コミュニティとは何か?研究者が定義と歴史をわかりやすく解説(社会学)

今日あらゆる文脈で用いられる「コミュニティ」という言葉。当たり前のように使っているが改めてその意味を問われると答えるのは難しいだろう。研究者によってもその定義はバラバラであり、人の数だけ定義があるといってもいいほどである。

全てのコミュニティに共通するのは「人が集まって成り立つ」ことしかない。もう少し狭めるなら「何らかの領域性」「社会的な相互作用(メンバー間のコミュニケーション)」「共通の絆」が当てはまる場合が多い。

本記事では社会学における日本のコミュニティ研究とコミュニティ概念の拡張を特に現代のコミュニティの変遷に焦点をあてて整理する。取り上げるコミュニティ関連のキーワードは以下の通り。

  • コミュニティの古典研究
  • コミュニティビジネス
  • オンラインコミュニティ
  • 地域コミュニティと地方創生
  • 東日本大震災とコミュニティ
  • コミュニティデザイン
  • コワーキングスペースとコミュニティ
  • オンラインサロン
  • コミュニティマーケティング
  • コミュニティビジネス

おそらく本記事はオンライン上にみられる日本語記事の中で、最もコミュニティについて詳しく解説した記事である。コミュニティに興味関心のある人、コミュニティを運営している人、コミュニティとビジネスを絡めていきたい企業など、全ての人のコミュニティ理解を促進するものとなれば幸いである。

マッキーヴァ―とヒラリーによるコミュニティの定義

社会学ではおよそ1世紀以上コミュニティについての研究が蓄積されてきた。マッキーヴァーが1917年に『コミュニティ』の中で定義したコミュニティは「場所や空間を共有する結合の形式で、地縁による自生的な共同生活」として定義され、対置されるアソシエーションは「目的や関心を共有する結合の形式で、契約による人為的な団体」として定義された [MacIver, R, 1917]。

1955年にヒラリー, Jr. G. Aが社会学の既存研究におけるコミュニティの定義を取り上げて詳しく検討した際には、94のコミュニティ定義の中から16種類の異なった概念が抽出され、そのうち22通りの組み合わせが存在することを明らかにした。

ヒラリーはコミュニティ定義の最大公約数が①一定の地理的範域 ②社会的相互作用 ③共通の絆であることを明らかにしたが、全てに共通していたのは唯一「コミュニティは人々から成り立っている」ことだけであり、コミュニティ概念の厳密さの欠如を表すとともにコミュニティに定まった定義がないことを明らかにした [Hillery, 1955]。

1960年代末~1970年代日本におけるコミュニティ政策

日本において地域社会を指す言葉としてコミュニティが使われるようになった1つのルーツは、1960年代末の国民生活審議会調査部会コミュニティ小委員会の報告「コミュニティ─生活の場における人間性の回復」(1969年)にある。

急速に進む都市化を受けて新旧の住民が入り乱れた新しい地域をまとめるには、それまでの村落共同体のような伝統的な秩序は有効ではなかった。そこで取り入れられたのがコミュニティ概念であった。町村によれば自治省により1971年度から進められた「モデルコミュニティ構想」は大きな時代のうねりとなり影響力を増していった。

同時にコミュニティ政策は新しい課題を浮き彫りにした。第一にコミュニティと旧来の伝統的な共同体(町内会や自治会など)との緊張関係、第二にコミュニティ・センターの建設を中核に据えた事業であったためセンターの住民管理と新たな箱もの主義という課題、第三にコミュニティ政策が上からの官製コミュニティづくりではないかという批判があった [町村敬志, 2017]。

コミュニティ政策の評価は研究者によるがこれをキッカケに日本においてコミュニティ=地域の公式が定着した。

コミュニティ・ビジネス

コミュニティ・ビジネスの誕生と定義

1995年の阪神淡路大震災をきっかけに市民活動やボランティア活動が盛んに行われるようになり、1998年に施行された特定非営利活動促進法によってNPO活動が広がり始めた。

