「オンラインorオフライン」「都市or地方」で見落とす複雑さに目を向ける

コロナ禍においてオンラインコミュニケーションの時間が増えた人は少なくない。オンラインの普及は私たちの働き方や暮らし方にも大きな影響を与えている。

語る主体によって異なる「地方」に臨むこと

岡山県庁では4,5月の移住電話相談件数が前年同期比2.5倍増となった。またコロナにより都市の脆弱性やリスクの顕在化により、二地域居住や地方移住、ワーケーションなど拠点の移動や複数地域とつながる暮らしを考え始めた人もみられた。

筆者は先月、ワーケーションの取材で栃木県の那須高原を訪れた。主催企業は今回、那須高原でワーケーション事業を始めた理由を「東京から新幹線で約1時間。緊急の用事があってもすぐ本社に戻れる距離感が魅力のひとつ。これより離れると厳しい」と説明。彼らにとって地方やローカルはあくまで「東京とのアクセスが良い」ことが前提にある。

オンラインがどこまで普及しても超えることのできない物理的なオフラインの重要性を示している。

高まる物理的なオフラインの重要性

エクスペディア・ジャパンの調査によれば、日本人がホテルでもっとも重視するものは「Wi-Fiの有無」である。Wi-Fiはオンラインコミュニケーションにおいて必須だが、ルーターという「物質」が無ければ使えない。

一般社団法人移住交流推進機構の調査によれば東京圏在住者が移住に興味を持つ理由の1位は自然環境である。リモートワークが普及し住む場所も働く場所も自由になった人は増えたが、一方で彼らは自然環境という移動できない物質(資源)に魅かれ移住している。

また那須高原の事例からは、オフラインの交通インフラと地理的特性が、人々の選択に大きな影響を与えていることがわかる。

曖昧な二項対立枠組みを脱構築した先にある、コロナを経た世界

このようにオンラインの普及でオフラインの存在感が高まる構図は、グローバル化によるローカルの価値の高まりという構図と重なる。

グローバル化によりあらゆる境界は低くなり人・モノ・カネ・情報は自由に移動できるようになった。しかしその反動として「どこで暮らすか」という選択の重要度は増している。選択肢が増えた中でなぜその地域を選ぶのか。地域活性化やまちづくりの活発化にみることができる。

今後「オンラインかオンライン」「中央か地方」など、単純化された二項対立枠組みでは見えない複雑さや違いが価値をもつ。

コロナ禍において「地方に可能性はあるか?」「オンラインは社会を変えるか?」といった問いを見かけることが増えたが、コロナ後の世界を正確に読み解くためには、まずは曖昧な二項対立枠組みを脱構築しなければならない。

同じ地方でもアクセスの良し悪しや環境によってとるべき施策は異なる。他所の成功例や曖昧で耳触りの良い言葉に惑わされてはいけない。

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参考資料
日本人がホテルで重視するポイントは?
山陽新聞digital,「県への移住相談、4月から急増 コロナ影響、首都圏や関西から」.
・一般社団法人移住交流推進機構 「若者の移住」調査

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。