特定地域づくり事業協同組合(総務省)とは?制度概要や課題をわかりやすく解説-地方で派遣で働き400万?-

総務省が実施する特定地域づくり事業協同組合(地域づくり組合)とは、地域の事業者が集まってつくる組合が移住者を雇用し、さまざまな仕事に派遣する新たな仕組みです。雇用者一人あたり年間およそ400万円の給与を支払えるように、国と自治体が運営費を助成します。

本制度は農業法人や観光産業など局所的に人が必要となる産業での地方における新たな働き方が想定されています。本制度を活用することで地方移住者をさらに増やすこと・地方での働き手不足を解消することが総務省の狙いです。

2020年6月4日に同制度に関連する法律が施行されたことをうけ、本記事では改めて特定地域づくり事業協同組合(地域づくり組合)の制度概要、特徴、期待点と課題点をわかりやすく解説していきます。「地方創生」「地方移住」について現在の国内状況を先に把握したい方はこちらの記事もご覧ください。

特定地域づくり事業協同組合(地域づくり組合)制度の概要

特定地域づくり事業協同組合制度とは、人口急減地域において、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合が、特定地域づくり事業を行う場合について、都道府県知事が一定の要件を満たすものとして認定したときは、労働者派遣事業(無期雇用職員に限る。)を許可ではなく、届出で実施することを可能とするとともに、組合運営費について財政支援を受けることができるようにする制度です。

ポイントは「派遣事業」であることと、「人口急減地域に限る」こと。制度に対しては「移住者に派遣仕事をさせるのか」「安価な労働者として若者を使い、かつその時期によってさまざま仕事を転々とさせるのはどうなのか」という批判があります。この批判についてはもっともな一方で、近年は逆に仕事や立場が固定することのリスクや不安を感じる若者・移住者もいます。

特に本制度を実施する総務省は近年、定住/永住ではない多様な移住の在り方によって地方に関わる人材を増やそうとしています。安定していない仕事にゆるく関わることによって地方で自己実現を達成したいというニーズは一定数あるため、実施していく中で「提供できるもの」と「求められるもの」のギャップをいかに埋めていくかがカギとなりそうです。

特定地域づくり事業協同組合(地域づくり組合)制度の目的

特定地域づくり事業協同組合制度が対象とする人口急減地域が抱える抱える課題として、事業者単位でみたときに年間を通じた仕事がないことがあります。特に農業や観光や時期によって大きく必要な人手が異なるため、就業者にとっては安定的な雇用環境とは言えず一定の給与水準を確保できません。これが人口流出の要因の1つとなっていたり、UIJターンの障害となっているといわれています。

そこで特定地域づくり事業協同組合制度では地域全体の仕事を組み合わせることで年間を通して仕事を創出することを目指します。さらに組合を設立し職員を雇用し事業者に派遣することで、安定的な雇用環境や一定の給与水準が確保でき、結果として地域の担い手を確保することが想定されているのです。

主な対象としては地域内の若者や地域外の若者が想定されており、地方での働き方の新たな選択肢が増えるのではないかということで期待されています。

特定地域づくり事業協同組合(地域づくり組合)制度の財政支援

特定地域づくり事業協同組合制度によってつくられる組合の運営費のうち、1/2の範囲内で公費による支援が行われます。国からの支援が1/2、自治体からの支援が1/2ということで半分は公費で賄われ、もう半分は事業収入を確保することが求められます。

この点については、果たして人口急減自治体に1/4を賄う財政的余裕があるのか、1/2を組合自身が収入として得られるのかなどの課題があります。(複数の地方財政措置策は講じられる予定)

対象となる経費は「派遣職員人件費」と「事務局運営費」です。対象経費の上限額は派遣職員人件費が年間で1人400万円、事務局運営費が年間で600万円です。

事業の継続性を考えた際に、当初は公費によって半額が賄われますが本制度がいつまで続くのかは現時点では未定です。常時公費ありきの運営体制では自立性がなく収益性もあまり見込むことができないため、各組合は「いかにして自立していくか」を公費による支援がある中で真剣に検討していくことが求められるでしょう。

特定地域づくり事業協同組合(地域づくり組合)制度活用の流れ

特定地域づくり事業協同組合制度に関する法律が2020年6月4日に施行されましたが、ここからまずは組合設立希望調査が開始され結果を各都道府県がとりまとめます。

7月以降に各都道府県から組合設立希望聴取、補助採択見込みの検討・都道府県への内示が実施され、これは以降、毎月実施される予定です。また8月以降に各都道府県が認定対象組合を内定し、8月~2021年3月まで組合の設立と事業実施が順次される予定です。

最後に-特定地域づくり事業協同組合は地方の課題解決にどの程度効果をもたらすか-

総務省は本制度を活用することで、安定的な雇用環境と一定の給与水準を確保した職場を作り出し、地域内外の若者等を呼び込むことができるようになるとともに、地域事業者の事業の維持・拡大を推進することができるとしています。

選択肢が限られた地方において選択肢が1つまた1つと多様になることは良いことですが、公的な補助ありきで持続可能性が低い組合が多く生まれることが予想されます。また組合の運営に非ローカルな企業が群がり新たな補助金ビジネスになることも予想されます。自治体や国は公的に支援するだけでなく組合が自立していくための支援も実施することが重要になってくるでしょう。(それにしても今の時代に「組合」を制度名に冠すのはなかなかだなと思った人は、筆者以外にも多いはず…)

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参考資料
特定地域づくり事業協同組合制度について 総務省
制度ガイドライン

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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