観光インバウンド・移住で注目されるSBNR(Spiritual But Not Religious/無宗教型スピリチュアル層)とは何か

2010年代に入ってから海外の観光インバウンド・宗教業界で注目を浴びているのがSBNR(Spiritual But Not Religious/無宗教型スピリチュアル層)というカテゴリーである。「精神的はあるが宗教的ではない」とはいったいどういうことなのか。現象に日本では明確な名前がついていないだけで、実は日本でも広まりつつある無宗教型スピリチュアル層について、具体的な事例を交えつつ解説していきます。

SBNR/無宗教型スピリチュアル層は精神の豊かさを求める

PEW Research Centerの調査によると、現在、米国の18歳以下の83%がSBNR層というデータがあります。彼らは欧米豪各国で台頭してきており、世界的な流れになりつつあります。世界的な潮流になりつつある一例として世界中で利用されている出会い系サイトの多くが近年「Spiritual But NotReligious」という選択肢を設け始めていることがあげられます。

別の調査によるとSBNR層のうち1/3の人が「神は不偏的なもの絶対的なものではない」と信じていて1/2の人が「多神教」を信じていることが明らかになっています。言い換えるとSBNR層が捉える精神的な見方は非常に多様であり、ひとくくりにすることは危険です。「自らが何を信じどこに精神的な豊かさを求めるのかは人によって異なる」のがSBNR層の特徴なのです。

SBNR/無宗教型スピリチュアル層の具体的な興味関心

観光インバウンドにおけるSBNR層が興味関心を持つコンテンツとしては以下のようなものが挙げられます。これらのコンテンツはアジア諸国に由来するものが多くツーリストを日本を含むアジア圏に誘因します。

  • 菜食主義
  • オーガニック
  • 自然との調和
  • マインドフルネス
  • 精神文化
  • 多様性社会
  • スピリチュアル
  • ヨガ
  • 瞑想
  • 自然の中でのアクティビティ
  • アンチ資本主義
  • アンチ消費社会
  • アンチ都市
  • 健康
  • セラピー
  • 占星術
  • パーマカルチャー

SBNR/無宗教型スピリチュアル層は観光/地方移住と深く関連する

観光インバウンドにおいてSBNR層をターゲットとしたコンテンツは近年、日本においても増加しています。例えばヘルス×オーガニックを押し出したリトリートや宿泊施設、自然環境と適度な運動を組み合わせたトレッキング、神社仏閣での瞑想や坐禅と精進料理を組み合わせた体験などがそれにあたります。

SBNR層は、資本主義的なものや消費社会に対して懐疑的な見方を心得ています。その結果、資本主義的で消費中心の都会的な暮らしに対して否定的な考えを抱き、地方への移住を検討するのです。日本を含む先進国で1960年代後半から吹き荒れたスチューデントパワー後、地方に移住した年長者の同志向著名人やリーダー層との出会いをキッカケに具体的な地域を見つけ、検討から行動へと移っていきます。

自治体によってはSBNR層へのアプローチを本格化させ移住に結びつけようとするところも出てきており、特に長野県や島根県に有名なコミュニティ/エリアが存在します。これらの現象は「ライフスタイル移住」とも呼ばれています。

SBNR/無宗教型スピリチュアル層は全ての産業で影響力を高める

本記事では観光インバウンドと移住に絞りましたが、全ての産業においてSBNR層は影響力を高めていくことが予想されます。体にいい素材をつかった建築、ダイエットや健康志向の高まりとクロスされてトレンドになりつつあるオーガニック食品、エシカル消費と共に台頭する衣料品などがそれにあたります。2020年以降、SBNR層にますます日本でも注目が集まること間違いなしです。

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この記事を書いた人

Masato ito

長野県出身、日本学術振興会特別研究員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、一橋大学社会学研究科所属。専門は社会学、政策学。2017年・2021年に創設に関わった2つのまちづくり事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。後者は同年公民館アワードも受賞。現在は地方移住やまちづくり、地域政策に関する研究を行う傍ら、関連する分野のコンサルティングやアドバイザー、講師講演執筆などを行っている。毎日新聞、AERA、Oggi、Abema Prime Newsなど寄稿出演多数。