農業がかかえる課題/問題と解決策を知る-いま日本の農業で何が起きているのか-

農業 課題

日本の農業は農家の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の増加など多くの課題をかかえています。時代に合わせた農業の展開をしてこなかった戦後農政は要因のひとつであり、「小規模・零細・低収益性」が日本の農業状況を表現するのに最適な言葉となってしまっています。

農業をよりよい状態にしていくためには、まずは現在かかえている課題/問題をしっかりと把握し、未来への可能性として考えられる方法を検討するのが大切です。

本記事では日本の農業がかかえる課題とその解決策を紹介していきます。一体、いまの日本の農業で何が起きているのか。未来を考えるためにまずは現実を正確に把握していきましょう。

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新規参入・新規就農の壁が高い|農業の課題Ⅰ

日本の農業がかかえる課題Ⅰは「新規参入・新規就農の壁が高いこと」です。都道府県農業会議のうち、18の団体を対象とした調査によれば新規就農者の35%が離農するという現実があります。新規参入が難しい理由としては以下のような点が挙げられます。

  • 十分な収益をあげられる見通しが立ちにくい(すぎに収入が発生しない)
  • 初期投資の費用が結構かかる
  • 理想的な農地の確保が難しい
  • 維持費が重くのしかかる
  • 既存の農業共同体での良好な関係性の構築が求められる

個々の事業者として農業に取り組む際にも、日本の農村には総有の意識が古くから根付いています。これは個人の土地は地域住民みんなの土地という意識です。地域によって総有の意識や共同体的結びつきの強さは異なりますが、一定以上稼げる農業は1人ではできないため意外と人間関係が壁になることもあるのです。

収入が得られるまでに時間がかかること・初期投資額が高いことも新規参入の壁となっています。この課題を解決するために近年では地域ごとに農業法人を立ち上げトラクターや大型機械の共有を実現したり、新規就農者向けの補助金を拡充する自治体も出てきたりしています。この点は未だ地域差が大きいですが、農業における「共有(シェア)」の仕組みは課題を超える1つのヒントとなります。

農家の二極化|農業の課題Ⅱ

新規参入の壁が高く高齢化も進んでいるため、昨今では耕作放棄地や余った農地が増えています。そこでビジネスチャンスを見出し参入する企業や拡大する事業者が増えており、潤沢な資金を元手に大規模農業を展開する農業者が一部で大きな利益をあげています。

これまで日本の農業は基本的に個人農家の小規模農業が主でした。しかし小規模個人農家は生産効率が低くあげられる利益には限界があります。その結果、農業では大規模農業による勝ち組と小規模農業による負け組という農家の二極化が顕在化しているのです。表現を変えれば「農業格差」が拡がっているともいえるかもしれません。

しかし小規模農家が全て稼げていないかといえばそんなことがありません。例えばオンラインプラットフォームを活用して消費者に直接販売する事業者や、パッケージングやブランディングの努力をし商品価値を高めている事業者も少しずつ増えています。

コロナ禍に話題となったサービスに消費者と生産者を直接つなぐプラットフォーム「食べチョク」があります。食べチョクを運営する株式会社ビビットガーデン代表 秋元氏によれば、これからの時代、生産者はファンをつくる必要があるといいます。

ファンが必要な理由は「販路拡大・ブランディング」「マーケットリサーチ」「自身・従業員のモチベーション向上」です。

また大前提として消費者には大量の選択肢があふれています。新たに生産者のファンになってもらうためには、これまで買っていたところで買うことをやめて切り替えてもらう必要があります。

そのために欠かせないのは「消費者に寄り添ったアプローチ」でありマーケティングです。つまり小規模農家でも適切なマーケティングを実践しファンを増やすことで生き残ることができるのです。

※KAYAKURAでは株式会社ビビットガーデン 秋元氏へのインタビュー記事を掲載しています。より深く上記の課題と解決策について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

→SNS×ファン×共感で農家の情報発信・後継者不足の課題を解決!農業ITベンチャー×現役農家×Wantedly-第1回 食べチョクに学ぶ農家の情報発信術-

農家の高齢化と後継者不足|農業の課題Ⅲ

農業がかかえる3つ目の問題は「高齢化と後継者不足」です。1975年の日本の農業就業人口は約790万人で、65歳未満の人口が約80%を占めていました。しかし2000年代後半になると就業人口はおよそ300万人弱となり、65歳以下は40%と後継者となる若手の割合が減少し農家の高齢化が顕在化してきました。

