コロナ後の地方創生で乗り越えるべき4つの課題

2014年から国策として進められてきた地方創生。これまでただひたすらに国も自治体も地域住民も結果を追い求め取り組みを進めてきましたが、コロナによって地方創生は一旦ストップとなりました。

しかしコロナは地方創生にとって1度立ち止まり、本来の目的や活動内容を見つめなおすいい機会にもなっています。地方創生によって達成したいゴールは一体何なのか、従来の取り組みはどの点がよくてどの点は改善が必要なのか。

都市のリスクが顕在化したことで地方に注目が集まっているいまこそ、アフターコロナの地方創生の在り方を考えてみましょう。コロナ後の地方を考察したい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

SDGsの視点からサスティナブルな地域の在り方を再検討する

アフターコロナの地方創生を考えるうえで大切なのは「ビフォーコロナを再検討すること」です。コロナによって変わったこと・変わらないこと両方ありますが、最も避けるべきは盲目的にビフォーコロナ回帰を目指さないことです。

ビフォーコロナを批判的に再検討しアフターコロナの地方創生を広い視点で検討するうえで、私たちにヒントを与えてくれるのがSDGsです。SDGsとは国連が2015年に定めた国際的目標で、持続可能な開発を世界中で進めるために2030年までに達成すべき目標を集めた指標です。SDGsは企業や国だけが達成を目指すべき目標ではなく、自治体や個人も目標達成のために行動することが求められます。

SDGsのSはSustainability (持続性)を表しています。ビフォーコロナの地方創生で最も欠落していたのはこの「持続性」の観点ではなかったでしょうか?短期的に結果を出すことを追いかけるあまり中長期的な戦略がたてられていなかった、そんな事例が多くあります。だからこそアフターコロナの地方創生で重要なのは「持続性」です。

経済・社会・環境3つの面すべてが持続的な取り組みでなければ、地方創生の結果は出せないでしょう。そして持続性が無ければ結局は人間らしい生活は置き去りにされ、短期的な目標達成のために人や資源が動員されることとなるのです。

ここで使えるのはSDGsの思考法バックキャスティングです。従来の地方創生は「目の前の課題をいかに解決するか」から議論を始めるフォアキャスティングでした。しかしこれでは課題解決のためなら何でもありになってしまいます。

そこで先に目指すべきゴールや達成すべき目標を設定し、逆算して今の課題を解決する方法を考えるバックキャスティングを採用することで、持続性のある地方創生が実現できるのです。

モノサシは1つではない-「量」より「質」へ-

これまで大半の移住促進施策や観光促進施策は指標として「人数」を用いてきました。しかしアフターコロナは多くの人に来てもらうことは難しいため、1人1人の質を高める方向へのシフトが求められます。量の減少はネガティブな印象が強いですが、果たして量から質への転換はネガティブなことばかりでしょうか。極端ですが2つの問いを投げかけてみます。

  1. 1回の旅行で1万円使う人2000人に訪れてもらうのと、1回の旅行で2000万円使う人1人に訪れてもらうことの差異とは?私たちはどちらを望むのか?
  2. 人口30万人で幸福度・生活満足度が20%の地域と、人口3000人で人々の幸福度・生活満足度が70%の地域、どちらが目指すべき地域像なのか?どちらのほうが人間らしく幸せな生活が送れているのか?

ビフォーコロナの移住促進や観光促進はどちらも前者=人数をモノサシとしていました。しかしコロナをキッカケに私たちは後者=質をモノサシとすることを求められています。人口減少時代において限られた人を自治体間で取り合う移住競争は、みんなが疲弊し過度な競争で消耗します。観光も同じで、オーバーツーリズムを筆頭に多くの人を受け入れることは、暮らす人々を疲弊させてしまいます。

SDGsと絡めると、人数をモノサシとした施策には持続性が無く、本質的に目指す目的を達成できません。移住であれば定住段階のサポートや満足度の高いマッチングの実現を、観光であれば1人あたり消費額の増加やキャパシティを超えない持続的な受け入れを展開していく必要があるでしょう。

ダイバーシティを当たり前とした地域設計を

社会学者のジョン・アーリはグローバリゼーションで人々のモビリティ(移動性)が高まるといいました。モビリティの高まりは地域に新しい人々が訪れるキッカケとなり、従来以上の多様性を地域にもたらします。

コロナによって一時的に人々の移動は制限されましたが、長い目で見れば移動の量はビフォーコロナと同水準かそれをはるかに超える水準となるでしょう。このような時代においては、人々の多様性を当たり前のものとして地域設計に組み込むことが大切です。

言い換えると、従来のモビリティの低い時代の地域の在り方からの転換が求められます。例えばこれまでは「暗黙のルール」として共有されていたルールの「見える化」は、多様性が高まる時代の共生のために有効な手段です。従来の価値観では「そんなの当たり前でしょ」と思うようなことも、丁寧に文字やイラストにしてみんなが見られるようにすることで分断は防げます。

これは地元住民と地方移住者の分断を防ぐだけでなく、日本人住民と外国人住民の分断を防ぐためにも重要です。言葉や文化の違いを超えて共生するための制度や環境を整備することが、アフターコロナの地方創生では求められます。

最後に-選択と集中が求められる中、何に投資すべきなのか

最後に人口減少社会によって問い直される課題をみていきます。1990年代~2000年初頭の構造改革以降、自治体の「勝ち組」と「負け組」の格差が広まってきています。それは人口が増え続ける大都市圏の「勝ち組」自治体と、人口が減り続ける「負け組」地方自治体の格差です。

多くの負け組地方自治体では、人口が減り収入も減ることで選択と集中が求められています。言い換えると各自治体は「何を大切にし、どこを目指すのか」の判断が迫られているということです。

以前の記事で取り上げた地方自治体のデジタル技術/ICTの活用促進はアフターコロナの地方創生で大切な視点です。コロナ禍では行政サービスのオンライン化が進められましたが、なかなか思うようにはいきませんでした。

しかし人口減少がより一層進む今後は、コロナの有無にかかわらず行政サービスのオンライン化は必要です。どこに「人的リソース」を割きどこを「デジタル化」するのか。この選択に正解は無く、各自治体が「何を大切にし、どこを目指すのか」によって行動は変わるでしょう。

空き家問題も同じです。空き屋は個人の所有物ですが、崩壊寸前な空き家のように公共の福祉に反するレベルになると公でも扱う対象となります。詳細は以下の空き家記事をご覧いただきたいですが、今後「その他」空き屋はさらに増え公の負担も増えることが予想されます。

ここで必要な選択と集中は、どこを「公的に」扱い、どこを「民間に」任せるかです。株式会社ADDressのように空き家を活用したビジネスは増えており、今後も増えていくことが予想されます。

人口減少時代に全てを公が担おうとするとパンクしてしまいます。アフターコロナの地方創生では公と民間のバランスよい連携と、効果的なデジタル技術/ICTの活用が地方の将来を決める鍵を握るのです。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。