新型コロナウイルスをビジネスチャンスに変えるために-最新事例と過去の事例から学ぶ-

新型コロナウイルスのように世界が危機的状況に陥ったとき、ビジネスにおけるピンチをチャンスに変えた事例は数多くある。「必要は発明の母」というように、平常時には考え付かないようなイノベーティブなアイデアがピンチになると浮かぶのだ。

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新型コロナウイルスにみるピンチをチャンスに変えた例

現在進行形で起こる社会の危機である新型コロナウイルスというピンチをビジネスチャンス変える事例やこれまでも存在したが今回の社会の危機をキッカケに一気に普及した事例が数多く存在している。ここではその中から8つのサービスを紹介する。

空室増加を近隣住民とのつながりづくりに『丸太町割 宿泊プラン』

2020年3月4月の稼働率が20%を下回る見込みのホステルHOSTEL NINIROOMが、ご近所さんに向けて始めた丸太町割!宿泊プランは身近で非日常が体験できることで注目を集めている。在宅勤務続きで息が詰まっている人、遠出は自粛するが旅行気分を味わいたい人をターゲットにしたこのプランは募集開始5日で25件の新規予約があった。大量の空室発生をチャンスに近隣住民に足を運んでもらうことで、売上以上に大切な「近隣からの応援」「地域とのつながり」を醸成する今しかできないこのサービスはピンチをチャンスに変える分かりやすい事例である。

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おかぴファーマシーが提供する処方せん薬宅配サービス『とどくすりβ版』

凸版印刷株式会社の子会社であるおかぴファーマシーは、新型コロナウイルスの拡大を受けて新型コロナ特例に基づいて、服薬指導から処方せん薬の受け取りまでを在宅で可能にする処方せん薬宅配サービスとどくすりβ版の提供を3月30日から開始した。通常は患者は処方せんの原本を薬局に持参し、対面で服薬指導を受ける必要があるが、今回特例として、FAX等で処方せん情報が薬局に送付され、電話や情報通信機器等を用いて服薬指導を受けることが可能になる。

集客に困る飲食店の空席がコワーキングスペースになる『Telework Space』

Telework Spaceは外出自粛によって客足が減っている施設で発生する空席をコワーキングスペースとして登録するサービス。テレワーカーや家にいると仕事がしにくい人が、オフィスでも自宅でもない仕事の場として利用できる。登録する施設のメリットは集客コストの削減とコワーキングスペース運営の収入、ユーザーのメリットは低価格なワークスペース利用と多拠点使い放題であること。新型コロナウイルスの危機が落ち着いた後も新しい場所サービスとして利用されていくだろう。

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旅館を仕事の場にする『文豪缶詰プラン』

東京都本郷 旅館鳳明館の文豪缶詰プランは、部屋に閉じこもり、編集者役のスタッフに催促を受けながら仕事に専念できるユニークなサービス。個室(閉鎖空間)を文豪のような缶詰状態というちょっと変わったカタチに変えることで注目されています。特設サイトで受け付けた企画第一段は公開5時間程度で売り切れたとのこと。多くの作家が宿泊した本郷の歴史的背景、OTAではなくTwitterでの宿泊者募集、行き過ぎたこだわりサービスが注目を集めた理由である。

VRを使い旅館でふぐ会席を食す『VRてしま旅館&福ふく懐石』

山口県てしま旅館はキャンセル客からの残念という声に、VRで名物福ふく懐石を旅館で食べる体験ができるサービスを開始。2~3月で約100万円分キャンセルがあったというか、VR企画をキッカケに予約してくれたお客さんもいるとのこと。ふぐ料理セット(19,500円)もリリースから数日で15セットの売り上げがあった。

カラオケ店でテレワーク 株式会社第一興商ビッグエコーのサービス『OFFICE BOX』

ビッグエコーが2017年に開始したカラオケをワークスペースとして利用できるOFFICE BOX。全国約500拠点、完全個室、Free Wi-Fiあり、電源完備とワークスペースとしての環境は完璧で複数人で会議も可、法人用に最適化されたアプリもある。開放スペースが多い通常のコワーキングスペースに対し、全室個室で他人との接触が少ない点がポイントである。