NPO法人は2005年の会社法の設立や2006年の施行による法律改正もあり設立のメリットが少なくなり、2000年代に入るとNPO法人に変わる主体が登場し始めた。その1つがコミュニティ・ビジネスである。

コミュニティ・ビジネスの一端を担うのは多くの場合NPO法人ではあるが、株式会社、有限会社、協同組合、個人商店などからもコミュニティ・ビジネスに取り組む人々が増えていった。

コミュニティ・ビジネスは和製英語であり、細内信孝らによって1994年頃から使われ始めた概念である。西村によればコミュニティ・ビジネスには決まった定義がないまま今日まで曖昧に用いられている。

西村が2007年にコミュニティ・ビジネスに携わる各団体や個人が定義づけた内容をキーワード化し、その定義の共通性や差異性について整理した研究によれば、コミュニティ・ビジネスの共通のテーマは「地域の問題・課題を解決すること」にある [西村剛, 2017]。

「コミュニティ」と「ビジネス」の出会い

社会学や政策面で主に用いられてきたコミュニティ概念は、企業のような目的を共有したアソシエーションではなく「地縁による自生的な共同生活」が特徴であった。

しかし1994年に誕生したコミュニティ・ビジネスでは、事業性が求められ経営していく際には付随して主体性、目的性、計画性、組織性、経済性、収益性、経営性が求められる「ビジネス」という単語と組み合わさった [西村剛, 2017]。

コミュニティ・ビジネス自体はビジネスの手法を用いて地域の課題を解決するものである一方、この概念は一見すると相反する2つのものによってできたコミュニティ×アソシエーションな用語であるともいえる。ここから、コミュニティとビジネスの距離は近づいたといえるだろう。

押さえておくべきは、コミュニティ・ビジネスは「コミュニティの課題」を解決するために「ビジネスの手法」を用いるものであり、目的語が「コミュニティ」手段が「ビジネス」である点である。

1990年代後半~現在のオンラインコミュニティ

オンラインコミュニティの誕生

1990年代まではコミュニティ=オフラインであったが、インターネットの普及により「オンラインコミュニティ(コンピュータ通信を介した人々の相互行為を通じて形成される集まり)」に人々が参加するようになっていった [平井智尚, 2017]。

ハワード・ラインゴールドは著書『バーチャル・コミュニティ』の中で、1985年に設立されたWELL(Whole Earth Lectronic Link)と呼ばれるパソコン通信の電子会議システムで形成されたコンピュータを媒介とした社会集団を「バーチャル・コミュニティ」と定義し、「ある程度の数の人々が、人間としての感情を十分にもって、時間をたっぷりかけてオープンな議論を尽くし、サイバースペースにおいてパーソナルな人間関係の網をつくろうとしたときに実現されるものである」と説明している [ハワード・ラインゴールド, 1995]。

平井によれば、ラインゴールドのバーチャル・コミュニティ概念は旧来のオンラインコミュニティだけでなく、2017年時点のSNSを通じて形成される人々の集まりにも認められる要件である。集団的な活動への関与、儀礼や社会的な取り決めの共有、参加者間の定番化された相互行為、一体感・所属意識・愛着、コミュニティの存在に関する自己認識などである [平井智尚, 2017]。

オンラインコミュニティの誕生で弱まったコミュニティ=物理的地域

オンラインコミュニティの議論でみられるのは、物理的な地域ではなく人間関係そのものをさすコミュニティの用法である。

Gusfieldによれば、コミュニティには物理的地域としてのコミュニティと人間関係としてのコミュニティという2つの用法があるという。そのうえで社会学や社会的施策に関する多くの領域に非常に強い影響力があることから、とくに後者の用法に注目して議論を進めている [Gusfield, 1975]。

インターネットの登場によって物理的に存在しない空間が誕生し、コミュニティ=領域性をもつ地域の用法はそれまで以上に融解し、コミュニティという言葉が人間関係全般を指すものとして利用され始めた。

