e-bikeの効果的な活用が地方の観光と地域活性化を促進する-二次交通の課題解決-

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欧米圏を中心に、持続可能で環境にやさしい観光を促進するためのツールとして、近年、サイクルツーリズムが注目を浴びています。若き環境活動家グレタ・トゥンベリさんがCOP25に参加する際、ヨットで太平洋を横断するとツイートし話題を呼んだように、飛行機や車の利用は環境を配慮し少しずつ減らそうという動きと相まって注目を浴びているのです。

本記事では、環境負荷の観点もさることながら「地方の魅力をよりリアルに体感するための手段」「二次交通が乏しい地方の交通環境を改善する手段」としての、サイクルツーリズムの中でも特に「e-bike」の可能性を掘り下げます。

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地方の急激な郊外化とモータリゼーションによる公共交通機関の減少

地方市町村では、都会と異なり電車や公共交通機関の運行本数が1日に数本というケースがよくあります。筆者が暮らす長野県安曇野でも、中心地を除く周辺地域は1時間に1本あればマシという地域が多くあります。

地方の郊外化とモータリゼーションが1980年代以降急激に進む中で、市民のインフラであった公共の移動手段は予算が減少し本数が減ったり民営化したりし利便性が下がった地域が多くあります。一方、ニーズがないところで税収も人口も減少する今日において、運営費を脇において運行本数を増やすことも難しいのが現状です。

地方における二次交通の貧弱さは多くの観光客を遠ざけている

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公共交通機関の数と質の低下は、住民が困るのみならず多くの潜在的な観光客を地域から遠ざけている側面があります。地方には、駅がない市町村が数多く存在します。長野県では安曇野市に隣接する池田町、白樺高原で知られる立科町、レタスの生産量が多いことで有名な朝日村など他にも多くの市町村に駅がありません。駅がないばかりか、国道も通っていない市町村もあるのが現状です。

観光客の中でも、特に地方の自然環境や山岳アクティビティを楽しむために訪れる都市在住者は、車を持っていない世帯が半数以上を占めます。東京都在住の20代~30代独身男性の場合、自動車保有率は44%、東京都の世帯あたり保有台数は0.4台と半分以上の世帯は車を持っていません。対して、長野県は世帯あたりの保有台数が1,6台と約4倍の開きがあります。

車を持っていることを前提とした社会に、車を持っていない観光客が来た場合、目的地から目的地へ移動するだけでも大変な思いをします。日本人であればなんとなかなることも、ほとんどが車を持っていない訪日観光客の場合、問題はさらに深刻です。たとえ最寄り駅まで電車で来れたとしても、駅から目的地まで行くのが難しい。そんな、二次交通が不便な地方市町村の社会は、気付かないうちに観光客が訪れるチャンスを自ら逃しているのです。

e-bike(スポーツ用電動アシスト自転車)が交通環境の改善におすすめな2つの理由

e-bikeとは、ロードバイクやクロスバイクのようなスポーツタイプの自転車に、電動アシストをつけたものを指します。ママチャリに電動アシストがついたものとの違いは、走りやすさと実用性です。長距離や長い坂道、少しでこぼこした道も入れるように安定した太めのタイヤとしっかりしたフレームが特徴です。

以下では、普通のスポーツタイプの自転車ではなく、なぜe-bikeが観光促進や地域活性化につながるのかをみていきます。

e-bikeは山間部や舗装されていない道でも二次交通になる

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電動アシストがついていない自転車をサイクルツーリズムで導入する事例は多くありますが、e-bikeを導入している事例は、まだそこまで多くありません。長野県では立科町や木曽広域連合などが導入していますがどちらも2018年2019年に導入したばかりで正確な効果は測れていません。

e-bikeと普通の自転車の最大の違いは「登り坂での疲労度」です。地方市町村でサイクルツーリズムを展開する場合、山間の上り坂を走ることは都会よりも必然的に多くなるはずです。その際に、普段、自転車に乗り慣れていない人にとって普通の自転車で坂道を上るのはとても苦痛です。しかし、e-bikeであればよほど急な登り坂でない限りは普段、自転車に乗っていない人でもすいすい走れます。

さらに、普通の自転車の場合、普段、乗っていない人にとってはバランスをとるのも少し難しいことがありますが、e-bikeはタイヤが太くフレームもしっかりした安定感あるタイプが多くあるため、自転車に乗り慣れていない人でも簡単に乗れます。観光客もさることながら、住民が日常的に使う移動手段としても導入は可能です。安定しているタイプを導入すれば、子どもからお年寄りまで利用できます。

e-bikeだとスローな観光が楽しめる

e-bikeは移動手段であり立派な観光コンテンツです。それ自体を目的に来てもらうこともできますが、地域の魅力的なコンテンツをゆったりと楽しんでもらう方法としてもe-bikeは力を発揮します。

車やバス、電車の移動の場合、ちょっと魅かれる脇道があったり裏路地があっても簡単に入ることはできません。「駐車場どこだろう?」「良さげな景色あったけど、今度でいいか」こういうことはよくあるはず。対して、歩きやランニングはゆったり楽しめる一方で疲れもたまります。普通の人であれば、5km~10km歩けば相当疲れるはず。

自転車は、車や電車と歩きのちょうど中間のスピードで観光を楽しむことができます。立ち寄りたいときに立ち寄れますし、細い裏路地やあぜ道でも入っていけるでしょう。しかし、普通の自転車の場合、漕ぎ初めに毎回、力が必要なのと歩きと同様に長距離乗ると普段、運動をしていない人は結構疲れを感じます。

そこで、e-bikeの出番。漕ぎ初めにアシストが効くので思い切り踏み込む必要はありません。長距離乗っても山道を走っても、疲れを感じることもありません。さらに、普通の自転車よりもスピードが出るので直線や多いな道であればスピードを出して素早く移動ができます。最も合理的かつゆったりと地方の魅力を堪能できる手段がe-bikeなのです。

e-bikeの導入件数はこれから右肩上がりになるので、要チェック!

本記事で見てきたように、e-bikeはこれまで公共交通機関が整っていなかった地方市町村が観光客を呼び込む手段の一つになると同時に、それ自体がコンテンツとなり新しい観光の価値を提供します。これから導入する市町村の数が増えスタンドや貸し借りの場所が増えれば、住民が生活の中の移動手段として使うことも可能になるでしょう。

e-bikeは行政だけでなく、個人で買うこともできます。安いものだと15万円くらいから販売しており家庭用コンセントで充電できるので、普段の移動手段としても普及していくことは間違いありません。観光促進のための手段であり、地域の二次交通を改善する地域活性化の手段であり、ゆったりした観光と生活を実現する手段でもあるe-bikeのこれからに注目です。

KAYAKURAでは、まちづくり・地域活性化に関する講座や勉強会の講師・WSのファシリテーション、執筆、関連事業のサポート/コーディネートを行っております。お困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

参考:長野県立科町がe-bikeを活用した観光のスタイルを提案している記事です。KAYAKURAが運営するインバウンド向けWebメディアNAGANO TRIPが記事の制作~公開を請け負わせていただいた記事です。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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この記事を書いた人

Masato ito

長野県出身、日本学術振興会特別研究員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、一橋大学社会学研究科所属。専門は社会学、政策学。2017年・2021年に創設に関わった2つのまちづくり事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。後者は同年公民館アワードも受賞。現在は地方移住やまちづくり、地域政策に関する研究を行う傍ら、関連する分野のコンサルティングやアドバイザー、講師講演執筆などを行っている。毎日新聞、AERA、Oggi、Abema Prime Newsなど寄稿出演多数。