各種オンライン通話サービス/オンライン塾

不要不急の外出自粛要請や学校の休校措置により、Zoomなどのオンラインビデオ通話サービスが普及している。これまでオンラインに抵抗感があった人も繰り返し使うことで抵抗感が減退。「教育は合わないとダメ」という価値観がいまだに多い中、いざやってみるとオンラインで通話するというスタイル自体に子どもが興味関心を持つことが判明した。これらは新型コロナウイルス終息後も地方と東京の教育環境格差是正につながっていくだろう。

ネット通販/食料品宅配サービス(Uber Eatsなど)

外出できないことでこれまで日本では普及しきっていなかったUber eatsなどの食料品宅配サービスに注目が集まっている。同時にこれまではオンラインショッピング・ネット通販に抵抗感があった年配層が、移動自粛をキッカケにオンラインショッピングの必要性を感じ利用を始めるケースが増えている。

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オンラインでの観光

Airbnbではオンラインで観光体験ができるコンテンツが多数取り扱われています。観光地に観光しに行くことは移動により環境を汚染するので今後、移動しなくても楽しめて高齢者や動けない人も楽しめる「観光地に行かない観光」が広がっていくと予想されます。1つ例を挙げるとAirbnbで取り扱われている「日本の僧侶との瞑想」はおもしろいコンテンツです。

オンライン体験では、現役の僧侶が僧侶になった経緯と理由、および瞑想の実践について話してくれます。話の後は、2つのタイプの瞑想を一緒に行います。次に、10分間の呼吸瞑想を行います。

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今では当たり前のさのサービス・商品も実はピンチをキッカケに広まった

ロンドン大火をキッカケに誕生した火災保険

海上保険のみだった損害保険が、火災被害まで保証するようになったのは1666年のロンドン大火がキッカケである。大火の15年後、1681年に世界初の火災保険会社「ファイア・オフィス」がニコラス・バーボンにより創業され、その後、イギリスでは次々と火災保険会社が誕生。似たような事例として日本では1995年の阪神淡路大震災をキッカケに地震保険が普及した。

第1次世界大戦をキッカケに普及した腕時計

第1次世界大戦が普及を促す大きな契機となったのは腕時計。モールス信号や音声信号といった無線技術による戦争の指揮・伝達が導入され始めた戦場では、戦略を遂行する上で腕時計が不可欠になり、ハミルトンシャの腕時計は第1次世界大戦をキッカケに広く普及した。

LED電球は東日本大震災をきっかけに普及

東日本大震災をキッカケに人々が必要性を感じ普及したのはLED電球。停電により「暗さへの恐怖」を人々が体験、同時に「省エネ」ムードが高まったことでLED電球は一般家庭に普及した。家電量販店の2011年5月第4週のLED販売数量は前年同期比2.9倍、電球全販売量に占める割合は42.3%と白熱電球の39%を上回った(GfK調査)。震災前のLEDシェアは20%前後で推移していたことから、その普及の速さがわかる。

いつ社会がピンチに陥るからないリスク社会を

社会のピンチをキッカケに社会に認知され注目を集めるサービスには、それまでも一部で利用されていながら広くは普及していないケースが多くある。社会のピンチは人々のライフスタイルや価値観を半強制的に変える。失って初めて気がつく日常の価値がある一方で、それまで意識しなかった新たな価値に気がつくのも社会のピンチである。

カラオケや旅館をこれまで決まっていた用途から仕事の場に変えることで、人々が失った「オフィスでいつも通り仕事ができること」に変わる新しい価値を人々に提供している事例は、社会のピンチをキッカケに働き方をアップデートさせ人々の価値観をより多様にしている。

文豪缶詰やVRふぐのような今だからこそやる意義のある体験=「コト消費(商品やサービスを購入したことで得られる、使用価値を重視した消費傾向)」を販売している事例も社会のピンチをキッカケに誕生した新しい観光や宿泊の在り方だ。

社会のピンチはグローバル規模で生命を危険にさらす次元にリスクが達し、 生活環境や社会にますますリスクが影響を与える「リスク社会」を私たちが生きていることを気付かせる。いつどこでどんなネガティブな事象が起こるか分からない世の中を生きるうえで大切なのは、ピンチをチャンスに変えようというマインドと社会全体の価値観の転換なのである。

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.