地域活性化が失敗する原因を心理学の「目標勾配」という考え方で取り除く

いつの時代も「地域をもっと元気にしたい!」と思う気持ちを、地域の人は持っています。地域を元気にしたいという思いを行動にしたときに「地域活性化」という言葉が当てはめられますが、世界中で取り組まれる地域活性化への取り組みのうち成功例として取り上げられる事例はごくわずか。

2019年11月には、本来、内閣府や総務省が推進していくべき地域活性化に、財務省が力を入れ始めたことが注目を集めました。財務省は、財務省にしかできない地域活性化支援をという狙いでベンチャー発掘や支援に地方の職員を投入し始めました。逆にいうと、内閣府も総務省も地域活性化への答えは持っておらず、政府も地域で行動する人もどうすればいいのかわからないのが現状です。

本記事では地域活性化に取り組もうとする人、もしくは取り組み始めてすぐの人に向けて「地域活性化がどうすれば成功するのか」ではなく「こういうプロジェクトは失敗しがち」という視点から、具体的な失敗のパターンとその改善方法を説明していきます。大切なのは「目標」です。

ゴールが設定されていない終わりが見えない地域活性化は失敗する

地域活性化の共通したゴールは「地域をもっと元気にする」ことだと私は思います。しかし、「元気」「よりよく」「活性化する」といった言葉はとても曖昧です。ゴールが曖昧な状態でスタートした地域活性化の取り組みは、大半の場合、志半ばで仲間が離れていったり取り組みがマンネリ化したり補助金が終わったりした段階で終了します。

例を挙げて考えてみましょう。「○○町の魅力をアップする!」これはゴール設定として不適切です。なぜなら、

  • 「魅力」の定義が曖昧
  • 「アップする」の中身が曖昧

だからです。地域の魅力は永遠に高まり続けたほうがいいですし、自分が生きている間・プロジェクトが動いている間だけで広い意味での「魅力」を達成することは難しいと同時に、そもそもどこに向かっていけばいいのか分かりませんよね。このようなゴール設定は、ゴール設定とは呼ばず終わりが見えない地域活性化に陥っていきます。

心理学の「目標勾配」と用いて地域活性化を考える

そもそもゴールが曖昧な地域活性化の取り組みは、なぜ失敗するのでしょうか?心理学において「目標勾配」という用語があります。目標勾配とは人は目標に近づけば近づくほどやる気が出てくるという理論で、ポイントカードやスタンプカードで特典がもらえるラインに近づけば近づくほど意欲が高まる現象などを指します。

目標勾配が成立するために必要なのは「明確な目標」つまり「ゴール」「終わり」です。もし、あなたがスタンプカードをもらったとして店員さんに「何点集めたら特典がもらえるかは秘密です」といわれたらやる気が起きませんよね?

「10点集めたら特典がもらえる」という明確なゴールがあるから「よし、いま5点だから、もう半分頑張ろう!」となるはずです。

地域活性化になると、とたんに「何点集めたら特典がもらえるか秘密です」パターンが増えるのが実情です。しかも、先ほどの例よりたちが悪いのが店員さんである自分自身も目標が分かっていないので、誰も何点集めたら特典がもらえるのか分からないのです。では、このような失敗を防ぐためにどのようにゴールは設定すればいいのでしょうか?

ゴール設定は現状把握・具体性・小さな目標・目的の4つを意識しよう

まず初めに現状把握を正確に行いましょう。目標は「いま、0点で特典がもらえるのは10点だから、10点もらえるように10回お店に行こう」というかたちで設定されるものです。大切のは、目標は「10点集めること」ですが、目的は10点集めることではなく「特典をもらうこと」である点です。

地域活性化の取り組みでも、アンケート調査や統計、インタビュー調査から現状把握をまずは正確に行ったうえで「計測可能な目標」と「本当に達成したい目的」の2点を最初にハッキリさせましょう。このとき大切なのは「具体性」。「魅力アップ」といったふわっとした言葉ではなく、より具体的で誰がみても誤解なく伝わる目標を設定しましょう。

実際に活動していく中で大切なのは「小さなゴール」です。小さなゴールを作っていくことによって、目標勾配が働きモチベーションの維持や向上が図れます。これは、コンサルタントやコーチングでも取り上げられる考え方の一つで、地域活性化の取り組みを持続的かつ効果的なものにするために大事な考え方になります。

まとめ-その地域活性化の取り組みに目的と目標はあるか-

記事を通して偉そうに書いてきましたが、そんな私も様々なプロジェクトに関わる中で目的と目標の設定・共有が取り組みの中で最も難しいと日々、感じています。1人で行う活動ならまだしも、地域活性化のように多くのアクターを巻き込んだ取り組みでは、人によって考えていることややりたいことは違うのが当たり前。

逆にいえば、多様な意見を集約して正しい目的と目標の設定さえできれば、地域活性化の半分はできたも同然かもしれません。取り組む前や序盤では、まだまだ修正が聞くと思いますので、ぜひ今後の取り組みに活かしてみてください。

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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