研究者が選んだ「コミュニティ」をテーマにしたおすすめ本12選-レベル別・社会学書多め-

2020年の日本は「コミュニティ・インフレーション」と言っても過言ではないほどコミュニティに注目が集まっています。オンラインコミュニティ、地域コミュニティ、コミュニティマーケティングなど官民問わず用いられるコミュニティという言葉ですが、その系譜やこれまでの議論を押さえている人はどれほどいるでしょうか?

曖昧なまま使いがちだからこそ、ここで1度コミュニティについてしっかりと学んでみたい人におすすめの本を12冊レベル別に選びました。コミュニティ研究者である筆者の好みや興味関心で一部偏っていますが、読んで損はない本ばかりを紹介していますのでぜひ購入して読んでみてください!そして明日からのコミュニティとの関わりに生かしてみてください。

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コミュニティについて0から学びたい人のための4冊

「コミュニティについて興味が湧いてきたけど、どの本から手を付ければいいかわからない」そんなあなたにおすすめの4冊です。編集者、デザイン事務所社長、社会学者などさまざまな立場から「現代のコミュニティ」を研究しときには実践的な活動も行う5人の著者によって、コミュニティの捉え方に「違い」や「共通点」があるのでそこに注目して読んでみてください。

コミュニティを問いなおす|広井良典

初心者でも分かりやすくコミュニティについて学術的に解説している1冊。出版から10年以上経ちますが今でもコミュニティ研究でよく引用されています。地域社会・社会福祉・社会保障などを軸に話は展開していきますが、それ以外のコミュニティの在り方にも通底する視座がたくさん載っています。新品でも税込み1000円を切るので金額的にも手が出しやすい1冊。

つながる/つながらないの社会学|長田攻一, 田所承己

9人の社会学者がそれぞれの専門家から「コミュニティ」「つながり」について分析した1冊。地域社会やママ友、若者、被災者など取り上げる対象は様々。具体的な事例多めに「コミュニティに関わる中でよくつまづくポイント」「成功しているコミュニティの特徴」などを解説しているので、物理的地域としてのコミュニティに関心がある人も、人間関係としてのコミュニティに関心がある人も読んで損はない1冊です。

コミュニティデザイン|山崎亮

地域活性化手法として2010年代に入ってから注目され始めた「コミュニティデザイン」について学びたい人は、まずこの本を押さえましょう。コミュニティデザインを世の中に広めたstudio-L代表の山崎亮さんが著者で、自身が携わった具体的な地域の事例とコミュニティデザインを実践するうえでの注意点や大切なことを分かりやすい言葉で解説しています。

WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE|佐渡島庸平

『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』など数々のヒット作の編集を手掛けたコルク代表 佐渡島庸平さんによる本書。ビジネス・マーケティング・PRなどでコミュニティを活用したいと考えている人は必読の1冊です。また2010年代後半のコミュニティ事情について最もわかりやすくまとめた本の1冊だとも思うので「学術的な本はちょっと…」という方はこの本をまずは買って読んでみましょう!

コミュニティに携わっていて/参加していてもっと深く知りたい中級者向けの4冊

現在コミュニティに属していたり、コミュニティを運営していたり、コミュニティを管理したりとさまざまな形でコミュニティに携わっている人で「もっとコミュニティについて学びたい!」という人向けの4冊をピックアップしました。学術的な用語も多いですが、表面的なコミュニティ理解ではわからないコミュニティの姿について学べます。

コミュニティ・スタディーズ|吉原直樹

日本のコミュニティ研究の第一人者で東北大学名誉教授の吉原直樹さんによる本書は、地域社会学・都市社会学の長年にわたる調査研究をもとにまとめられた1冊。東日本大震災直後に発刊されて以降、災害とコミュニティ、社会的危機とコミュニティの関連について分かりやすくまとめられた本として広く読まれ続けています。

