日本の存命する有名な社会学者10人-上野千鶴子、宮台真司、大澤真幸、岸政彦 他-

「社会学者」とGoogleで検索すると「炎上」「胡散臭い」などのキーワードがヒットします。これは一部の社会学者がマスメディアに登場して発言する内容が、一般視聴者にとって「何言ってるの?」「そんなこと今さら問い直してどうするの?」と思われるようなことが度々あるからだと思います(もちろん、発言そのものが不適切だったり間違っていることもある)。

ここで声を大にして言いたいのは「マスメディアに登場する社会学者の姿で社会学者を胡散臭いと決めつけず、ぜひ社会学者が書いた本を読んでみてください!」ということです。日本を代表する有名な社会学者10人の簡単なプロフィールと代表作を紹介していきますので、ぜひ興味関心のある方は購入して読んでみてください。きっと「社会学っておもしろいな」と思ってもらえるはずです。(なお今回は2020年4月時点で存命している方を選出対象としました。選出基準は筆者の独断と偏見です。)

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社会とは何か?社会学の知見から簡単に定義・意味・語源などを解説

上野千鶴子

上野千鶴子さんは東京大学名誉教授、現在はNPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長を務めています。専門は女性学、家族社会学、ジェンダー論など。修士課程在籍時に上野先生の授業を受けたことがありますが、理論と実践が圧倒的なレベルで融合する実践的研究者です。上野先生曰く社会学へのモチベーションは興味関心と「怒り」とのこと。家父長制が未だ残る日本社会への怒りが力となって現在でも多くの著作を発表されており、その発言は常に社会の注目を集めています。2019年東京大学入学式での祝辞も話題を呼びました。「フェミニストは論理的じゃない」と思っているような人はぜひ1度著作を読んでみてください。

大澤真幸

大澤真幸さんは元京都大学教授で数理社会学を専門とする社会学者です。1990年代に宮台真司さんと共にオウム真理教問題などをキッカケに広く世の中に知られました。2010年からは思想誌『THINKING「O」』を発行。2011年には『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書、共著橋爪大三郎)で新書大賞を受賞しました。その独特の風貌(もじゃもじゃの髪型)から一部ネット上ではネタ化されることもある社会学者ですが、2019年に発刊された600ページ超えの新書『社会学史』は約4万部売れるなど、圧倒的な編集力とオリジナリティあふれる読者を引きつける文章で未だに活躍し続けています。

小熊英二

小熊英二さんは慶應義塾大学教授で専門は歴史社会学・相関社会科学の社会学者です。学部卒業後、岩波書店に入社し社会人系経験を積んだ後、2007年から慶応義塾大学で教授を務める遅咲きの社会学者です。著書は一般向けから専門書まで多数出版されており、サントリー学芸賞、第57回毎日出版文化賞第2部門、第3回大佛次郎論壇賞、角川財団学芸賞、第14回小林秀雄賞と受賞歴では右に出るものがいないほど評価されています。政治思想、ナショナリズム、民主主義について深く知りたい人に小熊英二さんの著作はとてもおすすめです。

岸政彦

岸政彦さんは立命館大学大学院先端総合学術研究科教授で、沖縄をフィールドに長年質的調査を行っています。長年のテーマは個人の生活史を通して歴史や構造をはるかに見渡すこと。近年は研究をもとに執筆した書籍『ビニール傘』が第156回芥川賞候補、第30回三島賞候補にノミネートされたことで有名になりました。近年はワイドショーでおなじみの古市憲寿さんも小説を執筆して話題になりましたが、小説を執筆した社会的に高く評価された最初の社会学者は岸政彦さんです。

本田由紀

本田由紀さんは東京大学大学院教育学研究科教授で専門は教育社会学です。同じく東京大学教授の玄田有史さんが提唱した「ニート」という概念の曖昧さと問題点を指摘したことで注目を集めました。学校教育や専門学校が抱える問題についても長年研究しており、爆笑問題のニッポンの教養、NHKスペシャルなどにも過去に出演してこの点から鋭くコメントしています。若者の就職問題や学校教育が抱える課題について深く知りたい人におすすめの本を多数執筆しています。

