【10分でわかる】社会学とは何か?社会学研究科の大学院生が簡単にわかりやすく解説

社会学とはいったい何でしょうか?この問いに答えられずに困ってこのページにたどり着いた受験生や大学生はたくさんいると思います。

社会学とは簡単にいえば「社会のあらゆる事象を対象にする学問」です。もっと詳しくいえば「社会秩序(2人以上の人間が、直接もしくは間接的に関わり合って生きているこの世界)に存在する、”破れ目”や”課題””不思議なこと”を問う学問」だと言えるでしょう。

この記事では社会学に関してよくある質問や疑問点を一つずつ解説していきます。「社会学が対象とする社会とは?」「社会学の強みと弱みは?」「社会学って役に立つの?」「他の社会科学と何が違うの?」などなど。いくつかの学術書を参考にしながら、社会学を大学院で研究する筆者ができる限り分かりやすく扱っていきますので、ぜひ最後まで読んでみてください!

社会学とは「社会秩序に存在する”破れ目””不思議”を問う学問」

親や知り合いに「社会学ってなに?」と聞かれ困っている受験生もこの記事を読んでいると思います。素朴な質問ほど答えにくいものですが、社会学とは簡単にいうと「社会秩序(2人以上の人間が、直接もしくは間接的に関わり合って生きているこの世界)に存在する、”破れ目”や”課題””不思議なこと”を問う学問」です。

社会学の大きな特徴は、私たちが暮らす日常生活と関連する構造の世界(社会環境、歴史的背景など)とを常に連関するものとして考える点にあります。これをミクロな視点とマクロな視点と呼び、ミクロとマクロそして中間にあるメゾこの3つの視点を組み合わせて社会を分析する点に社会学のおもしろさと特色があるのです。

社会学は英語で「Sociology」

社会学は英語で「Sociology」と表します。社会(socio-)を研究する学問分野(-logie)という意味です。社会学の祖と呼ばれフランス革命後の時代を生きたフランスの社会学者オーギュスト・コントによって命名されました。

社会学が研究の対象とする「社会」とは何か

社会学が対象とする「社会」とは人々が集まって生活を営む、その集団を指します。しかしただ集まっているだけでは社会にはなりません。社会学が対象とするのは「もともとは知らないものどうしだった人々が、直接/関節に関わり合いながら生きている状態」であり、ジンメルという社会学者はこれを「相互作用」と呼びました。

個人と個人の相互作用もあれば、個人と集団の相互作用もあれば、集団と集団の相互作用もあります。これらが社会と呼ばれ、社会学は相互作用に存在する「課題」「破れ目」「穴」を正確に把握しそれをコツコツと直していくための学問なのです。

社会学の強みと弱み

どんな学問にも得意とする部分(強み)と苦手な部分/疎かにしてきたこと(弱み)があります。社会学の強みと弱みはなんなのか、大学進学時に社会学部を考えている方は特に参考にしてみてください。

社会学の強み

社会学の強みは多くの分野が存在していてさまざまな角度から社会学的なまなざしをもって世の中の事象を分析できることです。社会学の研究対象によってわかれる分野をここに一部抜粋しますが、これをみるだけでもそのカバー範囲の広さがわかると思います。これが第一の強みです。

  • 理論社会学
  • 比較社会学
  • 歴史社会学
  • ジェンダー論
  • 女性学・男性学
  • 家族社会学
  • 情報社会学
  • 都市社会学
  • 農村社会学
  • 地域社会学
  • 政治社会学
  • 教育社会学

第二の強みとして社会学が蓄積してきた調査技術があります。社会学には調査手法として主に量的調査(例:アンケート調査)と質的調査(例:インタビュー調査)があります。調査方法に関する研究がとても深く行われてきた歴史があるので、現代でも世論調査や国民全体を対象とした調査、地域に入り込んで1人1人と向き合って行う対面の聞き取りなどで社会学者が活躍しているのです。

第三の強みとして、社会学が長く力を注いできた鮮やかな「常識崩し」にあります。これまで誰も意識したことが無かったことに鋭利なメスをいれ、その構造や仕組みを明らかにする「意外性」は今も昔も変わらない社会学の醍醐味だといえるでしょう。

