新型コロナウイルスで明らかになったSDGsの意義と重要性-ニューノーマルとSDGs-

SDGs

新型コロナウイルスは「当たり前の日常」を一度壊し、新しい日常「ニューノーマル」をつくることを私たちに迫っている。これまでと同じ日常では予測不可能な事態に対応できない、新型コロナウイルスが気付かせたことを2015年から世界に発信している目標がある。それが「SDGs」だ。

2030年までに17のゴールと169のターゲットを達成することを国連で採択してから早5年。マスメディアや学校でSDGsが取り上げられる機会も増えてきた。字面から意味が分からないため親近感がもちづらいSDGsだが、新型コロナウイルスと絡めて考えるとSDGsの意義と重要性は驚くほどに明確になる。

本文に入る前にSDGsについて基本から押さえておきたい方は、こちらの記事をご覧いただきたい。

→【5分でわかる】 SDGs(エスディージーズ)とは?わかりやすく簡単に解説します!

→SDGsはなぜ今必要なのか-世界が一つになって課題に立ち向かうための共通目標-

SDGsの基本のキについてはYouTubeでも解説動画を公開しています。耳だけでも学ぶことができるので、興味ある方はぜひこちらもあわせてご覧ください!

【わかりやすく解説】SDGsとは何か?-背景・17の目標・私たちにできることなど解説-

SDGsと新型コロナウイルスの関連例1「ウイルス・感染症」

例えば SDGsのゴール3の中には「3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。」という項目がある。新型コロナウイルスをできる限り早く終息させ積極的に感染症に対処することは、SDGsで求められる行動なのだ。

これは決して企業や医療関係者、政治だけの問題ではない。今日1日、三密を避けて手洗いうがいをしっかりし外出時はマスクを付けたあなたはSDGsにコミットしていることになる。SDGsが1人1人の行動と密接に結びついていることがわかるだろう。

これまでも新型インフルエンザのように日本人とも少なからず関係するウイルスはあったが、コロナ前にSDGsのターゲット3.3を見ても、ほとんどの日本人は自分事だとは思わなかっただろう。

しかし世界を見渡せば今でも放熱病やエイズ・結核と戦っている国は多くある。遠い国の出来事だと思っていたウイルス・感染症への対処・根絶という「他人事」が「自分事」になったのが新型コロナウイルスである。これを過去の出来事として忘れることなく、リスク社会を生きる未来に生かすことをSDGsは求めている。

SDGsと新型コロナウイルスの関連例2「ジェンダー平等」

SDGs17の目標のうち5にあたるジェンダー平等の中には「5.1 あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。」というターゲットがある。

一見、新型コロナウイルスとジェンダー平等は関係が内容に思われるかもしれないが、新型コロナウイルスによって顕在化した普段は見えないジェンダー不平等は多数あった。

SNS上では「コロナ離婚」というワードが広まり、家で一緒にいることが少ないパートナー同士の家事の不平等分担や、閉鎖空間におけるDVの増加などジェンダー不平等をキッカケに離婚するケースが注目を集めた。これは新型コロナウイルスによって、家庭内における普段はあまり意識していなかったジェンダー不平等の顕在化といえるだろう。

企業内のジェンダー不平等が新型コロナウイルスによって見える化したケースもある。大手航空会社JALは地上旅客係員が子供用の飛行機の絵柄のマスク1800枚を手作りし、空港周辺の成田市など9市町の保育園やこども園に贈った。また同じく大手航空会社ANAは新型コロナウイルスの感染拡大で需要が高まっている医療用防護服について、製造を支援する方向で検討していることを明らかにした。

飛行機が飛ばなくなったことで女性が多くの割合を占める地上旅客係員がミシンをつかってマスクや防護服を作るという発想は、「女性は縫製が得意」という極めて戦前的で時代錯誤な発想に基づいている。本来はジェンダー間で全く能力に差がない事柄を、女性=○○というように社会化するジェンダー不平等はSDGsが無くすべきと掲げる目標であり、いまだにジェンダー不平等が蔓延っている日本社会の現状を新型コロナウイルスが明らかにした例といえるだろう。

→新型コロナにより世界中でDV被害増加-各国の状況・DV被害を受けている場合はまず相談-

SDGsと新型コロナウイルスの関連例3「働きがいも経済成長も」

新型コロナウイルスが最も大きな影響を与えているのが「働き方」と「経済」であることは間違いない。SDGs8番目のゴールはまさにこの2つを目標に掲げている。SDGs8番目のゴールは詳しくは「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する」である。

毎日、満員電車に1時間乗って職場に行き数時間の残業をこなして夜に行きと同じく混んだ電車に1時間揺られて家に帰る。大都市では当たり前の光景ですが、果たしてこれが「人間らしい持続的な働き方」といえるだろうか?日本で生まれ世界でも使われるようになった「過労死」は「人間らしくなく持続的でもない働き方」をさせられている人類の姿を浮き彫りにした。

当たり前の日常では働き方の異常さに気がつかなかった人も、新型コロナウイルス拡大防止のためにテレワークを行ったり毎日の通勤がなくなったりしたことで、はじめて「こんな自由な働き方もあるのか!」と気がついたかもしれない。

テレワークの推奨、短時間労働などが選択できることは、持続的で人間らしく働くためにも経済成長のためにも重要なことである。新型コロナウイルスによる社会の変化を受けて早くアクション出来た企業の多くはSDGsを意識してきた企業のようにもみえた。

理由はSDGsに積極的な企業は「柔軟性」があり「持続可能なワークスタイル」に取り組んできた企業だからである。SDGsの目標達成に積極的な企業は何が起こるかわからないリスク社会を生き残る1つの生存戦略であるといっても過言ではないのだ。

最後に-コロナ収束後のニューノーマルはSDGsを表している-

SDGs

2020年はSDGsを2030年に達成するために向けて動き出す10年の大切な1年目だった。新型コロナウイルスの危機は間違いなくSDGsの達成に並外れた挑戦を要求するが、それは同時にチャンスであるともいえる

コロナ後の世界を指す言葉として最近世界的に使われるようになっている「ニューノーマル」という言葉があるが、ニューノーマルはSDGs達成のために生活することと同じ意味であるといっても過言ではない。新型コロナウイルスで明らかになった日本の弱点をSDGsと関連させて克服することで、1人1人が社会的にも経済的にも環境的にも幸せになれるように未来を向いていくことが求められている。

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。