サードプレイス|レイ・オルデンバーグ

家庭でも学校/職場でもない第三の居場所を指す「サードプレイス」概念を世界に広めた本書には、地域社会というコミュニティを「とびきり居心地よい場所」によって再生するヒントがたくさん詰まっています。サードプレイスは物理的に存在しないオンライン上のコミュニティにも当てはまる概念なので、居心地が良いオンラインコミュニティを目指す人にもおすすめです。

コミュニティのちから|今村晴彦, 園田紫乃, 金子郁容

まちづくり・地域医療・社会福祉などが抱えるテーマをコミュニティのちからで解決した事例をもとに、理想的なコミュニティをつくるためのレシポを示す本書。コミュニティとセットで語られることが多い社会学概念「ソーシャルキャピタル」の可能性についても光を当てているので一石二鳥な1冊です。

現代コミュニティとは何か|船津衛, 浅川達人

現代コミュニティの様相について現実と変化の状況を具体的に解明し、これからの方向性について積極的な問題提起を行う新しいコミュニティ論の構築を目指した1冊。社会学におけるコミュニティ概念を広くそこそこ深く理解したい人におすすめのコミュニティ入門書です。

コミュニティに関する専門的な論文や本を執筆する上級者向けの4冊

コミュニティに関する専門的な知見を得たい方向けの4冊です。中級者向けも学術書が多めでしたが、ここで紹介する4冊は社会学・政治学などの専門用語がわからないと難しいかなと思います。ただコミュニティの包括的分析という点では時代を経ても色あせない名著揃いなので本格的にコミュニティを深堀したい方はぜひトライしてみてください。

コミュニティを再考する|伊豫谷登士翁, 齋藤純一, 吉原直樹

日本を代表するコミュニティ・公共性研究者3名が経済学・政治学・社会学の3側面から東日本大震災後のコミュニティを分析している1冊。新書サイズでおよそ200Pとボリュームはありませんが密度はすさまじく高く、東日本大震災後のコミュニティの状況とその語られ方について知りたい方は必読。最後に掲載されている筆者3人による対談もスリリングでおもしろいです。

コミュニティ|ジグムント・バウマン

メタファーを巧みに操り80歳を超えても著作を出し続け2017年に死去した社会学者ジグムント・バウマンによるコミュニティ研究本。21世紀にコミュニティを研究するのであれば必ず押さえておきたい1冊で、社会におけるさまざまな分断によってコミュニティはどのように位置づけなおさなければならないのか、コミュニティに何ができるのかを考察しています。学術本でありながら文庫本サイズなのも押しポイント。

定着者と部外者―コミュニティの社会学|ノルベルト・エリアス, ジョン・L.スコットソン

実際に存在する地域での研究の成果を物語風の文体でまとめた異色のコミュニティ研究書。作者のノルベルト・エリアスは言わずと知れたオリジナリティあふれる社会学者で、自身のユダヤ系ドイツ人というバックグランドからよそ者について長らく興味関心を持っていました。約300Pの読み応えある作品ですが、複数のコミュニティの絡み合い・関係性について深く知りたい方におすすめの1冊です。

コミュニティ グローバル化と社会理論の変容|ジェラード・デランティ

本書はコミュニティ概念を21世紀にアップデートすることを目的としており、社会学・政治学など複数の学問的知見からコミュニティを再解釈しています。都市コミュニティ、政治的コミュニティ、多文化主義、コスモポリタニズム、ヴァーチャルコミュニティなど扱う対象は様々です。政治学においてコミュニティを取り扱う人は必読の1冊といえるでしょう。

コミュニティについて取り扱ったおすすめの本は他にもたくさんある

今回紹介したコミュニティについて学ぶためにおすすめの本は一部に過ぎず、これ以外にも国内外でコミュニティを取り扱った本は多く出版されています。紹介した本の参考文献/引用文献をヒントに、ぜひ他のコミュニティに関する本も読んでみてください。KAYAKURAではコミュニティと間接的に関連する本も紹介していますので、ぜひ以下の記事も読んでみてください。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

Amazonプライムは1ヶ月無料で利用することができますので、非常に有益です。学生なら6ヶ月無料です。

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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。