ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは何か?わかりやすく簡単に解説(具体例あり)

社会学 本

人間関係が希薄になってきた現代において、チーム運営・地域社会・人間関係などさまざまな文脈で注目される概念が「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」です。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは社会学の概念で、簡潔にいえばそれは「人間関係」「信頼」「ネットワーク」です。より細かい定義はあとでみていきましょう。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が豊な人は就職しやすくなったり幸福度が高くなったり健康状態がよくなったりすると研究によっていわれています。一方、強すぎるソーシャルキャピタル(社会関係資本)はマイナスな効果もあります。

この記事ではソーシャルキャピタル(社会関係資本)の定義、使い方、具体的な事例、メリットデメリットをできる限り分かりやすく解説しています。ぜひ明日から学んだことを活用してみてください。

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ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは?意味・定義は?

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは「さまざまな種類のアクター(個人、地域社会、国、組織、集団)が、他のアクターとつながること、社会的な関係への影響、つながりを通して得られるさまざまな資源、諸利益の価値の合計」を指します。

もう少し分かりやすくいうと「グループの内部で、あるいはグループどうしのあいだでの協力関係を容易にするルール、価値、理解の共有をともなうネットワークのこ と」です。もっと簡略化していうと「人間関係」ともいえます。

一部の社会調査ではソーシャルキャピタル(社会関係資本)を「信頼」と表すこともあります。日常生活レベルでこの言葉を使う際には「人間関係」「信頼」と考えても問題はありませんが、大学や企業で扱う際はより多角的に捉えることが必要です。

ソーシャルキャピタルの難しさは、それが人間関係である点です。自分が「関係を結びたい!」と思っても、相手が結ぶ気にならなければソーシャルキャピタル(社会関係資本)は成立しません。昔は地域社会や学校の仕組みで強制的に関係を結ばせることもありましたが、現代ではそういうことはあまりありません。

その結果ソーシャルキャピタル(社会関係資本)の不平等が発生します。ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が豊かな人は健康で幸福感が高くて友達も多く出世もしやすい傾向にあり、一方でソーシャルキャピタル(社会関係資本)が豊かでない人はこういった恩恵を受けにくくなります。

少々乱暴にいえば結局「コミュ力が高い人は幸せで、コミュ力が低いと……」という問題と言えなくもないのです。こういう側面からみてもソーシャルキャピタル(社会関係資本)が、なぜいま注目されているのかわかると思います。

ソーシャルキャピタルの正しい日本語訳は「社会関係資本」

ソーシャルキャピタルをそのまま日本語に翻訳する「Social=社会」「Capital=資本」となり、社会資本となります。しかしこれは日本では電気や水道・道路などの形ある資本を指す日本語として使われていました。ソーシャルキャピタルは比較的新しい概念なので、日本に入ってきたとき従来の社会資本と混同しないように「社会関係資本」という言葉が使われるようになりました。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)のメリット

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が注目を集める理由は、いま世界がかかえているマクロな課題~ミクロな課題までソーシャルキャピタル(社会関係資本)を用いて解決できる可能性があるからです。幅広い射程を持つ概念なので不用意に用いるとよくわからなくなります。

ここでは「個人」「地域」「国」の3つにわけてそれぞれのソーシャルキャピタル(社会関係資本)のメリットをみていきましょう。

個人におけるソーシャルキャピタル(社会関係資本)のメリット

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)は簡単にいえば人間関係のことです。ある調査によればソーシャルキャピタル(社会関係資本)が多い人ほど健康状態がよく幸福感も高いという結果があります。人間関係が広いと息が詰まりにくく相談などもしやすくなりますよね。最近ではオフラインのみならずオンラインでもソーシャルキャピタル(社会関係資本)は存在するので状況は変わっていきそうです。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)は就職活動や転職でもメリットがあります。つながりが幅広く多い人ほどさまざまな可能性にアクセスすることができるので、就職時に選択できる選択肢が広がり失敗しても成功する可能性も高まります。

この場合、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)は同じような人とばかりつながっていては効果を発揮しません。異なる職業の人、自分より偉い人、就職アドバイザーなど多種多様な人たちとの資本が蓄積されていることがカギになってくるでしょう。