Gusfieldが議論を展開した1975年時点ですでにその傾向はあったが、インターネットの誕生によってこれ以降、より人間関係としてのコミュニティの用法が広まっていった。

地方創生・限界集落とコミュニティ

SNSや掲示板を代表とするオンライン上のコミュニティが勃興した2000年代前半を経て2000年代中盤になると第二次コミュニティブームともいえる状況が訪れたと小田切は言う [小田切徳美, 2007]。このときのコミュニティは物理的地域としてのコミュニティである。

NHKテレビの「ご近所の底力」が地域コミュニティを取り上げはじめ話題となったのが2003年、総務省がコミュニティ研究会を設置し地域コミュニティによる子育てという伝統的な論点やIT技術をコミュニティ再生に活用するという新しい方法の提案などの幅広い要素が、政策文書らしくない熱い思いが溢れるような筆致で問題提起しコミュニティ再生の在り方を検討し始めたのが2007年、小泉構造改革路線来の地域間格差の是正が選挙の焦点となり限界集落問題がクローズアップされたのが2007年2008年だったことなどが理由としてあげられる [小田切徳美, 消えゆく「限界集落」, 2010]。

背景には限界集落を典型とする物理的地域のコミュニティ機能の脆弱化、平成の大合併を経て住民自治の強化や地域コミュニティを受け皿として強く期待されたことが挙げられる。

結果として第二次コミュニティブームはブームで終わることなく、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災を経てリスク社会を生き抜くすべとして地域活性化や地方移住の加速と相まって今日まで姿かたちを変えながら続いているといえるだろう。

東日本大震災とコミュニティ

東日本大震災後の日本では、過剰な期待ともいえるほどコミュニティという言葉が用いられるようになりその様相は吉原の言葉を借りれば「コミュニティ・インフレーション」ともいえる状況を生み出した [吉原直樹, 2013]。

姿を消しつつあった伝統的な地域社会が災害時の助け合いの基盤となること、災害をキッカケに「つながり」「絆」という姿かたちは見えないけれどどこか温かな印象をもついまの社会に必要そうなもの、公的なものの私物化を通してビジネスチャンスの拡大をもくろむ者たちによる利用など、さまざまな理由によってコミュニティに対する過剰な期待や願望が実態から乖離したところで一方的に膨らむ「コミュニティ・インフレーション」を起こしたのである。

日本におけるコミュニティ論は2011年3月11日以降、東日本大震災を抜きに語ることはできない状況となっているのは確かである。

コミュニティデザイン

コミュニティデザインの誕生

「コミュニティ」という言葉は日本において当初は行政主導で人々の暮らしの中に導入された言葉であったが、コミュニティ・ビジネスの広まりや東日本大震災、インターネットの発達などにより市民活動の現場や地域とは関係のない文脈で、Gusfieldのいう日常用語としてのコミュニティがさらに用いられるようになっている。

コミュニティをデザインすることを生業とする人が注目を集め始めたのはコミュニティの重要性が声高に叫ばれ始めた東日本大震災後である。

コミュニティデザインは、2011年に東北芸術工科大学・京都造形芸術大学、studio-Lの山崎亮の著書「コミュニティデザイン-人がつながるしくみをつくる」で広く世に知られた概念である。山崎らが関わった兵庫県三田市の有馬富士公園、鹿児島県鹿児島市のマルヤガーデンズ、兵庫県姫路市のいえしまプロジェクトなどのデザインが、その代表的な仕事として知られている。

コミュニティデザインの定義と特徴

山崎によればコミュニティデザインとは「人のつながりのデザイン」である。より具体的にいえば「人の集まりが力を合わせて目の前の課題を乗り越え、さらに多くの仲間を増やしながら活動を展開することを支援する」ことを目指す一連の流れと手法をコミュニティデザインと呼ぶ。

山崎はコミュニティデザインという言葉を使うことで「ハード(箱もの)」のデザインと区別し、ソフトな手法で上記の目標を達成することを目指した。現在では山崎氏に影響を受けさまざまな地域でコミュニティデザインの手法を用いて課題解決の活動に取り組む人がいる。

