新型コロナにより世界中でDV被害増加-各国の状況・DV被害を受けている場合はまず相談-

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために各国で実施されている外出自粛要請・外出禁止令により、家族がともに過ごす時間が増えています。家という閉鎖空間で長時間過ごすことによるストレスが高まった結果DVの被害者数が増加しているという情報を各国のメディアが報道。オーストラリアのスコット・モリソン首相はGoogleでのDV支援に関する検索件数が75%増加したと指摘しました。

そもそもDVとはどのような行為が当てはまるのか、各国の新型コロナウイルスとDV被害の関連は一体どうなっているのか、日本はどのような状況なのか、実際にDV被害に苦しんでいる場合もしくはDVをしてしまっている場合はどうすればいいのかを順を追ってみていきます。

「あなたが受けているそれもDVですよ」DVの定義

各国の取り組みやDV被害を受けている場合の対処法に入る前に、まずDVとは?について改めて整理します。一般的に思われている殴る蹴るのほかにもDVに当てはまるものはたくさんあるので、2020年2月にKAYAKURAに掲載した記事「虐待・DV被害者支援の現場から -連載初回 虐待・DVの定義と被害者保護を改めて考える-」の中でDV被害者支援団体サバイバルネット・ライフ代表 仲村久代さんにインタビューした内容を以下に掲載します。

仲村:DVというと殴る蹴るだと思われがちですが、実はいろんな要因がリンクしています。たいていは精神的な暴力が含まれます。

「誰のおかげで食えていると思っているんだ?」とか「いいなお前は、俺が仕事している間テレビ観て」といわれる。それに対して「じゃあ、私も働く!」というと「俺に恥かかせるのか」「俺の給料が安いから働いていると思われるじゃないか」と返される。ダブルバインドを巧み使われると混乱しますよね。

混乱を繰り返した女性はメンタルが傷つきますし、身体的な暴力を受けたら必ず同時に精神的暴力もあります。ここに加えて嫌なポルノを観させられたり望まない性行為を強要されたりといった性的暴力も加わることは多いです。

経済的暴力もあります。働いていない妻に生活に必要な額のお金を渡さないとか、モノを買う場合は必ず承諾がいるなどが経済的暴力にあたります。あと一つは社会的暴力です。両親や知人など妻の周辺の人と関わらせないようにするとか、妻の両親を絶対に家に呼ばないなどの事例があります。

これらの暴力は身体的に外傷を負うものではないので、なかなか外からはみえませんが立派な暴力です。複合的にさまざまな要因が絡んでいるケースが多いです。

夫の許可がないと外出できない、反省文を書かせられる、長時間正座をさせられるなどの例もありますが、繰り返すうちに妻は「しょうがいない、だって私が夫の言いつけを守らなかったから」となってしまうのです。

大切なのは本人がそれで幸せだと思っているかどうかです。本人の要望や希望が侵害されるということはDVにあたります。

オーストラリア首相はDV対策資金100億円投入を発表

オーストラリアは3月29日、新型コロナウイルスの感染拡大に関連しDVの被害件数が急増しているとの報告を支援団体から受けたことで、DV対策資金として約100億円を投入すると発表しました。

オーストラリアで一番人口が多いニューサウスウェールズ州でDV支援をする慈善団体「ウィメンズ・セーフティ」によれば、スタッフの40%超が相談者数が増加しているのを目にしています。

ビクトリア州でDV被害者の女性のサポートを行うウェイズは、3月下旬の1週間で警察からの支援要請が2倍になったと伝えています。中にはウイルスを持っているとしてパートナーを家に閉じ込めたり、自主隔離しているパートナーのもとに人を連れて来て、その人が感染者であるなどと言って脅したりする事例があるとのこと。

中国北京の民間団体は「DV相談件数が4倍に増えた」と報告

新型コロナウイルスの発生源である中国でもDVが深刻化しています。北京の民間団体はDV件数が昨年の4倍に増えたと指摘。なかでも収入減などによりストレスから妻子に暴力をふるう男性が目立っているといいます。

全国からDV相談を受け付けている北京の民間人権団体「北京為平」によれば、都市封鎖が始まった1月下旬以降に相談件数が急増。中国メディアも湖北省のある県では2月のDV相談が162件に上り、前年の47件から3倍超になったと伝えています。

外出禁止令のフランスでもDV急増 政府は対策を発表

3月17日から外出禁止となっているフランスでも女性に対するDVのリスクが高まっていると多数の女性団体が警笛をならしています。仏紙リベラシオンは3月20日に「外出禁止令:女性の暴力被害に関して高まる懸念」という記事を掲載。

女性連帯全国連盟代表は記事の中で「(3月17日の)火曜日、普段なら400件近くある電話相談が100件しかありませんでした。加害者と一緒に自宅にいるときに電話をかけるのは困難です」といっています。ここでポイントは相談件数が減っていることが逆に家庭内での暴力があることを示している点。数の多さだけで判断できないのがDVなのです。