見田宗介

見田宗介さんは東京大学名誉教授で御年83歳ですが衰えを知らない社会学者です。時間論、自我論、関係論などを切り口に従来の社会学が扱ってこなかった題材と当時の日本社会が抱える課題を重ね合わせながら鮮やかに分析しました。本記事で紹介する吉見俊哉氏、大澤真幸氏、宮台真司氏、小熊英二氏らが見田ゼミの出身者でいま第一線で活躍する社会学者を多く育てたことでも知られています。2017年4月にはこれまでの功績が認められ瑞宝中綬章を受賞しました。読みやすい新書サイズの本も多数執筆しているので、社会学初心者でも楽しめる本が多数あります。また全10巻の著作集も出版されているのでガッツリ見田ワールドに浸りたい方はこちらに挑戦するのもおすすめです。

宮台真司

宮台真司さんは東京都立大学教授で1990年代~現在まで数多くの番組でコメンテーターを務める最も知られた社会学者の1人です。1990年代は援助交際の研究、オウム事件の研究を通して名が知られましたが本来の専門は社会システム論という社会学分野です。1999年からジャーナリストの神保哲生さんが代表を務めるインターネット放送局ビデオニュース・ドットコムで、神保とともに『マル激トーク・オン・ディマンド』のホストを務めているので動画を調べれば多数出てきます。最近ではNewspicks『人類をアップデートせよ』にも登場するなど精力的に一般視聴者ともコミュニケーションを取り続けています。

山口一男

山口一男氏はアメリカで活躍する日本人社会学者で現在はシカゴ大学ハンナ・ホルボーン・グレイ記念特別社会学教授を務めています。2003年に1981年から1999年の間に社会科学一般の部で被引用文献多数の250人中1人と米国の科学情報研究所から認定されました。このすごさは伝わりにくいですがとてもすごいことなのです。日本語での著作はそこまで多くありませんが、家族と就業、ワーク・ライフ・バランス、ライフコースと職業キャリアなどを専門に世界的に評価されている社会学者です。著書『ダイバーシティ』は物語形式で子どもに分かりやすくダイバーシティを伝える内容の本で、本記事で紹介する本の中で最も読みやすいおすすめ本です。

吉原直樹

吉原直樹さんは東北大学名誉教授で都市社会学・地域社会学・アジア社会論が専門の社会学者です。多数翻訳を手掛けており観光や移動、場所についての著作が知られるジョン・アーリの本やマニュエル・カステルの本などを訳しています。メディアに多く登場するタイプの社会学者ではありませんが、その著作はグローバルとローカルを行き来するグローカルなまなざしを私たちに授けます。近現代の都市の在り方は、戦後の地域社会、東日本大震災後の防災、コミュニティと地域について学びたい方はぜひ吉原直樹さんの著作を読んでみてください。

吉見俊哉

吉見俊哉さんは東京大学大学院情報学環教授で元東京大学副学長です。専門は都市論、文化社会学(カルチュラル・スタディーズ)です。現代社会の都市、メディア、文化などを分かりやすく解説する書籍を多数出版しており、コアなファンも多い社会学者です。2011年には大学の現状に危機感を抱き、大学を再定義すべくその壮大な歴史をたどる『大学とはなにか』を発表し議論を巻き起こしました。

最後に-日本にはここで紹介した以外にも魅力的な社会学者がたくさん-

ここで紹介した10人は一般的に知名度が高かったり長年社会学の世界にいることで知られている方々ですが、若手の研究者でも興味深い研究をしている方はたくさんいます。ぜひ書店に行った際は社会学系の本を立ち止まって手に取ってみてください。またKAYAKURAでは社会学用語やおすすめ本の解説記事を多数掲載していますので、ぜひそちらも読んでみてください。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

これからの地域・社会・観光を考えるWebサイトKAYAKURA編集部です。編集部記事では、KAYAKURAメンバーの専門性を生かした記事や、わかりやすくまとめる解説系記事を公開しています。