地方移住先で注意すべきトラブルまとめ-8つの実例から気を付けるべきポイントを解説-

地方に移住すると、都会では見られなかった仕組みや組織が多くあることが分かります。それらは、昔から地域に住んできた人たちが地域を維持していくためにつくった先人の知恵にあふれた仕組みですが、現代の生活や価値観にはそぐわないこともしばしばあります。

本記事では8つの地方移住先で起こりがちな組織や仕組みに関連するトラブルを取り上げます。どの組織や仕組みもメリットデメリット両方ありますが、そもそもどういう理由でトラブルが起きるのかトラブルが起きないようにどうすればいいのかを記事を通して知っていただけたらと考えています。

※ここに書いてることが全てではなく非常に地域差がある話題です。移住する際は仲介役となってくれた不動産会社や工務店、行政の担当者や先輩移住者に話を聞き地域ごとの特性を把握することを強くおすすめします。

ごみの捨て方ルールに関するトラブル

ごみを捨てる際は、個人個人の家ごとに捨てるのではなく地区内に数か所ある共同の回収場所(ごみステーション/ごみ収集所など呼び方は地域によって異なる)にごみを持って行き、まとめて回収してもらおう方式が多いです。また、自治会や地域の中でごみ当番が決まっており、当番がまわってきた人はごみの間違いを確認したりごみ捨て場を掃除したりして環境を綺麗に保つ役目があります。

ごみの捨て方で多いトラブルは、曜日を間違えて捨ててしまったり、分別が以前の地域と違うために間違っていたり、ごみステーションの入り口の戸がしっかり閉まっていなくてカラスがつついてしまう原因を作ってしまったりと理由は様々。

移住してきたばかりの市町村のごみルールを正確に把握することはなかなか難しいことです。袋の色が違ったり、名前をどこまで書くかなど細かなローカルルールが決まっているケースが多いので、住所を移した際に市町村からもらえるごみの捨て方ガイドを壁に貼るなどして、捨てる曜日と捨てていいものの種類をしっかり確認してから捨てるようにしましょう。

農業に関するトラブル (有機農業、JA、出荷ルートなどのトラブル)

「地方に移住したら有機農業をやってみたい」「農業従事者になる予定だけど、私はJAを通さず自分で販路を開拓して広げていきたい」このように考え地方に移住し農業を生業とする方は、年々、若者からご年配の方まで増加傾向にあります。

その際に注意したいのが、地域ごとの農業従事者のパワーバランスやローカルな取り決めです。「ここで農業に従事する場合はJAからこの肥料をももらって、この日に検査してもらわないと、この野菜は出荷できない」「このエリアは農薬散布するエリアなので、農薬の影響を全く受けない農業を実践するのは難しい」など、一個人で変えるのは難しいローカルルールが存在することはよくあります。

もし、移住後に実践したい農業の種類や品目、方法が事前に決まっている場合は移住希望する行政の窓口で自分がやりたい農業が可能なのかどうか確認したり、移住者を中心に農業に関する情報交換を行うネットワークやコミュニティに参加して情報交換したりするのが大切です。そうすることで、自分では発見できなかった好都合な畑や契約に結び付くことがあるほか、Webサイトでは見つけにくい補助金や支援制度を教えてくれることもあります。

新築一戸建てと土地に関するトラブル

新居を建てる際、まずは土地を選び続いてその土地に合わせてどんな家にしようか決めることが多いかと思います(もちろん、逆のケースもある)。地方では、土地がある特定の工務店と紐づいており「この土地に家を建てるなら、この工務店で建てないとダメ」などの取り決めがされているケースがたまにあります(土地の販売や上物の販売だけでは利益を上げることが難しくなってきた地域の工務店の戦略)。

その場合、先に建てる家を決めてしまっていたり、土地を決めてから都内の大手ハウスメーカーに希望を出して建てる家の種類を決めてからたてるとなるとややこしいトラブルが発生します。地方では、大手のハウスメーカーよりも地元の工務店のほうが力が強かったり、地域の事情を知っていたりするので決まっているルールを後から変えるのは難しいケースが多いのが現実です。