これを受けてクリストフ・カスタネール内相は3月17日の外出禁止令以降、DVが増加した可能性があることを認めたうえで、パリ警視庁管轄の地域では1週間で約32%、憲兵管轄の地域では約36%家庭内暴力が増加したといいます。その上で、被害者が薬局から警察に通報できるシステムを政府が導入することを発表。加害者が薬局に同伴する可能性も考慮し、被害者が特定の言葉を言うだけで薬局側が通報する仕組みも検討中とのこと。これはすでにスペインで導入されている方法です。

イタリアでは電話相談は減少しテキストやメールでの相談件数が増加

イタリアではフランス同様に電話相談が都市封鎖以降急速に減少。その一方でテキストやメールでの相談件数が急激に増加しています。イタリアで女性に対する暴力防止活動を行う団体代表は取材の中で、都市封鎖の制限が緩和された瞬間にイタリア国内の虐待報告数が爆発的に増加するだろうと予想しています。

日本でもDVの相談件数が増えている

ここまでみてきた国々と同様に日本でもDVの相談件数が増えています。新型コロナウイルス拡大防止のための学校休校やテレワーク/リモートワークによって子どもも大人も家にいる時間が増えていることがその原因とみられています。しかしここまでみてきたように外出自粛中は電話での相談がしにくいこと、そして相談窓口が業務を停止しているところが多いことなどから、実際のDV被害は相談件数の増加以上にたくさん起こっていると考えられます。

これまでもDV被害を受けてきた人がさらにエスカレートしたDVを受けたり、これまで受けたことが無かった人が家庭環境と社会状況の変化に伴うストレスでDVを受けるなどその状況は様々です。

このような状況を受けて特定非営利活動法人「全国女性シェルターネット」は3月30日に安倍晋三首相、橋本聖子内閣府特命担当大臣(男女共同参画)、加藤勝信厚生労働相にあて、「新型コロナウイルス対策状況下におけるDV・児童虐待防止に関する要望書」を提出しました。

DV被害を受けている場合まずは相談・連絡

Hadesさんによる写真ACからの写真

実際にいまDV被害を受けている人にとっては、ここまでの内容はどうでもいいことだと思います。「そんなことよりも被害を受けている私はどうすればいいの!?」と思っている方へ、DV被害者支援を長年続けてきたサバイバルネット・ライフ代表 仲村久代さんに聞いたDV被害を受けたらすべきことは「まずは誰かに相談すること」です。

虐待やDVで困っている方、まわりに虐待やDVで困っている方は以下のような連絡先や相談先があります。まずは言葉にして相談することが大切です。とりとめもないことでもいいのでまずは連絡をしてみてください。電話での連絡が難しい場合は各団体、メールやテキストメッセージでの連絡方法が用意されています。勇気をもって連絡すれば必ず解決に大きく近づくはずです。

児童相談所虐待対応ダイヤル:189

子どもの虐待防止センター

DV相談ナビ 男女共同参画局

サバイバルネット・ライフ

・警察

もしこの記事を読んでいる人がDV被害者から相談を受けている場合は、上記のような相談先を紹介してあげましょう。ただ被害者自身が「行きたくない」「こわい」と言いなかなか行こうとしないかもしれません。そんなときは、まず初めに被害を受けている人の気持ちを受け止めましょう。「こわいよね、私も同じ立場だったらこわいと思う」と受け止めましょう。そのうえで「でも、ずっとこのままだと何も変わらないよね?」って。もしこの言葉で彼女が「じゃあどうすればいい?」と聞いてきたら、いろんな選択肢があります。

すぐに警察に相談するのも手です。加害者が権力に弱い人なら警察からガツンというとやめるケースもあります。保護してもらいたいと言ったら保護施設があるところに相談しに行くのも手です。

最後に-もしもあなたがDV加害者だとしたら-

新型コロナウイルスのような社会が大きく変わるようなショッキングな出来事が起こった後は、DVの件数が増える傾向になることは過去の調査から判明しています。外出自粛・リモートワーク/テレワークなど様々な要因でDV被害が増加していますが、DV被害を受けている人はまず相談をしてみましょう。

もしこの記事を読んでいる人の中にDVをしてしまっている人がいたら、何らかの方法で家族と距離をとりましょう。幸い宿泊施設がは空きが多いので宿泊施設に数日間泊まったり、人の密集度が少ない場所に行って気分転換をしましょう。大切なのは距離を取り物理的にDVができない状態をつくったうえでいまの状況を冷静に見つめなおすことです。落ち着いたら、あなたのつらさを誰かに相談してみましょう。1人で抱え込む必要はありません。

下記にDV被害者支援に長年取り組んできたサバイバルネット・ライフ代表 仲村久代さんにインタビューした連載記事を掲載します。興味関心のある方はぜひ読んでみてください。

参考資料

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員/講師。長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員。武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。