社会学の弱み/課題

日本の社会学は長らく海外から輸入されてきた概念や考え方を翻訳して研究する学問でした。そのため日本オリジナルで構築されてきた考え方の蓄積があまりないことが問題視されてきました。長らく翻訳学問だったことは今後日本の社会学が乗り越えるべき弱みといえるでしょう。

第二の弱みは、これまでながらく社会学が世の中を鮮やかに切るナイフのようなカタチで広まり受容されてきたことがあります。ワイドショーやメディアに出て鮮やかに分析する社会学者はかっこいい存在ですが、一方で多くの社会学を学ぶ学生や若者がそれに憧れベーシックな部分をおろそかにしてきたともいえます。魅力は一方で弱点にもなりうるので、これまで以上に基本を押さえていくことが今後求められるでしょう。

他の社会科学領域と社会学の違い

社会学が取り扱うテーマは経済学や政治学など他の社会科学と重なり合うことが多いので、社会学のオリジナリティは長年議論されています。筆者は社会学の特徴は、これまで蓄積されてきた「社会学的なアプローチ」によって独自の理論的視点から分析し解釈することと、得意とする調査によって事象を正確に深く把握する点にあると考えています。

G. ジンメルという社会学者は社会科学が扱う対象を「形式」と「内容」にわけました。内容とは具体的な事象を指し、形式は内容に共通する枠組みや背後にある構造を指します。他の社会科学は内容と密接に関わってきますが、社会学は形式を深堀してきた点に他の社会科学領域との違いがあります。

社会学は何に役立つのか

東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは過去にインタビューの中で以下のように言われています。

社会学は基本的に「経験科学」です。つまり、人と人との相互の間に起こる、言及可能な現象を扱うのが社会学です。でも、言及可能な現象を扱うといっても、カテゴリー化されていない現象はそもそも認識すらできません。たとえば「ドメスティック・バイオレンス(DV)」や「セクシュアル・ハラスメント(SH)」という概念は、かつては日本語にはありませんでした。いずれも海外から日本に導入された言葉ですから、今でもカタカナ言葉のままなんです。そうやって、カテゴリーを作ることで初めて、ファクトを切り出すことができるようになりました。

PRESIDENT ONLINE 上野千鶴子に聞く「社会学は役に立つか」

世の中には言及されていないことが未だ多くあります。しかし言及されていないだけでそこには確実に存在し悩んでいたり苦しんでいたりする人がいる。社会学は調査や研究を通して「見えないものを言及可能に見える化」し人々に考えるキッカケを与えることができるのです。

私たちが今ではニュースで当たり目のように目にする「限界集落」「パラサイト・シングル」などの言葉は平成に入ってから社会学者によってつくられ世の中に広まった言葉です。後々、その正しさについては議論の対象となりますが見える化する役割は非常に社会の役に立っていると言えるでしょう。

社会学用語や概念が実際の事象にどう当てはまるのか、どう使えるのかを知りたい方はこちらの本をご覧ください。

社会学部がある日本の大学

大学として「社会学科」を日本で最初に置いたのは1920年の日本大学、「社会学科」を社会学科に設置したのは関西学院大学だといわれています。「社会学部」の設置は国公立大学では1951年の一橋大学が最古で、私立大学では1952年に現在の法政大学と合併した中央労働学園大学が最古だといわれています。

以下、日本で社会学部もしくはそれに類する学部を設置している大学を一部抜粋しました。

  • 一橋大学
  • 筑波大学
  • 長崎大学
  • 青森大学
  • 札幌大谷大学
  • 江戸川大学
  • 東洋大学
  • 法政大学
  • 武蔵大学
  • 明治学院大学
  • 目白大学
  • 立教大学
  • 流通経済大学
  • 関東学院大学
  • 追手門学院大学
  • 大谷大学
  • 関西大学
  • 関西学院大学
  • 同志社大学
  • 奈良大学
  • 佛教大学
  • 桃山学院大学
  • 龍谷大学
  • 中国・四国・九州
  • 四国学院大学