2000年代前半に広まったコミュニティ・ビジネスがある地域の課題を解決するためにその地域の人々がビジネスの手法を用いたのに対し、コミュニティデザインは企業や個人がさまざまな地域でコミュニティデザインという手法を用いて地域住民や行政と協働で地域課題を解決し活性化する事例である。

その際にコミュニティデザインという手法は企業が用いればコミュニティはある種ビジネスのための手段となり、ボランタリーな個人や地域団体が用いればコミュニティ再生のための手段となった。ここに企業がコミュニティを「道具化」する事例が登場したといえるだろう。

概念の「曖昧さ」を特徴に広がりつづけるコミュニティ

平本によれば、コミュニティデザインにおいて「コミュニティ」概念がどれだけ学術的に厳密に使われているかは問われない。「コミュニティ」概念が、モノ/コト、ハード/ソフトのうちコトやソフトのほうを緩やかに指示していることや、「人のつながり」や「人の集まり」と結びつけられるものであることが、実際上十分にわかり伝わればそれで問題ないのである。

むしろ曖昧さを含む概念であるからこそ、「コミュニティデザイン」に携わる者は自分の立場を表明し仕事を行うことができるのである [平本毅, 2015]。

社会学における学術的な定義は約100年間曖昧なまま厳密さを模索し続けてきた。しかしGusfieldが示したように日常用語としての「コミュニティ」はその「曖昧さ」を特徴として広がり多くの人が用いるようになったのである。

2010年代のコミュニティの氾濫ともいえる状況はまさにこのコミュニティ概念の曖昧さと、バウマンの言葉を借りれば「よいものだという語感」が人々にとりわけ甘く響くことによって広く用いられているようになった [ジグムント・バウマン, 2017]。

コワーキングスペースというコミュニティ

コワーキングスペースの定義

コワーキングスペースは2005年頃にアメリカで誕生した新しいワークスペースの形態である。

日本では2010年5月に最初のコワーキングスペースが誕生し、その数は年々増加。CBREの調査によれば2018年時点で東京都内のコワーキングスペースは346拠点となり、東京23区の賃貸オフィスマーケット市場規模に対して、面積ベースで1.0%の割合を占めるまでになった [CBRE, 2018]。

宇田によればコワーキングとは「働く個人がある場に集い,コミュニケーションを通じて情報や知恵を共有し,状況に応じて協同しながら価値を創出していく働き方」を意味し、コワーキングスペースとはコワーキングを実践する個人が物理的に共有するワークスペースを指す [宇田忠司, 2013]。

コワーキングスペースの特徴とコミュニティとの関連性

コワーキングスペースの特徴は仕事場の開放性や参加する人々の多様性、仕事を遂行する際の近接性などが挙げられるが、宇田らによればコワーキングスペースのオーナーや運営者が、いわゆる「レンタルスペース」ではなく,上記のような特徴を有するコワーキングスペースを開設する場合,いかに (自らにとって) 望ましいコミュニティをつくり、それを維持および発展させるかが中心的な課題になるという [宇田 阿部, 2018]。

コワーキングスペースにおけるコミュニティの意義は利用者も強く感じており、第1回GCSによれば全利用者の96%がコワーキングスペース利用者間の重要な価値はコミュニティであると回答している [deskmag, 2010]。

第1回GCS第2回GCSによれば、スペースを利用することで人の輪が拡大した(90%)、孤立感が緩和された(86%)、仕事上のネットワークが拡大した(80%)と示されており、コワーキングスペースにおけるコミュニティの意義は大きいことがわかる [deskmag, 2011]。

分断するコミュニティイメージと用法

コワーキングスペースは「個々の仕事や目的達成のための物理的ワークスペース」として、世界的な規模で広がり続けるコミュニティ文化である。

コミュニティに加わることで利用者はさまざまな恩恵を受けていることはGCSによって明らかにされたが、それはコミュニティの維持存続を最上位目的とするものではなく人間関係としてのコミュニティを自身の目的達成やビジネスのために活用するものである。

