権威主義的パーソナリティとは?具体例を見ながらわかりやすく解説

社会学用語のなかでも理解しにくい用語である「権威主義的パーソナリティ」について取り上げます。第2次世界大戦時のナチス研究~今日のいじめやネトウヨ研究にも応用される権威主義的パーソナリティについて、詳しく見ていきましょう。

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権威主義とは?

そもそも、「権威主義」とは何でしょうか?辞書によれば、「日常的な言葉としては、権威を持つ指導者の独断的な思想や運動や体制、あるいはヒエラルキー的秩序の上下関係でものごとを判断する態度」となります。

権威主義的な態度に注目が集まるは、このような態度で人民を統治するのが最も効率的で存続しやすいからです。暴力による統治もありますが、それは効率的とは言えないですし人民の不満が早急に爆発するのは必至でしょう。人民の側から服従するような上限関係の下「あの人が言ってるんだから、従っとこう」みたいなふうに思ってもらうのが最も統治しやすいのです。

権威主義的パーソナリティとライヒ・フロム

1900年代の精神分析家ライヒ,W.が「家父長的家族内の権威主義が性的抑圧を強化しファシズムにつながった」と言っていたり、フランクフルト学派のフロム,W.が「労働者階級へのアンケート調査によって、強者への服従欲求と弱者への支配欲求の両方を持ったサド・マゾヒスティックな性格を見出した! そして、これがナチのファシズムへのつながったのだ!」と言っていたりします。

2人の研究者の言葉からも分かるように、権威主義的パーソナリティの研究は第二次世界大戦中のナチスによる全体主義に対する疑問「なぜ、ナチスは全体主義になりえたのか?」「そのとき人民は何を考え、どのような状態だったのか?」に基づくところが非常に大きいのです。

権威主義的パーソナリティとは?社会学者アドルノによると…

亡命研究者であるアドルノ,T.らは、反ユダヤ主義的偏見に関する大規模な心理学調査「バークレー調査」を実施しました。この実験では、2099人もの人が集められ、質問紙調査が実施されました。その際に開発されたのが「Fスケール」というファシズム度数を量るスケールです。9つの変数は以下の通り。

①因襲主義=慣習化した中産階級の価値への固執
②権威主義的従属=内集団の道徳的権威への無批判的な態度
③権威主義的攻撃=因襲的価値に違反する人を排除しようとする傾向
④反内省的態度=主観的なもの、創造的なものへの敵対
⑤迷信とステレオタイプ
⑥権力とタフさ
⑦破壊性とシニシズム=人間的なものを見下し敵意を向ける態度
⑧投射性=危険なことが世界で進行していると信じ衝動を外部に向ける傾向
⑨セックス

これだけでは権威主義的パーソナリティがどのように生まれるかは分からないので、一部を抽出しインタビュー調査が実施されました。その結果、彼らが導いたのは「幼少期に父親に厳しくしつけられた人は、抑圧によって権威などへの態度が非合理になる。その結果、服従することと反抗することの両方に喜びを見出すことによってのみ、自分を保つことができサドマゾ的になる」というものでした。

この結論によって導かれるものは、「だから、幼少期~大人になるまでの親子関係が大切です!」というものですよね。本当にそれだけで権威主義的パーソナリティが育まれるの?思う方も多いとはずです。

この調査によって明らかになったのは、権威主義的パーソナリティが異常なものなのではなく、家族関係で生まれたり生まれなかったりするくらい誰でも持ちうるパーソナリティだということです。例え、家族関係がうまくいっていたとしても、その後の何かしらのキッカケで持つ可能性は十分あるのです。

ハンナ・アーレントと権威主義的パーソナリティ

ユダヤ系の女性思想家ハンナ・アーレントという人がいます。彼女は全体主義の起源というドイツ&ソ連の全体主義がなぜ生まれたのかを考察する本と、エルサレムのアイヒマンというユダヤ人虐殺に関わった中心的人物アイヒマンに関する2冊の本を通して以下のようなことを伝えようとしています。

「思考しないことが最悪である。常に思考し続けよ」

権威主義的パーソナリティの一番の問題点は、思考停止性にあるといえます。権威を振りかざす統治者が言っていることが合っているのか間違っているのか、自分は服従しているのかしていないのか、そのことを考え続けることが大切です。考えることをやめた人間ほど支配しやすく操りやすい人はいません。

まとめ-権威主義的パーソナリティを学ぶのにおすすめの本-

「権威主義的パーソナリティ」を取り扱ってきました。数十年前に生まれた概念ですが今の時代でも十分通用する、今の時代だからこそ覚えておいたほうがいい概念の一つではないでしょうか。KAYAKURAでは他にも社会学用語を多数取り扱っています。興味ある方はぜひ以下の記事も読んでみてください。

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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