なぜあの人は「質問力」が高いのか?-質問力は「疑問」「目的意識」「想像力」で向上する-

職場でのワークショップ、取材のとき「もっと質問力が高かったら…」と悩んでいる人は多いと思います。質問力が必要な理由として、誰もが情報発信できる時代になったこと、多様性が増して合意形成に至るのが難しくなったことなどが挙げられます。

質問力が高い人に共通しているのは「批判的思考力」と「想像力」そして「目的意識」です。では一体、どうすればこれらの能力は身につくのでしょうか?

質問力は「ちょっとの意識」と「正しい努力」を続ければ必ず向上します。この記事では延べ300人以上にインタビューを行い、プロのファシリテーターとしてさまざまなイベントや講座に登壇、社会学における社会調査分野で質問について学び研究する筆者が実践する「質問力が向上する10の方法」を紹介します。ぜひ今日から実践してみてください。

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常に物事を疑う・批判的な思考/眼差しを身につける

質問は「疑問」からしか生まれません。「疑問」は物事に対して「それって本当かな?」「違う側面もあるんじゃないかな?」と純粋に信じない心から生まれ、相手の発言やニュースを鵜呑みにしていると生まれないのです。

「たくさん質問が思い浮かぶようになる」ためには、まず初めに「たくさん疑問をもつ」ことが必要です。量が思い浮かぶようになってきたら今度は「質の高い質問」を目指すために「質の高い疑問をもつ」ことが求められます。「質の高い疑問」が「他の人とは異なる着眼点」から生まれます。

質の高い質問をするためには他の人とは異なる着眼点を身につける必要があり、そのためには常に物事を疑う姿勢、批判的な思考/眼差しを向け続け「脳が疑問を持ちやすくする」ことが大切です。

相手の立場を想像する

質の高い質問力は「他者への想像力」から生まれます。自分の視点と相手の視点は違うという前提に立って、相手からはどんな景色が見えているのか、相手は何を考えているのかを想像することではじめて本質的な質問が生まれるのです。例を出してみましょう。

あなたと相手は向かい合ってサイコロを見ています。あなたは1の面が見えているときに、相手からは6の目が見えています。インタビューやWSで1つのテーマについて話しているときは、これと同じことが起こっています。「同じ物事をみていても見え方が違う」のです。

質問者であるあなたはサイコロの1の目を見て「これは数が小さい」と思っているとき、相手はサイコロの6の目を見て「これは数が大きい」と思っている。あなたは想像力を働かせて相手の立場に寄り添った質問をすることで、相手はより自分事となった本質的な答えを返してくれるでしょう。

世の中の幅広い事象に興味関心をもつ

簡単にいうと「ニュースや社会情勢に興味関心をもちましょう」ということです。人が物事を語るとき、その言葉は社会状況や歴史・おかれている環境など外部の要因に強く影響を受けています。

あなたがある自治体の首長にインタビューしたとします。首長から「この地域も人口が減っちゃってね…」と言葉が返ってきたとき、この言葉の裏側にはさまざまな要因や関連情報が付随していると思われます。

  • 日本は2010年代に人口減少社会に突入した
  • 地方の若者流出、都市への人口一極集中に歯止めがかかっていない
  • 人口が減った要因としては死去による減少と、転居や移住などの社会減という要因が考えられる

これらの背景はインタビュー前の事前調査、テレビや新聞のニュースをチェックしているか、地域が抱える課題などさまざまな情報を知っていなければ読み解くことはできず、本質的な質問はできません。相手は当たり前の前提条件と思っていることが多いので、わざわざ丁寧にその都度解説はしないのです。質の高い質問力は日々のインプットの積み重ねから生まれます。

常に質問の目的を意識する

目的が無い、ハッキリしない質問は無駄です。なぜなら質問とは相手に聞きたいこと・自分が知りたいことがあってはじめて成り立ちます。「聞きたいことがそもそも曖昧」「なんのために質問しているのか/インタビューしているのか理解できていない」状態だと、質問もそれだけ曖昧なものになってしまうのです。

質問の目的/意図がハッキリしている場合は、質問する際の口調や言葉もハッキリしたものになり、相手の回答もハッキリした目的に沿ったものが返ってきます。

「この質問によって何を私は知りたいのか」「それを知ることで私は何を得られるか」を常に意識して質問することが大切です。質問時は相手の貴重な時間を割いてもらっているので、時間を余計に削らないためにも質問の目的を意識することは重要です。

相手と前提条件を共有する

質問に対する私と相手の前提条件は同じだと思い込みがちですが、決して同じことばかりではありません。たまに「想定していたのとは全く違う回答が返ってきてしまう」人は、質問における前提条件が共有できていない可能性が高いです。意図とは異なる回答が返ってくることで何度も質問を重ねるのは申し訳ないですし、できれば少ない質問回数で興味深い回答を得たいですよね。

例を出します。あなたが日本社会の課題を想定して「いまの社会についてどう思いますか?」と質問したとします。相手は社会と聞いて世界の社会的な課題を想定する可能性もあれば、科目としての社会と捉えてしまう可能性もあります。文脈にもよりますが、言葉が被ってもいいのでここではあなたは「いまの日本社会の課題についてどう思いますか?」と目的語をはっきりさせることで、想定外の回答が返ってくるのを防げるのです。

自分の考えも適度に混ぜる

「質問するときは自分の考えは混ぜてはいけない」「聞き手に徹しないといけない」と思っている人は多いかもしれません。質問は「誰が質問するか」と切り離して考えることはできません。同じ質問でもAさんがするのとBさんがするのとでは、回答は変わるのです。