地域におけるソーシャルキャピタル(社会関係資本)のメリット

地域ではソーシャルキャピタル(社会関係資本)を多く有していることは、防犯や災害復旧、孤立死、子育ての不安などさまざまな課題を解決することにつながります。日常的に顔を合わせお互いがどんな人か知っているようなソーシャルキャピタル(社会関係資本)がネットワーク状に地域内にあれば、災害時の復旧スピードや救助スピードは速くなると予想できます。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が蓄積されている人たちほど、困りごとや悩み事を相談することができます。これはストレスの軽減や病気の重症化、うつ病の発症リスクを下げることにもつながるといわれています。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が豊かな地域は、孤独になりづらくお互いに支え合えるのでさまざまな地域の課題を解決する可能性が高いのです。

国におけるソーシャルキャピタル(社会関係資本)のメリット

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)は個人や地域などミクロなレベルだけでなく、国家のようなマクロな視点でも活用できます。ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が豊かな国は、人々が政府や社会制度に対して高い信頼を持ちやすい傾向にあるので、社会活動や経済活動、政治活動が活性化します。

現代は「個人化」「核家族化」など集団がどんどんミニマムになっていることが課題をされていますが、国レベルでソーシャルキャピタル(社会関係資本)を豊かにしていくことでミニマムになっていっても幸せで満足な生活ができるようになるかもしれません。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)のデメリット「ソーシャルキャピタルのダークサイド」

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)はいいことだけでなくデメリットももっています。専門用語ではこれを「ソーシャルキャピタルのダークサイド」といいます。例えば地域におけるソーシャルキャピタル(社会関係資本)の例をみていきましょう。

地域に存在するソーシャルキャピタル(社会関係資本)は適度な量だと、いざというときにお互いに支え合う力を発揮します。しかし昔の共同体のように相互監視が強すぎる=ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が閉鎖的で強すぎる場合は、逆にストレスになってしまいます。このようにソーシャルキャピタル(社会関係資本)は「強く」「密接」であればいいというわけではない点を押さえておきましょう。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)おすすめ本

この記事を読んだだけではソーシャルキャピタル(社会関係資本)の全容はわかりません。興味関心を持った方はぜひ本を買って勉強してみて下さい。きっと職場や学校や地域運営で効果的な活用ができるはずです。1冊目の『ソーシャル・キャピタル入門』が入門書で、2冊目の『リーディングスネットワーク論』が専門的な本です。

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)と「弱い紐帯の強さ」

ソーシャルキャピタル(社会関係資本)と関連する有名な概念で「弱い紐帯の強さ」があります。弱い紐帯は”知り合い”もしくは”顔見知り”程度の間柄の人とのつながりを指します。パーティーで話した人、会社同士の交流会で一緒に飲んだ人、コワーキングスペースでたまたま隣で仕事していた人、などが弱い紐帯で結ばれた関係にあたります。

アメリカの社会学者M. グラノヴェッターは、転職する際に誰のアドバイスや勧めがより参考になったのかを約280人に調査しました。その結果、明らかになったのは強い紐帯で結ばれた間柄の人よりも弱い紐帯の間柄の人からのアドバイスのほうがより参考になったということです。これは弱いソーシャルキャピタル(社会関係資本)は無責任さから偶発性を生み出すという興味深い現象です。

より詳しく弱い紐帯の強さを知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

まとめ-ソーシャルキャピタル(社会関係資本)は汎用性が高い-

studiographicさんによる写真ACからの写真

ここまで見てきて明らかなように、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)はとても幅広い物事に活用できる概念です。汎用性の高さが注目度を高めていますが、一方安易に使うことには注意が必要です。この言葉を使う際は「つながり」「信頼」「ネットワーク」ではなく、なぜあえてソーシャルキャピタル(社会関係資本)という言葉を使う必要があるのか考えてみることが大切です。

KAYAKURAでは日常生活で使える社会学用語を多数紹介しています。興味関心のある方はぜひこちらの記事もご覧ください。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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