空き家問題の課題・対策・誤解・解決策をわかりやすく解説

人口減少に伴い全国的に問題となっている空き家問題。近年では地方だけでなく都市圏でも空き家問題が顕在化しています。総務省の調査によれば平成30年時点で全国の総住宅数のうち13.6%が空き屋だと判明しています。これは過去最多であり、平成25年の調査時よりも空き屋率は高まっています。

一方、古民家の利活用や空き家のDIYで新たな拠点を生み出す動きも活発化しています。新築絶対主義の時代が終わりを告げようとし、空き家が増えたからこそ若者世代を中心に空き家の新たな可能性に光があたっています。

そもそも空き家の何が問題なのか、空き屋は個人の問題なのかそれだけではないのか、どのような活用方法があるのか。令和時代に知っておきたい空き家問題のリアルと展望をみていきましょう。(記事内では関連本も適宜紹介します。興味関心ある方はぜひ購入し読んでみてください。)

空き家問題の課題

空き家問題の実状と空き家問題が発生する理由をみていきましょう。平成30年の調査で全国の約1/7の住宅が空き屋になっていることがわかっています。この率は年々高まっており、2033年頃には空き家数は2,150万戸、全住宅のおよそ1/3が空き屋になると予測されているのです。人口予測は統計予測の中でも比較的はずれにくいため、このままいけば1/3が空き屋になることは必至です。

増え続ける空き屋ですが、なぜ空き屋は発生してしまうのでしょうか。1つ目の原因は高齢化社会問題、団塊の世代の相続が進むことで空き屋が急速に増加することが予想されます。2つ目の原因は空き屋の管理や活用に関する知識経験不足です。多くの人は住宅を建てたり住んだりしたことはあっても、空き屋を管理したり活用したりしたことはありません。

人口と社会状況の変化について空き家問題も絡めながらわかりやすく学びたい方はこちらのほんがおすすめです。

空き家問題でよくある2つの誤解

空き家問題で誤解されがちな2つのポイントをみてみましょう。1つ目は「人が住むから家が傷む」「建物維持のために空き家にしておいたほうがいい」という誤解です。定期的に換気をして電気やガス・水道を使うなどメンテナンスをしなければ、住宅は痛んでしまいます。気がつかないうちに水道管が傷み破裂していることも…

誰かが住んでいれば気がつく不具合も住んでいなければ気がつきません。大きな損傷を家に与えないためにも人が住むことが建物を維持することになるのです。

2つ目は「空き家は個人の問題で他の人に迷惑はかからない」という誤解です。日本では土地・住宅=資産信仰が強いので、自分の資産は自分だけの問題と思っている方も少なくなりません。しかしもしあなたの家が空き屋になり放置しておくと以下のような問題が発生する可能性が高まります。

  • 屋根が抜け河原が落ち道を歩く人に危害が加わる
  • 雨漏りなどで電気配線が水に濡れて漏電し火災が発生
  • 敷地内が雑草だらけになり中には動物が。不衛生で近所迷惑に。
  • 管理が行き届かず防火犯や空き巣に狙われやすい。(例:昭和50年~平成27年まで40年連続、京都市内の火災原因1位は放火)

あなた個人の問題だと思っている空き屋が、実は地域の社会問題になってしまいます。空き家の増加は上記の問題を発生させるほかに、地域全体の活力を低減させブランド価値を下げることにもなります。所有者にとっても家族にとっても地域にとっても、空き屋を放置してよいことはほとんどないのです。

特に問題なのは貸し出しも利用もされていない「その他」空き

空き屋と一口に言ってもその種類は大きく以下の4つにわけられます。

  • 売却用・・・販売中の空き家。不動産会社が管理
  • 賃貸用・・・入居者募集中の空き家。不動産会社が管理
  • 二次利用・・・普段使っていない別荘など。所有者が管理
  • その他・・・上記の3種類以外。所有者が管理

この中で特に問題になっているのが「その他」の空き屋です。これは売りに出ておらず貸し出されてもおらず、利用もされていない空き屋を指します。

「その他」空き屋は年々急速に増加しており、全国の空き屋全体の41.1%を占めるほどになっています。「その他」空き屋は他の3種類と比べて管理されない傾向が高く持ち主も不明になるケースが多くあります。空き家問題の鍵を握るのは「いかにその他の空き家を活用するか」だといっても過言ではないでしょう。

最後に-空き家問題の対策と解決策 長野県の事例から

空き屋問題をDIYやリノベーションによって解決している事例は近年多くあります。しかしメディアに登場するものの多くは「おしゃれで」「立派な古民家」を改装しているものであり、少しハードルが高い印象をもたらすものも少なくなりません。「その他」空き屋の大半の見た目はおしゃれでも立派でもないですが、「目的」と「ターゲット」に寄り添いその他空き屋を活用している事例も多くあります。

長野県池田町のコミュニティスペース「実家の茶の間」は地域のお年寄りを中心に集う居場所です。地方自治体では中心市街地が過疎化によって寂しくなり、1人暮らしのお年寄りは行く場所もなく引きこもりがちになるという問題があります。実家の茶の間代表の曽根原さんは「地域のお年寄りがふらっと集まれる”居場所”をつくりたい」という思いから、数年前にこの場所を始めました。

当初空き屋だった建物をできる限りそのまま活用し住宅が持っている”家に帰ってきた雰囲気”を生かしています。水回りは長野県の助成金を活用することで充実させました。土日にはみんなで食事をつくり安価で地域のお年寄りに食事の振る舞いなども行っています。

実家の茶の間の事例からみえてくるのは「空き家」と「使い手のニーズ」のマッチングの重要性です。空き家を活用したい人の多くはそれぞれが描く理想の空き屋像があります。それは一様ではなく古民家がいい人もいれば、安価に借りられる小さな住宅がいい人もいれば様々です。実家の茶の間がある長野県池田町では県内でも早くから空き家対策に取り組んできており、空き家マッチングサイト(空き家バンク制度)に積極的に情報を載せるなどしています。

空き家率が年々上昇しているというネガティブな現象は、裏を返すと多様な空き家が使い手を探しているともいえます。空き家を利活用したい個人や事業者、地方自治体、空き家の持ち主の3者が連携して新たな命を空き家に吹き込む仕組みの形成が、空き家問題解決の鍵となるでしょう。

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参考資料
・信州池田活性化プロジェクト「Maple Tree」, いけだいろ16号
平成30年度住宅土地統計調査
・2033年予測 『未来の年表』
・空き屋の問題列挙『空き家の手帖』

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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などの特典もあります。社会や地域の課題を冷静に正しく分析する力は、読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、気になる方はぜひお試しください。

この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。