新型コロナウイルスが招く大都市と地方の分断を乗り越えるために

依然収束は見えず拡大の途を歩み続ける新型コロナウイルスが社会に与えている影響は計り知れない。意外なカタチでのテレワーク的ワークスタイルの導入、4月に一斉入社する日本型新卒一括採用の弊害の露呈、年配層と若者の間の分断も見逃せない。

そんななか拡大しているのが地域と地域の分断である。国と国の移動制限・大都市と地方の移動制限は収束後も長期的に孤立主義への歩を進めさせる可能性もある。本記事では新型コロナウイルスが大都市と地方の間にどのような分断を生んでいるのか、分断を乗り越えるために私たちはどうするべきなのかを検討した。

大都市圏で多い新型コロナウイルス感染者数

新型コロナウイルスの拡大を防ぐために回避が求められる感染リスクの高い『密閉』『密集』『密接』の『3密』だが、大都市のように狭い土地に多くの人が暮らしている場所では避けることがなかなか難しい。しかし地方はもともと人が密集する社交場が少ないこと、他人と密閉された状態でいる移動手段や公共スペースが少ないことなどにより大都市と比べてウイルスが拡大しにくい環境がある。(病院や学校など必ずしも当てはまらない場所もある)

4月3日10時30分時点のデータを参照しても、都道府県別の感染者数は東京都684人、大阪府311人、千葉県190人、愛知県190人の順に多く大都市圏で発症者が多いことが分かる。

危険な「大都市在住者/大都市訪問者=新型コロナウイルス運び人」認定

「大都市圏で感染者数が多く地方は感染者数が少ない」という現在までの状況は大都市と地方の分断を少しずつ招き始めている。ユヴァル・ノア・ハラリ氏もいうように、多くの人が新型コロナウイルスの大流行をグローバル化のせいにしこの種の感染爆発が再び起こることを防ぐためには脱グローバル化し、地域間に壁を築き、移動を制限し孤立主義の道をとるべきだという。

国と国の間の移動を制限するのと同じように、感染拡大を防ぐために日本国内でも大都市圏と地方の間、もしくは都道府県の間の移動を制限することを求める声が大きくなっているように感じる。なぜなら多くの地方の人々は大都市圏で感染者数が増えている状況をうけて「大都市に住んでいる人/大都市を訪れた人=新型コロナウイルスを運んでくる人」と認定するからである。

大都市に住む人自身や地方と大都市を移動する人自身が「自分は新型コロナウイルスにかかっている可能性があるから移動することをやめよう」と考え、主体的に移動に制限をかけることはとても重要である。しかし自身は大都市に住んでいるわけでも移動しているわけでもない地方在住者が「大都市に住んでいる人は危険だから地方に来るな」というのは少々乱暴な意見かもしれない。

「わからない」ことが「コワさ」を生み「排除」「差別」へと向かう

誰がウイルスを持っているかわからないなかで心配になる気持ちは理解できる。人間は「わからない」ことが最も「コワい」と感じる。そして「コワさ」は差別や排除へとつながるのである。筆者は長野県在住だが長野県で新型コロナウイルス感染者の報道が出るたびに、SNS上では素性を暴こうと必死になり感染者の粗探しをする人々の姿が散見される。中には感染者が陽性反応が出る前から不調を感じ自主的に対策していたことを称賛するようなケースもあるが、報道をみて非国民/非地域民と言わんばかりに叩く人もいる。

大都市と地方の分断を促進させる彼らが見落としているのは「自分もかかっているかもしれない」という意識である。今日までの報道で一部の感染者は自身が感染していることに気がついていなかった、症状がほぼなかったことが明らかになっている。一切地方から大都市に移動していない、一切住んでいる地域から出ていないことを自信に「自分は絶対うつっていない」と思えるからこそ、彼らは感染者を批判できるのだ。

しかし実際のところ「自分は絶対にかかっていない!」と胸を張って言える人は果たしていま世界中にいるのだろうか。どれだけ対策をしてもかかってしまうことはある。そのときに蜂の巣をつついたように「感染したこと自体」を非難されたらどんな気持ちになるだろうか。最近の報道では夜に人が集まる場などがクラスターになりやすく感染源になりやすいといわれているが、いつ最寄りのスーパーマーケットが感染源になるかは誰にもわからない。

まとめ-危機を乗り越えるためには「信頼」と「地域を超えた団結」が必要-

新型コロナウイルスがいつ収束に向かうかは誰にもわからないが、コロナと共生する段階に社会が移行しても、今回の件をキッカケに芽生えた地域間の排除意識、特定の地域からの来訪を快く思わない心持は数年数十年単位で残り続けるだろう。

「新型コロナウイルスって最初に発生したの中国武漢だったよね。だから中国からの観光客はこの先も何持ってくるかわからないから受け入れない方がいいよ」というように国と国の間の排除意識が一部では残るだろう。同じように「新型コロナウイルスって東京で一気に拡散されたよね。落ち着き始めたけど東京からの観光客や移住者が来るのはちょっとこわいなぁ」「東京行きたいけど新型コロナウイルスにかかるかもしれないから、収束して1年以上経つけど行かない方がいいかなぁ」このような大都市と地方の間の排除意識・警戒も残り続けるだろう。

残り続ける地域間の排除意識は新たな差別へと向かう可能性もある。この長期化する危機を乗り越えるためには、私たちは信頼と地域を超えた団結がかかせない。新型コロナウイルスが新たな分断を生むのではなく連帯へのキッカケとなることを切に願う。

KAYAKURAでは地方移住・新しい時代のライフスタイルに関する講座や勉強会の講師・WSのファシリテーション、執筆、関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンドなど関連事業のサポート/コーディネートを行っております。お困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

参照

NHK: 特設サイト 新型コロナウイルス

TIME MAGAZIN: Yuval published In the Battle Against Coronavirus, Humanity Lacks Leadership

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.