒットしませんでした。これは「二拠点生活」という言葉が政策や制度を推進するためではなく、民間から出てきた言葉であることを表しているといえます。

二拠点生活のもう一つの特徴はWebで検索した際に上位に「引っ越し業者」「不動産会社」のページがいくつかヒットする点です。二地域居住が「地域=都道府県/市町村」を重要視するのに対して、二拠点生活は「どこにどのように拠点を持つか=物件/居住スタイル」にフォーカスした言葉であることが分かります。

SUMMO副編集長 笠松さんによると二拠点生活を送る人が増えている理由は主に2つ考えられるといいます。1つ目は都心回帰からの反動で自然やコミュニティとのつながりを地方での暮らしに求める人が増えていること。

2つ目はシェアハウスやゲストハウス、古民家のDIYなど2つ目の拠点を確保する方法が多様化したことです。シェア文化の広まり、地方物件の価格低下、空き家増加などによって、一定以上の収入が必要だった二拠点生活を多くの人が選択できるようになったのです。

二地域居住と二拠点生活は3つの観点から違いを整理できる

二地域居住と二拠点生活の違いを整理すると以下のようになります。曖昧な部分は明記ししておらず、書きに当てはまらないものもありますが傾向は以下のようになります。

二地域居住二拠点生活
政策制度的意味合い強め弱め
「地方」との関連あり必ずしも関連しない
フォーカスするもの地域住居/居住スタイル

二地域居住が「都市と地方に2つの拠点をもつ」という点を強調するのに対し、二拠点生活は「都市と地方に1か所ずつ拠点をもつ」ことだけを表す言葉ではありません。都市の中に2つ拠点を持つ、地方で2つの拠点を持つなども二拠点生活に含まれます。

二地域居住が比較的年配層のライフスタイルと関連し政策や制度の用語としても使われることが多いのに対し、二拠点生活は若者の新しいライフスタイルや働き方、住居の選び方を指す言葉として広がっており政策や制度の用語として使われることはあまりありません。

まとめ-二地域居住と二拠点生活の違いは「地域」か「居住スタイル」か-

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二地域居住と二拠点生活は言葉の発生源が異なることは考察を通してお分かりいただけたかなと思います。二地域居住が「地域」とのつながりを強調するのに対し二拠点生活は「住居」「居住スタイル」とのつながりを強調します。

自身が実践したいことが「地域」「居住スタイル」「働き方」どれと強く関連するのかを意識すると同時に、行政や推進者側で言葉を使う際にも違いを意識して発信することが重要になってくるでしょう。

新しい時代のライフスタイルや働き方に興味関心がある方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。

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参考資料

日経ARIA:憧れの2拠点生活「もう1つの故郷」はいくらで買える?

国土交通省:二地域居住の推進

国土交通省:半定住人口による多自然居住地域支援の可能性に関する調査

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。