社会とは何か?社会学の知見から簡単に定義・意味・語源などを解説

KAYAKURAでは「社会」というカテゴリーをもとに、多くの社会科学用語解説記事を掲載しています。しかしそもそも「社会」とはいったい何でしょうか?

いまから33年ほど前、当時のイギリス首相マーガレット・サッチャーは「この世に社会など存在しない」という名言を残し大きな波紋を呼びました。当たり前に存在すると思われている社会ですが、そういわれてみると「ある」のか「ない」のかよくわかりません。

ただの「個人の集まり」は社会とは呼びません。社会とは相互行為によってその集団固有の秩序が形成され、外部とその集団で境界が存在するような状態、それを社会と呼びます。

「社会」を研究することを得意とする社会学の分野においてすら、今日まで社会の定義はとても多様です。それは社会を定義するものが日々変わっていること、そして多様な切り口で社会を捉えることができるからです。曖昧だからこそ良い意味で多様に解釈され用いられている言葉といえるでしょう。

この記事では社会学を専門とする筆者が「社会」の定義や意味をできる限りわかりやすく簡単に解説していきます。最後には社会をさらに深く知るためのおすすめ本も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

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社会とは何か?定義や意味を辞書から読み解く

まず初めに社会の辞書的な意味をみていきましょう。デジタル大辞泉によると主に5つの意味が社会にはあります。

  1. 人間の共同生活の総称。また、広く、人間の集団としての営みや組織的な営みをいう。「社会に奉仕する」「社会参加」「社会生活」「国際社会」「縦社会」
  2. 人々が生活している、現実の世の中。世間。「社会に重きをなす」「社会に適応する」「社会に出る」
  3. ある共通項によってくくられ、他から区別される人々の集まり。また、仲間意識をもって、みずからを他と区別する人々の集まり。「学者の社会」「海外の日本人社会」「上流社会」
  4. 共同で生活する同種の動物の集まりを1になぞらえていう語。「ライオンの社会」
  5. 「社会科」の略。

5の意味は授業科目の社会を指す特殊な用法です。ちなみに海外の小中学校には日本の「社会」にあたるような教科は存在せず、日本独特の用法といえるでしょう。4の用法では動物以外のものもさして社会といわれています。

1~3からわかることとしては「人間が複数人存在すること」「ある共通項によってくくられ営みや生活をしていること」が社会の定義の根底をなすということです。これは辞書的な意味だけでなく社会学的にも「社会」を指す際に用いられる定義に含まれます。

ただし「複数人」「人間の集団」を2人以上で社会と呼ぶか、3人以上で社会と呼ぶかは学者により認識が異なります。2人でコミュニケーションしている際にも、人はそれ以外の人間を意識して会話や振る舞いをしています。このときその場には2人しかいなくても3人以上いるということができます。3人以上が社会と定義した代表的な社会学者はゲオルグ・ジンメルです。

社会の定義・意味・歴史-日本語の社会の誕生-

もともと現在の意味での「社会」という言葉は、日本にはありませんでした。社会の「社」は、土地の神を指す言葉で、その神を中心とした小共同体を指す言葉として日本では使われていました。

明治初期の知識人はsocietyに対する日本語を見いだせずに困っていましたが、明治8~9年頃に「共通の特徴・目的をもつ階層や団体を意味する」言葉として限定詞を付けた「社会」が誕生しました。(※限定詞をつけた社会とは「学術社会」など、社会という単語の前に意味を限定する言葉がつく用法。

社会という言葉は明治初期に福地桜痴という人によってSocietyの訳語として生み出されたといわれています。限定詞の社会が誕生してすぐに限定詞のない「社会」が使われ始めます。従来の日本語で社会に似た意味を持つ言葉としては「世間」がつかわれていました。デジタル大辞泉でも2つ目の用法に世間が載っていましたね。

「社会」概念の誕生

「社会」「社会的 (social)」が今日とほぼ同じ意味でつかわれるようになったのは、社会契約説が登場する啓蒙思想の時代です。英語の「Social」の最も早い記述は17世紀末~18世紀初頭にかけてのロック, Jの著作にみられるといわれています。

フランス語では1765年出版の『百科全書』に「社会 social」という項目があり、「最近になって用いられるようになった新しい言葉」と書いてあるため、この言葉は英語圏よりも半世紀ほど遅く使われ始めたことが分かります。フランス語の「social」に深い影響を与えたのはルソー, J-Jです。

「社会」という概念の誕生は、国民・民族の成立ととても深いつながりがあります。絶対王政~アメリカ独立革命~フランス革命の流れの中で、西洋でははじめて「国民国家」という存在が誕生します。これははじめて人々に、直接の関係や行為の範囲をはるかに超えた社会の広がりを日常的に実感させることになりました。

それまでは地域単位で顔が見える範囲の共同体で人々は暮らし物事を考えていましたが「言語の統一」「出版革命により新聞や本が世の中に広まる」などによって、「私たちは同じ国の国民で、同じ民族なんだ!」という意識が人々に芽生え始めたのです。

私たちが今日、サッカーで同じ国の代表を応援したり国単位で特徴や傾向を語れるのも、国民国家が誕生し人々が社会に具体的なイメージを与えたからなのです。

「社会」について深く学びたい人におすすめの本

「社会」について取り扱った本は世の中にたくさんありますが、ここでは3冊ピックアップして紹介します。

1冊目のベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』は社会の誕生と深く関わる国民国家がどのように誕生したのかに迫った壮大な名著です。2冊目の菊谷和宏著『社会の誕生』はトクヴィル、デュルケーム、ベルクソンなどの社会層をもとに社会の誕生迫った本です。3冊目の『社会とは何だろうか』は日本を代表する思想家 鶴見俊輔による「社会」と「個人」の関係に迫った1冊です。

まとめ-社会とは何か、それは深い深い問い-

「社会とは何か」という深い問いに迫ってきましたが、多くの人が消化不良化と思います。なぜなら「わかったようなわからないような」感覚が残っているからではないでしょうか?社会の定義を考えるということは、いま私たちが生きている世の中のことを考えることとほぼ同義です。ぜひここで学んだ社会についての捉え方をもとに改めて社会の在り方・姿を読んでいる方なりに深く問うてもらえたらと思っています。

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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