少子高齢化により農家が高齢化し農業従事者が減少することで、耕作放棄地の増加や時代に合わせた農業形態に切り替えられない、新規就農者が参入しにくいなどの課題につながっています。

いまは動ける高齢の農業従事者もこれから10年~20年先には一気に引退する可能性があり、一段と上記の課題が加速するとみられています。よって、いまのうちになんらかの対策を講じることが求められているのです。

農業の課題/問題を解決するためには

本記事でみてきたような農業の課題を解決する方法は活発に議論されています。今後、農業従事者が高齢化し就農者が減ったとしても、競争力を強化し生産力を向上させることは必要です。ここまでもいくつか解決策を見てきましたが、最後に2つ解決策を提示します。

ビッグデータの収集、分析、提供に基づいたAIやICTの活用は解決策の1つです。個々の農業従事者がそれぞれ導入するためには壁が高いため、農業ビッグデータを集約管理する公的組織を設置し、集められた情報を分析・提供する機関として民間による「農業IT協同組合」のようなものを設置するなどの方法が考えられます。

2つ目の解決策として新規就農者を育てる学校のような機能の充実が必要です。新規参入が厳しい時代に1人で農業分野に踏み込むのは相当ハードルが高いことです。

行政や民間事業者が主催する学校のような場所で仲間と共に学び実践することでコミュニティを形成し、卒業後もコミュニティのネットワークを活かして支え合いながら農業に取り組む仕組みが少しずつみられ始めています。学校のような機能であれば自然と自身の先生と巡り合えるのもポイントです。

最後に-農業がかかえる課題を深く知る解決するためにおすすめの本-

農業 課題

本記事では日本の農業がかかえる代表的な課題を3つと解決策をいくつか紹介してきました。本記事で触れられなかった農業の実態もあるので、興味関心をもった方には以下の本をおすすめします。ぜひ買って読んで学びを深めてみてください。

この本はデジタル化が遅れ気味といわれている一次産業の分野で、IoTを活用して作業効率化、技術継承などに取り組んだ注目すべき事例を紹介しています。厳しいビジネス環境の克服と持続可能な新しい事業のあり方を模索、チャレンジを続ける人たちの事例を記した1冊です。

農業の課題を解決するために注目される「スマート農業」について網羅した1冊。スマート農業に興味関心がある、スマート農業を実践したい、自治体の政策にスマート農業を盛り込みたいというスマート農業を知りたい全ての人におすすめの本です。

この本は世界的に成長が著しい「フード&アグリテック」を次世代ファーム、農業ロボット、生産プラットフォーム、流通プラットフォーム、アグリバイオの5分野に区分けし各分野の市場動向と先進事例、2030年までの市場規模予測と事業展望を示した1冊です。

本書は世界的なコンサルティングファーム マッキンゼー・アンド・カンパニーによる農業の未来を予測する農業戦略白書。マッキンゼーというと日本では戦略立案のプロというイメージが強いですが、その顧客に多くの世界的な農業関係企業を抱えていることもあり、食糧・農業動向の分析には実績があります。

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参考資料
週刊 経団連タイムス, 2020, 「農業の競争力強化に向けた課題と解決策について聞く」.
新規就農者の35%が離農する現実──未来の農業の担い手を定着させる方法とは?.
あぐりナビ, 日本の農業の課題とは.
あぐりナビ, 日本の農業が抱える問題と将来に向けての改善策.

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

Masato ito

長野県出身、日本学術振興会特別研究員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、一橋大学社会学研究科所属。専門は社会学、政策学。2017年・2021年に創設に関わった2つのまちづくり事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。後者は同年公民館アワードも受賞。現在は地方移住やまちづくり、地域政策に関する研究を行う傍ら、関連する分野のコンサルティングやアドバイザー、講師講演執筆などを行っている。毎日新聞、AERA、Oggi、Abema Prime Newsなど寄稿出演多数。