土地を決める際は不動産会社や工務店と「土地」と「建物」の契約や取り決めがどうなっているのかを早いうちに確認しましょう。そして、確認したうえで、もし建物を大手ハウスメーカーで建てても大丈夫な場合は建物を決める段階にコマを進めましょう。順番を間違えると大変なことになるケースが土地と家に関しては多くあるので「逐一確認する」ことをお忘れなく。

サービス業の駐車場や騒音に関するトラブル

農村地域でサービス業を営むのと都会でサービス業を営むのでは、同じ業種で同じ業務形態でも異なる点が多くあります。「地方に移住してカフェを営みたい!」「工房とセットになったギャラリーをオープンしたい」など、夢をもって移住される方も多い一方でサービス業を営む際に注意すべきトラブルがいくつかあります。

駐車場に関するトラブルは最も多く聞かれるものの一つです。通常営業時はいいものの、繁忙期やイベント時に駐車場に入らない車を近くの道路の脇に停めて置いたり空き地に勝手に停めてしまってトラブルになるケースは非常に多くみられます。

ほかにも、夜の人の声やイベント時の音は都会と比べて非常によく近隣に響きます。「このくらい窓を開けても大丈夫だろう」「ちょっと外で立ち話~」と思っていたら、時間が長引いて苦情が寄せられるなんてことも…

サービス業を営む場合は、面倒かもしれませんが事前に必ず近隣住民の方にあいさつに行きましょう。また、その際に想定される出来事を丁寧に説明し理解を求めることでほとんどのトラブルは両者の間に遺恨を残すほど大きなものにはなりません。大切なのは、オープン後ではなくオープン前に計画段階であいさつに行き相談と説明をすることです。

消防団や商工会青年部に関するトラブル

「自分の地域は自分で守る!」を原則に、地方では昔から消防団という若者の男性が主体となって火事や災害が起こった際は駆けつけて消火作業を行うという仕組みが多くの地域にはあります。また、商業に関しても「この町の商工業は自分たちが背負う!」という意識から若手の商工業者で組織される商工会青年部という組織がある市町村が多くあります。

これらの組織は、選挙の際の大きな基盤となっていることも多くある種の思想性を持っているケースも多いですが、若い人たちの交流の機会としてプラスに機能しているケースも多くあります。一方、上下関係が厳しかったり、アルハラに近い言動があったり、集まりへの参加要請が厳しいなど移住者にとっては厳しい側面もあります。

消防団の場合は、大会というイベントが年に複数回あり大会前は朝の5時から練習してその後、会社に出勤、夜にもまた練習という事例もあります。商工会青年部もお祭りの準備や地域のイベントの運営などで土日の休みがまるまるつぶれてしまうケースも。

参加する参加しないは個人の意思で決められるケースが多く、近年は昔ほど加入は強制されないので自身にとってどのようなメリットデメリットがあるのかを検討したうえで家族とも相談し加入するかしないかの判断は下しましょう。

お祭り・育成会に関するトラブル

神社やお寺を抱えている地域では、施設維持のための集金やお祭りへの参加が半強制的に求められる自治会がまだ少なからず存在します。子どもがいる家庭は、男の子はお囃子に参加し女の子は舞を踊るなどの決まりがあることもあり、習い事や塾と並行してお祭りの期間前に練習に参加するのはキツイこともありますよね。

若い人の場合は、若衆としておみこしを担いだり舞台の上に乗って盛り上げる役を求められることもあります。しかし、今だにたくさんお酒を飲むことを求められたり、先輩後輩の序列がハッキリし意志を伝えられないようなコミュニティも一部には残っています。

十年前と比べると、大分状況は変化し家庭の事情に合わせた対応はなされるようになってきてはいるものの、人口減少によって伝統を途絶えさせることも難しくどうしても頼まれて断れないというケースは毎年あります。もし誘われた場合、どのような形態の練習や参加頻度なのかをしっかり聞いたうえで、こちらの事情も丁寧に担当する人に伝えるようにしましょう。