コワーキングスペースは当初から質の高いコミュニティを形成することが運営者にとってメリットをもたらし、質の高いコミュニティは利用者がビジネスで成功するために魅力的なものとなった。コワーキングスペースにおいてコミュニティは全アクターのビジネスでの成功という目的のための完全な手段となったのである。

近年日本においては地域の活性化を目指すためのサードプレイスとしてコワーキングスペースをつくるケースもあるが、それは全体としてみれば少数である。また地域社会としてのコミュニティと積極的に関わるコワーキングスペースも少なくはないが、それも最終目的はビジネスでの成功であり物理的地域としてのコミュニティは手段になる。

ここで明らかになるのは、物理的地域としてコミュニティという言葉を用いる人と、人間関係としてコミュニティという言葉を用いる人とでは「コミュニティ」のイメージは全く異なるものになり、同じ言葉でありながら正反対の集団を指している実態である。

オンラインコミュニティ/オンラインサロン

2020年現在、コミュニティという言葉はブームともいえるほどさまざまな分野で用いられている。数あるコミュニティ関連の言葉の中から2017年頃から認知度が高まってきたコミュニティ関連の用語を3つみていく。オンラインサロン・コミュニティマネージャー・コミュニティマーケティングの3つである。

オンラインサロンの定義と歴史

オンラインサロンとはDMMオンラインサロンによれば「学べる・楽しめる会員制コミュニティサービス」CAMPFIREによれば「同じ想いを持った仲間を集めてディスカッションを行ったり、プロジェクトを計画したり、その活動に伴ったオフ会も開催できる仕組み・コミュニティだけでしか知り得ない良質な情報を支援者に届けることができる仕組み」である。

2011年8月にMG(X)がオンラインサロンという言葉を用いり始めたのを皮切りに、2012年オンラインサロン・プラットフォーム「Synapse」開始、2016年2月DMMラウンジ(現DMMオンラインサロン)開始、翌2月にDMMがSynapseを買収、CAMPFIREが運営する継続課金型コミュニティプラットフォーム「CAMPFIREファンクラブ」が継続的な資金調達ニーズの利用機会拡大を目的に、2019年に「CAMPFIRE Community」にリニューアル、とその規模と認知度を高めてきたのがオンラインサロンである。

オンラインサロンと従来のインターネットコミュニティの違い

従来のインターネット上のコミュニティとの違いは、①月額会員制 ②Web上で展開されるクローズドな集まり ③個人や企業など明確な立ち上げ人や運営者がいる、などがあげられる。意見が異なる人やアンチによる炎上リスクを低くするため、企業がファン集団を利用してビジネスで利益をあげるために①~③のような特徴をもっている。

2018年頃からオンラインサロンの検索トレンドは急激に高まり、2019年からはDMMオンラインサロン上で企業や行政がオーナーになるケースが増えるなど新たな展開が広まっている。

オンラインサロンの特徴として通常はオンライン上の仮想グループでコミュニケーションをとるが、イベント的にオフラインで集まる機会を設けているところも少なくない。それはオンラインとオフラインが融合した新しい形のコミュニティともいえるかもしれない。

コミュニティマネージャー

ブランドコミュニティにおけるコミュニティマネージャー

『コミュニティマネージャーの仕事』の著者 中山領によればコミュニティマネージャーとは「コミュニティづくりの立役者」である。

中山が専門とする企業が主体のオンラインコミュニティである「ブランドコミュニティ」においては、期待されるマーケティングゴールを達成するためにコミュニティを常にアクティブな状態に維持するキーマンがコミュニティマネージャーであるという。

コミュニティの運営方針の決定から投稿計画の立案、投稿案の製作手配、ファンへの対応、効果測定、今後の展開や実施に向けての進行などがコミュニティマネージャーの仕事である。

