地方移住でFIRE(早期リタイアと経済的自立)は可能なのか

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「人生100年時代」とは『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の著者であるリンダ・グラットン氏が提唱し広まった考え方です。

医療が進歩し平均寿命が伸びる現代社会において、私たちが働く時間は伸びる一方です。この事実は多くの人々にとって労働にかられる時間が伸びることを意味しており「お金がないけど長寿」というツラい現実に直面する可能性も高くなっているでしょう。

このような時代において昨今、経済的に自立し早期リタイアを実現する「FIRE(ファイア:Financial Independence, Retire Early)」が若者世代を中心にムーブメントとなっています。早期リタイアと聞くと多額の貯金が必要なイメージがありますが、FIREが注目を集める理由は、それが誰でも目指すことができる概念だからです。

若者世代のFIREは、中高年の早期引退事情と重なる部分も多いです。そこで語られるのが「地方移住でFIREを実現する」という選択肢。しかし果たして本当に地方移住でFIREは実現可能なのでしょうか?ここでは、地方移住研究者である筆者が地方移住とFIREの関係性について解説していきます。

なぜFIRE実現のために地方移住なのか

FIREは「お金をたくさん貯めて早期退職する」という単純なものではありません。従来の早期退職のイメージはお金持ちのみが実現できるものでしたが、FIREは生活費や出費を極限まで抑えることで数千万で現実的なリタイアが可能というものです(このラインに達することができる人のほうが少ないのが現代、日本社会の実態ではあると思う)。働きながら計画的に貯金と節約を行い、退職後も節約を続ける。これが従来のものとFIREの違いです。

FIREでは節約や貯金を積極的に行うことが前提となります。この節約の手段として地方移住が注目を集めているのです。新型コロナウイルスの流行などによりテレワークやリモートワークが注目されました。大都市圏の高い賃貸料を払い続けるのではなく地方の物件を購入もしくは借りたほうが安いのではないか、生活費も安くなるのではないか。こういった理由が背後にはあるのです。

この点について筆者は以前、別の記事で「地方移住のお金事情-生活費は?東京と比べて出費は?資産維持の手段として有効?-」というタイトルのもと、地方移住後の生活とお金の関係について解説しているので、詳細はこちらをご覧ください。

今回取り扱うのは、地方移住の足掛かりとして活用可能な自治体の補助金です。FIREを実現するためにはできる限り出費は押さえたいところ。自治体の支援策を効果的に活用することで出費は押さえられるのではないか、そういった声が多数寄せられていたため今回は考察&補助金紹介記事を書いています。

同じ地方でも目指すライフスタイルと性格によって選ぶ先は異なる

地方自治体の中には移住定住に際して充実した補助金を設置しているところが増えています。傾向としては事項減少が進んでいながら自治体の歳入が多い地域(工場が多い)や、産業構造において建設業が占める割合が多い地域では補助が手厚いと筆者は感じています。

一方で移住者が多く歳入が多い地域でも、投資目的の物件購入が増加し地元住民が住むことが難しくなっている地域など(京都府、リゾート地として訪れる人が多い地域)では、移住支援が薄いもしくは物件購入のハードルが高い傾向にあります。

その他には、土地の価格や支援内容に魅かれて都市圏から遠い場所に移住した場合、日々の生活コストが予想以上にかさむこともあります(交通費など)。この点においては同じFIREの実現でも大きく道は2つにわかれるといえます。

もしも農村的ライフスタイルや田園回帰に憧れて地方移住する場合には、町村などで都市圏から離れた場所で農業を営み自給自足するようなライフスタイルが節約になり持続可能な生活といえるでしょう。

一方で周辺住民とのコミュニケーションはあまりしたくない、ある程度アクセスがいい場所がいいという人は地方でも都市圏に住むのがいいでしょう。自身の目的と正確に合わせて居住地を選ぶことが失敗しない地方移住によるFIRE実現のための道です。

移住定住のための補助金・支援金が充実している自治体ピックアップ

自治体の移住定住補助金は行政のスタンスによって大きく異なります。ここでは数ある自治体の中でも特徴的な施策を実施している自治体を紹介します。

なおここで紹介する自治体の例は、あくまで「金額が大きい」「他と比べて特徴的である」というだけで、「移住先としてよい自治体である」ことを直接は意味しません。移住したあとの愛称は移住希望者個々人の目的や理想によって大きく異なるので、その点は注意して自治体の施策をみるようにしましょう。

福井県池田町は、周辺景観に配慮した住宅を池田町内に新築または増築する場合、その経費の30%(新築の上限350万円、増築の上限200万円)を補助する「住み家新築・増築支援事業」を行っています。

申請できる方は、45歳以下の家族と同居する方(結婚・移住型)か、中学生以下の子どもを養育する方(子育て型)で、新増築後10年以上定住する方です。

池田町はこのほかにも45歳以下の方が2世代以上の家族で同居するために、住宅の新築、増築、改築を行う場合、経費の30%(上限500万円)を補助する住宅多世代化支援事業や、恒常的に居住するために、または、賃貸借するために、空き家を改修する経費の30%(上限200万円)を補助する古民家等再生改修補助事業を設置しています。

北海道赤井川村は、村内に建築基準法その他関係法令に適合した住宅を新築し、その住宅に住所を有し(共同住宅の場合は、入居者のみでも可)10年以上居住する方を対象に300万円を支給する赤井川村移住・定住支援事業を行っています。

優遇措置として、新築住宅建設後、3年間は固定資産税が半額になります。またその他の支援として小中学生の給食費無料や中学校卒業までの医療費無料などを行っています。

最後に紹介するのは岡山県備前市です。備前市では夫婦のいずれもが50歳未満の世帯で、2018年4月1日以降に新たに賃貸借契約を締結し夫婦ともに同一世帯として入居している世帯を対象に、家賃の1/2位倍で4万円を上限とした若年夫婦世帯家賃補助事業を行っています。

自治体としては物件を購入し定住を見据えて居住してもらうことを望むところがほとんどですが、近年の関係人口を推進する流れや、定住のためのステップとしての賃貸の見直しなどの流れにより備前市のようなケースも増えてきそうです。

最後に-地方を一括りにしないことが地方移住によるFIRE実現のコツ-

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本記事ではFIRE実現のための手段としての地方移住についてみてきました。一括りに地方と言っても、地域の在り方はさまざまです。人口規模も、税収も、活性化度合いも異なります。

文中でも触れましたが、もしあなたが地方移住という手段を用いてFIREを実現したいのならば、目的設定とそれに沿う地域選択が重要です。

FIRE実現のためには数十年スパンで自身の人生をプランニングする必要があります。頑張って考えた目的でさえも不確かなリスクによって崩れる時代なので、いくつかのケースを考えておくことは重要でしょう(この点についてより深く知りたい方には以下の『ノマド』という本がおすすめです)。

そして目的がハッキリしたら、その目的に沿うような地域を選択することが大切です。より自分とあう地域or合わない地域の探し方はこちらの記事「移住したくない自治体の特徴は?見分け方チェックリスト」をご覧ください。

この記事を書いた人

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Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.