自治会・自治会費に関するトラブル

地方では「自治会」もしくは「町内会」という名前で、ある一定区域の人が地域を維持していくための任意の組織を作っているケースが多くあります。自治会に加入すると公民館の清掃や総会、川の清掃や草刈り、お祭りなどのイベントが毎年まっており、順番に自治会長や会計などの役職もまわってきます。

地域の人と仲良くなり、より充実した地方生活を送るうえで有用な仕組みである一方で締め付けが強かったりイベントが多くて疲弊したり、人口減少と高齢化で役職が毎年のようにまわって来ることが負担になるようなケースも目立ってきています。

中でも、年会費や月の会費として払う自治会費の支払いは、移住してきた人によってはなかなか理解できない仕組みかもしれません。「自治会に加入していなくても支払いをしなくても普通の生活ができるのに、なぜ払わないといけないのか」このような疑問をもつ人は多いはず。

地域によって用途は異なりますが、自治会はあくまで任意の加入を原則としています(”自治”の組織であって行の必然的な下部組織では無いので)。しかし、地域によっては取り決めで「ここに住む場合は自治会加入絶対です!」というケースもあるので、不動産屋さんや町の担当者に聞いて共同体要素がどの程度強いのかを事前にしっかり把握しておきましょう。

シェアハウス・ゲストハウスに関するトラブル

旅行業法の改正やAirbnbやBooking.comなどの宿泊予約サービスの普及で、日本国内でも数が増えているゲストハウスやシェアハウス。新しい宿のカタチ、新しい住まいのカタチとして地方移住のタイミングで始めたいと思っている方も多いのではないでしょうか。

都市圏でも地方でも共通していえることとして、地域ごとやマンションごとに独自の取り決めを設けるところが近年増加しています。私が知っている長野県内の自治会で「ゲストハウスをこの自治会内で営業することは禁止」「サービス業にあたりものをこの地域内でしてはならない」といった取り決めがあるケースがたまに多くあります。

「物件を買ってゲストハウスを始めようとしたら、実は禁止だった」なんてことがないように、物件や土地を決める前に自治会や不動産会社、役場の担当者と相談するのが大切です。

冠婚葬祭に関するトラブル

地方では、いまだに冠婚葬祭の際にご近所さんがお手伝いに行くという慣習が残っている地域もあります。昔は、冠婚葬祭は地域で行うものであり自分の家の畳の部屋や公民館を利用してご近所総出で行っていました。今では、業者に頼むことで負担を減らしご近所さんに関係することは少なくなりましたが、地域によっては特にお葬式でお手伝いとして参加する場合があります。

地域によっては、お葬式の際にご近所さん同士で香典の額を相談し一律にして持って行く場合や、地域の代表の人が持って行くケースもあります。自治会に加入した場合は、最初に参加した会で自治会長に聞いたり、自治会に入っていない場合は事前に周辺の人にその辺りの事情を聞いておくとトラブルにならずに済むはずです。

トラブルを避ける最も効果的な方法はコミュニケーションと「知らない」と言うこと

トラブルのもとになるものの多くは、地元の人にとっては「当たり前」で「明文化するほどのルールではない」と思われていることに関係する場合が少なくありません郷に入っては郷に従えではありませんが、新しく加入する際に少しでも不要なトラブルを避けるために「知らないことは知らないと言う」「分からないことは分かりそうな人とコミュニケーションをとって学ぶ」ことを意識的に行うとトラブルは起こらないはずです。

また、もしトラブルが起こった場合は自治会の偉い人やご近所さん、役場の移住担当係などに相談してみましょう。1人で判断して行動してしまうと、価値観やルールが異なり逆に悪化してしまうこともあるので、ローカルルールをまずは知りそれに沿って行動することが大切です。

KAYAKURA

KAYAKURAは「新しい地域と観光を考える」をコンセプトに、地域と地域にまつわる言葉や動向を深く考える地域考察メディアです。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.