この場合のブランドコミュニティには2つの種類があると中山はいう。第一にブランドコミュニティは企業が取り組むTwitter公式アカウントやFacebookページに代表されるソーシャルメディアの公式アカウントを指す場合、第二に企業が運営する共通の興味関心をもったユーザーが集うコミュニティを指す場合がある。

後者は企業が運営するオンラインサロンと似た性質もしくは同じものである。中山は前者のブランドコミュニティマネージャーである [中山領, 2014]。

オンラインオフライン・企業個人を問わず用いられるコミュニティマネージャー

コミュニティマネージャーは企業が主体のオンライン上以外でも利用される。コミュニティマネージャーとしてWasei Salonなどいくつものコミュニティに携わる長田涼によれば、コミュニティマネージャーは「コミュニティを安全な場としてマネジメントする存在」であるという。

長田は企業が運営する共通の興味関心で自発的につながるブランドコミュニティだけでなく、個人や消費者が主体となって共通の興味関心でつながる自発的なオンラインコミュニティの運営まで含んでコミュニティマネージャーであるという [長田涼, 2018]。

株式会社ツクリエのWakasa Kaoriは、株式会社ツクリエにおけるコミュニティマネージャーの役割は「ハブのような存在で、メンバーさん同士のマッチングやパートナーとの連携など、メンバーさんにより近い存在でサポートする」ことだという。

株式会社ツクリエの場合はオフラインのランチ会やミートアップも企画するオフラインでのコミュニティマネージャーである [Wakasa, 2019]。コワーキングスペースの運営者をコミュニティマネージャーと呼ぶこともありその場合はWakasaの用法に当てはまる。

コミュニティマネージャーはオフラインorオンライン、企業or個人・消費者問わずすべての場面で用いられる言葉であり、それはコワーキングスペースの運営者を指すこともある非常に多義的な用語である。

コミュニティマーケティング

コミュニティマーケティングは、マーケティングがデジタルシフトする現在注目を集める概念である。HubSpotの向井拓真氏によればコミュニティマーケティングとは「コミュニティ「を」通じて売るマーケティング」である。注意すべきは「特定のコミュニティや自社で築いたコミュニティ「へ」売るマーケティング手法」ではないということ。

サブスクリプションサービスの勢いが増していることで、企業は継続的に使い続けてもらうことを考える必要が発生しコミュニティに目を付けたのである [向井拓真, 2019]。

博報堂コンサルティング代表取締役社長協働CEO/エグゼクティブクリエイティブディレクターの喜馬克治氏は様々なブランドが自ら主宰するコミュニティマーケティングが注目を集めている指摘している。

トヨタ自動車が主宰するスポーツカー86のファンコミュニティーが企業が主催するコミュニティマーケティングの好例であり、企業は主催するコミュニティおいて公平な視点から積極的に「コミュニティ・ガーディアン」の役目を果たすことが大切であるという[喜馬克治, 2019]。

2人の定義の対比からコミュニティマーケティングの定義はいまだ明確に定まっていないことがわかる

最後に-日本におけるコミュニティの未来-

10,000字以上を割いてコミュニティとは何か、日本におけるコミュニティの歴史をみてきた。コミュニティ・インフレーションともいえる状態にある今日を経て、今後コミュニティは人々に何をもたらしどう受容されていくのだろうか?

確実なことは何一つ言えないが、コミュニティという言葉はさらに広い意味で使われるようになるだろう。同時にコミュニティの道具化も進んでいくと思われる。Z. バウマンは著書『コミュニティ』の中で「コミュニティがもつあたたかい語幹」といったが、今後も人々はコミュニティの目には見えないあたたかさに魅かれ続けるだろう。

KAYAKURAではコミュニティに関する講座や勉強会の講師・WSのファシリテーション、コミュニティと関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンド・移住関連事業のサポート/コーディネート、執筆を行っております。お困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

参考資料

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上野千鶴子, 1987, 「選べる縁・選べない縁」栗田靖之編『現代日本文化における伝統と変容3 日本人の人間関係』ドメス出版, 226-243.

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.