社会学とは何かをもっと知りたい方におすすめの本

社会学の概要をこの記事ですべて紹介することはなかなか難しいです。そこで社会学の多くの分野を包括している入門書を3冊ピックアップしました。社会学の全体像を把握したい方はぜひこれらの本を購入して読んでみてください!他の入門書も知りたい方はこちらの記事『おすすめの社会学入門書10選-社会学研究科の大学院生が選書-』をご覧ください。

社会学(新版)|長谷川公一, 浜日出夫, 藤村正之, 町村敬志

多くの社会学系の学部で使われている言わずと知れた日本で最も有名な社会学入門書の1冊。約500Pとボリューミーなコンテンツは16章に分かれており、社会学で押さえておきたい分野と単語をほぼ網羅しています。本文とは別に各章の内容と関連した事象をちょっと専門的に取り扱うコラム記事も本書の魅力。社会学入門書でありながら大学院入試まで活用できるレンジの広さが特徴です。

社会学 第5版|アンソニー・ギデンズ

その厚さから通称「鈍器」と呼ばれる世界で最も有名な社会学入門書の1冊。英語版ではさらに版を重ねていますが翻訳が大変すぎるので日本語ではまだ第5版までしか出ていません。本記事で紹介した1冊目『社会学 (新版)』で押さえられていない分野もしっかり押さえたうえで、各分野を数倍深彫りしています。これさえ持っていれば社会学で何も敵はいないですが、最後まで読み切るのは10人に1人程度だとか…

社会学をつかむ|西沢晃彦, 渋谷望

社会学をこれから学びたい高校生や大学1年生、社会人にとっては本記事で紹介する入門書の中で最も読みやすい1冊。ページ数は200Pちょっとと多すぎず、8ページごとに概念や考え方が広く浅く説明されているので毎日ちょこちょこ読んだり、興味あるページをつまみ食いして読むのに適しています。

知っておきたい単語をくまなくカバーしており各章の最後には単語チェックシートもあるので、社会学で出てくる初歩的な用語を覚えたい人に特におすすめです。個人的に好きなポイントは、ところどころ著者の説明の口が悪くなるところです笑 専門書なのに親しみやすい入門書です。

日本で名前が知られている社会学者3人

社会学者の中にはメディアに数多く登場する人もいます。詳しくはこちらの記事「日本の存命する有名な社会学者10人」をご覧いただきたいですが、ここでは存命している日本人社会学者3人を簡単に紹介します。

上野千鶴子さん

上野千鶴子さんは世界的にその名を知られる社会学者で、東京大学名誉教授、現在はNPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長を務めています。専門は女性学、家族社会学、ジェンダー論など。修士課程在籍時に上野先生の授業を受けたことがありますが、理論と実践が圧倒的なレベルで融合する実践的研究者です。

上野先生曰く社会学へのモチベーションは興味関心と「怒り」とのこと。家父長制が未だ残る日本社会への怒りが力となって現在でも多くの著作を発表されており、その発言は常に社会の注目を集めています。2019年東京大学入学式での祝辞も話題を呼びました。

小熊英二さん

小熊英二さんは慶應義塾大学教授で専門は歴史社会学・相関社会科学の社会学者です。学部卒業後、岩波書店に入社し社会人系経験を積んだ後、2007年から慶応義塾大学で教授を務める遅咲きの社会学者です。

著書は一般向けから専門書まで多数出版されており、サントリー学芸賞、第57回毎日出版文化賞第2部門、第3回大佛次郎論壇賞、角川財団学芸賞、第14回小林秀雄賞と受賞歴では右に出るものがいないほど評価されています。

岸政彦さん

岸政彦さんは立命館大学大学院先端総合学術研究科教授で、沖縄をフィールドに長年質的調査を行っています。長年のテーマは個人の生活史を通して歴史や構造をはるかに見渡すこと。研究をもとに執筆した書籍『ビニール傘』が第156回芥川賞候補、第30回三島賞候補にノミネートされたことで有名になりました。