あなたがする質問は「あなたが質問していること」に大きな意味があります。イベントや講座で自分の考えを全く混ぜない人は多くいますが、それはいいときと悪いときがあります。質問の本質的な狙いは「相手が言葉を紡ぎやすくすること」です。相手の考えを引き出しやすくするものが質問であり、的確に引き出す能力が「質問力」なので、引き出すために必要であれば適宜あなたの考えも混ぜるべきなのです。

自分の考えを適度に混ぜることで場の雰囲気が和やかになったり、相手の思考が活性化することはよくあります。考えを挟まない機械的な質問者ではなく、自分の考えも適度に混ぜる人間味ある質問者が「質の高い質問力」を兼ね備えた人といえるでしょう。

キーワードを深堀する質問|回答者が新しい自分を発見できる想定外な質問Ⅰ

「相手にとって想定外の質問をされたことで、新しい自分が発見できるような質問はどうすればできますか?」とたまに質問されます。ある程度質問力があがってくると事前に相手の答えが予想できてしまったり、想定内のやり取りしかできなくなります。逆にインタビュー慣れした回答力の高い相手の場合には、いつも同じ答えが返ってきてしまいます。

そこでおすすめなのは「キーワードを深堀する」ことです。人はあまり深く意識せずに言葉を使っています。相手の専門分野の言葉であったとしても、なんとなくで使っている言葉は多くあるのです。だからこそ言葉/キーワードを深堀する質問は、両者にとって想定外の世界に踏み出す第一歩となります。

例えば地域活性化に長年携わる回答者が、何度も質問に対する答えの中で「これからの時代はコミュニティが大切になる…」と語っているとします。そんなときは、ここぞとばかりに「そもそも、あなたにとって”コミュニティ”とはなんですか?」「話の中で何度も”コミュニティ”という言葉を使っていますが、現代におけるコミュニティとはなんですか?」と質問してみましょう。

相手は定義の話とあわせて、より抽象的だけれども一段階深堀された回答をするはずです。ここでは1度で終わらせず何度も近いニュアンスの質問をして深堀すると、どんどん相手は「無意識の世界」を「言語化する」必要が生まれ、普段考えない高次元のことを考え始めるのです。

「キーワードを深堀する質問」によって相手は想定外の世界にいざなわれ、質問者であるあなたも知らなかった世界に入り込むことができるでしょう。きっと相手はインタビュー後にこれまで感じたことが無い充実感を感じてくれるはずです。

「Aさんって○○なところありますよね」から入る|回答者が新しい自分を発見できる想定外な質問Ⅱ

「あなたの考えを適度に混ぜる」と「相手と前提条件を共有する」を掛け合わせた応用的な質問力です。あなたが思う相手の特徴や強みor弱みを前振りとして言葉にしたうえで質問に入ることで、相手は「自分が気づいていなかった自分に気がつける」「自分はこう思っていたけど他の人からは違って見えるんだ」と新たな視点を内在できます。

同時にあなたが質問するときに「強引に前提条件を設定する」ことになるので、相手は縛りのある中で答えなければならなくなります。このように条件を設定することで相手は普段考えたことが無い視点から回答を引っ張り出すことになるのです。

この質問をするためには集中して相手を分析する能力、主観を嫌味なく伝える能力、前提条件を共有する能力などいくつもの質問力が必要になります。質問に慣れてきて新しいスキルを身につけたくなったとき、ぜひ試してみてください。

1人2役ロールプレイングでスキルアップ

筆者が普段実践している質問力を高める方法です。「上手に質問ができる人」=「回答者の立場がよくわかっている人」です。つまり質問力を高めるためには、あなた自身が回答者になって質問に答える体験を積み重ねる必要があります。

一部の著名な方を除いて、一般の方は頻繁に取材を受けることはありません。そこで有効なのが1人で質問者と回答者の2役をこなす「取材ロールプレイング」です。お風呂に入っている時間、車を運転している時間など空いた時間に1人2役こなしたロールプレイングをすることで、

  1. 話しながら質問を考える
  2. 回答者がどんな質問だと答えやすいのか理解できる
  3. つまらない質問と質の高い質問が回答者目線で分かる
  4. うまいつなぎ方が身につく

などの能力がゲットできます。ロールプレイングの質を高めるために時間を決めて録音して、あとでそれを聞いて復讐するのもいいでしょう。恥ずかしがらずにトライしてみてください。

最後に-正しい日本語が使える能力も立派な質問力-

高度な質問力は一朝一夕では身につきませんが、ちょっと意識するだけで質問は大きく変わります。ここでは紹介しませんでしたが10個目のスキル「言葉選び」も大切な質問力です。語尾の言葉1つ違うだけで回答は全く異なります。普段から正しい日本語に親しみ使い練習を重ねつつ、紹介した質問力向上のためのコツをうまく活用してぜひ高度な質問力を身につけてみてください。

KAYAKURAでは、質問力・インタビュー力アップを目指す方/団体からの相談・講座講師依頼・記事執筆依頼を随時受け付けております。お困りの方はぜひお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。またKAYAKURAでは「質問力」を高めるオンライン質問力講座も提供しております。興味関心のある方はぜひ下記の記事をご覧ください。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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  • 「映画見放題」
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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

Masato ito

長野県出身、日本学術振興会特別研究員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、一橋大学社会学研究科所属。専門は社会学、政策学。2017年・2021年に創設に関わった2つのまちづくり事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。後者は同年公民館アワードも受賞。現在は地方移住やまちづくり、地域政策に関する研究を行う傍ら、関連する分野のコンサルティングやアドバイザー、講師講演執筆などを行っている。毎日新聞、AERA、Oggi、Abema Prime Newsなど寄稿出演多数。