二地域居住とは?1年間実践してわかった二地域居住のメリットデメリット

働き方改革や地方創生の流れで注目を浴びる二地域居住。調査によると首都圏に住む人の中でおよそ半分が都市と地方の二地域居住に興味関心があると回答しています。

二地域居住にはさまざまなメリットデメリットがあります。「どこに拠点を置くのか」「どのようなワークスタイル/ライフスタイルか」「家族構成」などでメリットデメリットは変わってきますが、今回は東京と長野県で二地域居住を実践する私が一個人として感じるメリットデメリットを紹介します。ぜひ参考にしてください。

二地域居住とは?

二地域居住を制度面から支援する国土交通省によると、二地域居住とは「都市と地方部に2つの拠点をもち、定期的に地方部でのんびり過ごしたり仕事をしたりする新しいライフスタイルの1つ」を指します。国は地方における定住人口や若者の数を増やすための方法の一つとして二地域居住を推進することで、都市と地方の人口バランスを是正することを目指しています。

二地域居住と二拠点生活の違いは?

「二地域居住」と似た言葉に「二拠点生活」という言葉があります。二地域居住が「都市と地方に2つの拠点をもつ」という点を強調するのに対し、二拠点生活は「都市と地方に1か所ずつ拠点をもつ」ことだけを表す言葉ではありません。都市の中に2つ拠点を持つ、地方で2つの拠点を持つなども二拠点生活に含まれます。

二地域居住が比較的年配層のライフスタイルをイメージして使われ政策や制度の用語としても使われることが多いのに対し、二拠点生活は若者の新しいライフスタイルを指す言葉として広がっており政策や制度の用語として使われることはあまりありません。

二地域居住が「地方創生」「都市と地方の人口バランスを整える」ことを政策制度的に目的として用いられることが多いのに対し、二拠点生活は「新しい働き方」「ワークライフバランス」の文脈で用いられることが多いのも特徴といえるかもしれません。

二地域居住の実践例

私は2019年4月~現在まで東京都国立市と長野県で二地域居住を実践しています。毎週、平日月曜日~木曜日は東京のアパートを拠点に大学院で研究や仕事を行い、金曜日~日曜日は長野県の家を拠点に地方での仕事をこなしています。

移動手段は高速バスもしくは特急もしくは新幹線です。後程触れますが二地域居住を実践するうえで重要なのは「二地域間の距離」と「交通費・拠点費」です。私の場合は長野県が首都圏でIT系の仕事を行う人向けに設けている補助金を活用しているため交通費や拠点費があまり気になりませんが、企業の負担なくすべての交通費や拠点費を自分で賄うなのは正直きびしいです。

二地域居住のメリットデメリット

二地域居住にはさまざまなメリットデメリットがあります。「どこに拠点を置くのか」「どのようなワークスタイル/ライフスタイルか」「家族構成」などでメリットデメリットは変わってきますが、今回は東京と長野県で二地域居住を実践する私が一個人として感じるメリットデメリットを紹介します。ぜひ参考にしてください。

二地域居住のメリットⅠ 生活にメリハリが生まれる

二地域居住は昔の文豪が普段生活する場所と仕事をする為にこもっていた温泉宿のような使い分けができるかなと思います。私の場合は東京にいるときは東京にいないとできない仕事や研究を、地方にいるときは地方にいるときにしかできない仕事や付き合いをこなすようにしています。

拠点を変えることで頭のスイッチが切りかわります。平日都会で仕事をしている頭のまま土日も都会で休んでいると心身があまり休まらない感覚の人もいるのではないでしょうか。二地域居住によって強制的に暮らす場所を変えることで仕事のときは仕事、休みときは休む、もしくは都会にいるときは都会の仕事、地方にいるときは地方の仕事というカタチでメリハリのある生活ができるようになります。

二地域居住のメリットⅡ 多様な視点・価値観を得られる

人間はずっと同じ環境に身を置いていると知らないうちに視野が狭まり価値観やスキルが固定化してきます。グローバリゼーションによって人と物と情報の移動性が高まり多様な価値観を持った人々が行きかうこれからの時代に、視野が狭まり価値観やスキルが固定化することはあまりいいこととはいえません。

二地域居住を実践し定期的に異なる文化や価値観に触れることで、自然といままで気がつかなかった視点や感覚を身につけることができるようになります。特に都市にいながら地方を相手に仕事する人や地方にいながら都市を相手に仕事する人は、仕事相手の視点を手に入れることが必要不可欠です。二地域居住はビジネスを成功させるためにも効果的な選択肢なのです。

二地域居住のメリットⅢ 人脈・ネットワークが広がる

メリットⅡとも関連しますが、二地域居住を実践することで人とのつながり(社会的ネットワーク)が広がります。1990年代以降注目される社会関係資本の概念においても「弱い紐帯の強さ」という言葉で、多様な人とのつながりが重要であるとされています。