近年はワイドショーでおなじみの古市憲寿さんも小説を執筆して話題になりましたが、小説を執筆した社会的に高く評価された最初の社会学者は岸政彦さんです。

社会学Q&A

社会学について巷でよく聞かれる疑問をいくつかピックアップし答えていきます。社会学に対するネガティブな反応にも答えていますので「社会学って胡散臭いな」「社会学って過激で左翼でしょ?」といった印象を抱いている人・もしくは周囲にそう言われた人ははぜひ読んでみてください。

Q
社会学者は胡散臭い人が多く感じます。社会学は胡散臭い学問ですか?
A

社会学は理論や調査に基づいた学問であり決して胡散臭い学問ではありません。しかしカバーする範囲がとても広いためマスメディアやSNS上で社会学者が発言したい際に、自分の専門外だと間違ったことをいうこともあるかもしれません。しかしこれはどの学問でも同じです。

一つ強調したいのはメディアに出ている社会学者はほんの一部であり、多くの研究者はコツコツと研究しているのでそういった人の研究はエビデンスに基づいた専門的なものです。ぜひ社会学の中で興味ある分野の学術書や入門書を読んでその理論や考え方を勉強してみてください。おすすめの社会学入門書を知りたい方はこちらの記事がおすすめです。

https://kayakura.me/sociology-books/→おすすめの社会学入門書10選-社会学研究科の大学院生が選書-

Q
親に社会学部に行きたいといったら「社会学は左翼だからやめなさい」といわれました。社会学は左翼で過激な学問なのですか?
A

社会学は世の中に存在する「課題」「問題」を深堀する研究をしている人が歴史的に多くいます。多くの人たちが課題に感じていなくても、一部の人が課題に感じていたり苦しんでいたりすることはあり社会学はマイノリティに寄り添って課題の解決を目指すために用いられることが多くあります。

そのため見方を変えると世の中に対して常に「本当に今のままでいいのかな?」と批判的眼差しを向け、間違っていることは間違っていると声に出し実際に行動することで変えていくことを行う研究者も多くいます。そのため攻撃的で過激に見える人もいるかもしれません。

右翼か左翼かと単純な二項対立で語ることは難しいですが、左翼よりの考えを持った人がマジョリティを占めるとは思います。もともとマルクスのような急進的で革命的な行動によって世の中をよくしていく思想と社会学は相性がよかった/社会学は用いていたので、いまでも急進的で革命的な左翼の特徴を持った研究者は多くいるでしょう。

Q
社会学部の卒業論文はどんなテーマで書けばいいですか?
A

社会学部の卒業論文は非常にテーマの範囲が広く、個々人が興味関心をもって臨めるものであればなんでもありだと思います。社会学は細かい分野に分かれているので、理論的なことを深めたい場合は理論社会学、地方や地域について深めたい場合は地域社会学・農村社会学、メディアについて学びたい場合は情報社会学など興味あるテーマにあう分野の先行研究や本をたくさん読むことで決まってくると思います。

ちなみに筆者の卒業論文テーマは『地方社会の地域課題解決における地域メディアとしてのフリーペーパーの可能性』ものでした。論文の書き方やテーマについてより深く知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
→論文とは?現役大学院生が書き方・読み方・注意点をわかりやすく解説
→卒論テーマの決め方-文系学生が押さえるべき5つのポイント-

最後に-社会学は奥が深くハマると抜け出せない魅力がある!-

この記事を読んで社会学がよくわかった人もいれば、余計に分からなくなった人もいるかもしれません。KAYAKURAには社会学に関する記事が他にも多数掲載されています。社会学的に世の中の事象を分析した記事や、分かりにくい社会学用語を解説した記事など多岐にわたりますので、興味関心ある方はぜひそちらも読んでみてください。

-ラジオ版KAYAKURA-

ラジオ版KAYAKURAは毎回1つのテーマについて5分~10分で深堀する音声コンテンツです。テーマは社会課題・最新ニュース・地方創生・観光インバウンドなど。スキマ時間の学びを思考を促す内容となっていますので、ぜひ聴いてみてください。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.