東京都の人口1400万人突破について解説-2020年コロナ禍の東京一極集中の実態と是正策-

「新型コロナウイルス収束後に地方移住が加速する」そんな希望観測的な言説がメディア上でみられますが、6月10日11日の東京都の発表はそんな予測を打ち壊すものでした。

日本経済新聞が6月10日発表した内容によると、東京都の2020年5月1日時点で推計した人口が初めて1,400万人を突破したことが明らかになりました。人口の東京一極集中是正と地方の再興を目指す地方創生には成功事例も一部ある一方で、本来の目的と照らし合わせると効果が出ていないことがわかります。

この記事では東京一極集中の歴史とこれまでの傾向を整理するとともに、東京一極集中を是正していくために必要な取り組みについて検討していきます。東京一極集中と地方移住について関心がある方はこちらの記事もご覧ください。

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東京都の人口増加傾向-東京一極集中加速の歴史-

東京都の人口は1962年に1,000万人をはじめて突破し1966年には1,100万人を超えました。この時代、高度経済成長期以降約20年間で約1,500万人以上が東京都をふくむ都市に移動し、1975年には都市人口が75.9%となりました。これ以降、日本は世界的に珍しい極端な都市化社会&人口一極集中社会となっています。

東京都の人口が1,200万人を突破するのは2000年で1,100万人の突破からは30年以上あきました。この間の伸びが緩やかになったのは日本経済の成長が鈍化したこと、そしてバブル崩壊とその後失われた10年と呼ばれた時代に突入したことが理由として考えられます。2000年以降は緩やかな右肩上がりとなっており東京都の人口増加局面は今日も続いています。ちなみに2000年の調査時は日本の全人口の78.7%が都市在住でした。

2020年の東京都の人口-緩やかに高まり続ける東京一極集中-

東京都は2015年10月1日の国勢調査を指標として、毎月住民基本台帳の増減を反映して人口を推計してきています。2020年4月1日時点では1,398万人でしたが、政府が4月に重点的な新型コロナ対策が必要な「特定警戒都道府県」に東京都を指定した後も人口は増えたことが今回の調査結果からわかります。

コロナ禍では都道府県を超える不要不急の移動を押さえるようにアナウンスされましたが、4月5月は年度はじめで大学進学や就職などの不要不急ではない移動を行う人々が多くいました。結果として2020年5月1日時点で推計した人口がはじめて1,400万人を突破したと考えられます。ちなみに東京都の周辺地域も含めた東京圏への転入超過は24年連続となっています。

新型コロナウイルスと地方移住加速の議論-それでも増える東京都の人口-

新型コロナウイルス発生以降、テレワーク/リモートワークを導入する企業が増えたこと、リスク社会における都市のリスクが顕在化したことなどによって「地方移住加速論」が高まっています。

筆者はこの件について短期的には移住に興味関心があった人々がコロナをキッカケに行動する可能性がある一方で、中長期的にみると適切な施策/政策を実施しなければ地方移住は加速しないと考えています。これは東日本大震災後のある現象に基づく予測です。

1990年以降、1994年1995年に一時東京圏から地方への転出超過となりましたが、1996年以降は今日まで東京への転入超過傾向にあります。注目すべき点は東日本大震災の2年後2013年以降、東京圏への転入が増加傾向となったことです。

東日本大震災のあった2011年翌年2012年は東京圏から地方への転出者数が一時的に増加し転入超過数が減少しました。しかし2013年以降東京圏への転入が増加しているという事実は「社会的な危機によって都市のリスクが顕在化し一時的には地方移住の流れが起こったが、忘れた頃には社会的危機以前よりも都市に人々(特に若者)が向かう」ということを表しています。

新型コロナウイルスによって地方移住が進むという現在の言説は一時的にはその通りになるかもしれませんが、長い目でみるとうまくはいかないということを東日本大震災は私たちに示しています。今回、コロナ後に地方移住を長期的に加速させるために重要なのは「ゆるく移住に関心がある層をどう行動にもっていくか」です。

東京都の人口増加/東京一極集中を是正するための2つの方策

東京一極集中を是正するための方策は大きく2つのベクトルで考えられます。1つ目は地方在住者(主に若者層)が東京都に移住することなく、地方地域内で充実した生活が送れる仕事や住まいの環境を整えることです。こちらは地元企業との接点を学生自体からもつこと、若者や女性が暮らしにくい地域の悪しき慣習を無くしていくこと、地方大学の質を高めることなどが具体的方法として考えられます。

1つ目は東京都在住者の地方移住ハードルを低くすることです。Iターン者に注目が集まりがちですが地方移住のパイとして最も多いのはUターンです。地方自治体はUターン者の受け入れ環境を整えることが重要です。IJターン者に関しては仕事の不安・情報不足に関する不安・人間関係に関する不安が地方移住に際しては多いことが過去の調査で明らかになっているため、これらの不安を解消する方策を実施する必要があります。

最後に-何もしなければ何も起こらず事態は悪化の一途を辿る-

今回の調査で改めて明らかになったことは「地方移住は簡単には促進されず、何もしなければ東京一極集中が加速する一方である」という事実です。各種調査によって地方在住の若者は以前と比べて東京に移住したいという気持ちは高まっておらず、逆に地元志向が高まっているといわれています。

このような中で東京一極集中が進んでいるのは「東京に行きたいか行きたくないかではなく、地方/地元にいたくないという気持ちが強い」という事実があるからです。東京一極集中を止めるためには地方自治体がいかに若者や女性にとって生き心地の良い環境をつくっていくかが重要です。何もしなければ何も起こらず自体は悪化する一方であるということを自覚し、効果的な施策を実施していくことが求められます。

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参考資料
東京都の人口、1400万人を突破 コロナ禍でも一極集中

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.