アメリカの社会学者グラノヴェッターは、転職する際に誰のアドバイスや勧めがより参考になったのかを約280人に調査しました。明らかになったのは、強い紐帯で結ばれた間柄の人よりも、弱い紐帯の間柄の人からのアドバイスのほうがより参考になったということです。 強い紐帯で結ばれた間柄の人たちは自分と似たような価値観で暮らしているので、目新しいアイデアは出てきにくいですが、弱い紐帯の間柄の人は、よくも悪くも無責任に新しいアイデアを提供してくれる」ということなのです。

二地域居住は強い紐帯で縛られた日常から自身を開放し、新たな出会いやアイデアをもたらす弱い紐帯を構築していく可能性があります。二地域居住はビジネスのみならず、恋愛や趣味などさまざまな面で新しい発見をもたらし人生を豊かにするのです。

→弱い紐帯についてもっと知りたい方はこちら

二地域居住のデメリットⅠ 交通費が予想以上にかかる

私が二地域居住をはじめて一番驚いたのが交通費です。毎週東京と長野県を高速バス、特急もしくは高速バスで行き来していますが単純計算すると1か月で1往復(往復約10,000円)×4週=4万円、1年間で約48万円交通費でかかることになります。

高速バスだと東京~長野県は往復約6000円で1か月24,000円、1年で約28万円ですが、特急や新幹線じゃないと行き来が難しい場所に拠点を構えている場合は往復約12,000円で1か月48,000円、1年間で約60万円弱交通費でかかることになります。

二地域居住を実践する前に「どの交通手段がどの程度お金がかかるのか」「どの交通手段だと最も安く行き来でいるのか」「各交通手段の頻度と乗り心地」をしっかり調べたうえで拠点を決めることをおすすめします。私は乗り物酔いに強いので毎週の移動時間が集中して仕事したり読書できる充実した時間になっていますが、乗り物酔いに弱い人はそのあたりも考えて拠点を決める必要がありそうです。

二地域居住のデメリットⅡ 荷物や家財道具が2倍必要

二地域居住を実践する際、両方の拠点で同じものが1つずつ必要になります。私の場合は長野県の拠点は一戸建てで東京の拠点はアパートですが、両方の拠点に1つずつ以下のようなものがあります。これらはどれも二地域居住を始めた際に購入したものです。

  • 寝具
  • 洗濯機
  • 冷蔵庫
  • 書斎道具
  • 調理器具
  • 電子レンジ

片方の拠点がホテルやゲストハウスでない限り、二地域居住を実践する場合は初期投資が数十万円単位で必要となります。上記に追加して両方の拠点が賃貸の場合、純粋に2倍賃貸料金を毎月支払う必要があります。交通費にプラスしてこれらの費用がかかることは実践前には盲点になりやすいので注意しましょう。特に二拠点居住が短期間で終わる見込みがある場合、全てを購入するのはもったいないのでシェアサービスやリースをうまく活用してみるといいかもしれません。

二地域居住のデメリットⅢ 不測の事態に対応しにくい

長野県にいるときに東京で急遽打ち合わせしないとならない状況がたまにあります。逆もしかりです。そのときに拠点が1か所であれば先方も「○○さんは東京にいるから東京で打ち合わせで大丈夫だな」とお互いにアクセスしやすい場所で打ち合わせができます。しかし二地域居住者のライフスタイルは関わる人にとっては分かりづらいことが多いため、長野県にいるときに東京で打ち合わせが入ることがあるのです。

逆に「○○さんは長野県にいるから定期的に会う仕事を任せられるな」と先方が考え仕事を振ってくださったとき、週の半分以上は東京にいるから受けられないということもあります。

仕事のみならず家族が急に体調を崩したり、趣味縁で急な飲み会の誘いが入ったりしたときに早くても3時間後以降でないと合流できません。二地域居住を実践する際は常に数週間後まで予定を確定させ計画的に動く&自身の動きを周辺の人と常に共有する必要があります。計画を立てて動かないと両方のつながりが薄くなってしまうのです。

まとめ-二地域居住は複数の側面から検討することが大切-

二地域居住は「どことどこに拠点を置くのか」で全くライフスタイルやワークスタイルが変わります。交通費、初期投資、家族の理解、職場や国からの補助などさまざま条件面を整理したうえでいま最も実践したい生き方ができる場所を拠点に選びましょう。最近は短期リースやシェアハウスなど安く二地域居住が実践できる仕組みも整ってきているので、まずは複数の場所で試してみるのもいいかもしれません。

充実した二地域居住を実践するための参考になりそうな記事をいくつかピックアップしたので、こちらもぜひご覧ください。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。