いまキャンプが人気な理由とは-ゆるキャン△・ヒロシ・SNS・ファッション、そしてコロナ-

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新型コロナウイルスが最も大きな影響を与えた産業の1つである観光産業。日本全体での訪日客は9割減少、観光県である沖縄県では97%の企業が売り上げ9割減となっている。7月に始まったGo To トラベル キャンペーンもどれほどプラスな効果を与えているのかいまだ曖昧である。

厳しいコロナ禍の観光産業だが、成長しすそ野を広げている分野がある。それが「アウトドア/キャンプ」だ。数年前からキャンプ関連商品に代表されるアウトドア用品の市場は拡大傾向にあり、その勢いはコロナでもとどまるところをしらない。

矢野経済研究所の調査によれば、2016年に444,2億円だったアウトドア市場規模は2019年に5230億円になると予測された。もっとも構成比の高いライトアウトドア分野(キャンプ、ハイキング、野外フェス等)は前年比4.2%増の2862億円と予測されており、いかに市場全体が伸びているかがわかる。

本記事ではアウトドア市場の中でも特に伸びている「キャンプ」に着目し、なぜキャンプが市場規模を拡大してきたのか、なぜ近年キャンプがこれほど人気なのか、なぜコロナ禍にキャンプが人気なのか、コロナ禍にどのようなスタイルのキャンプが人気なのかなどをみていく。なお筆者はキャンパーではないため間違いなどあればご指摘願いたい。

キャンプブームを牽引するコンテンツ「ゆるキャン△」

「第二次キャンプブーム」「第三次キャンプブーム」と呼ばれる近年のキャンプブームをけん引するコンテンツがある、それが「ゆるキャン△」だ。ゆるキャン△は、山梨県周辺を舞台にキャンプ場での各種アクティビティや野外調理などといったアウトドア趣味の魅力と、それを無理のない範囲で楽しく満喫する女子高校生たちのゆるやかな日常を描く作品である。

2020年3月現在10巻まで発行されているが、累計発行部数は250万部を突破しアニメ化ドラマ化もされている。ゆるキャン△では実際のキャンプ場が多く取り上げられているため、聖地巡礼を兼ねてキャンプする観光客が後を絶たない。ゆるキャン△はいまや山梨県と近隣をフィールドとした広域のコンテンツツーリズムとなっているのである。

ゆるキャン△の大きな功績として、それまでのキャンプの固定概念を壊したことが挙げられる。従来「夏に、大勢で、わいわい楽しく」がキャンプの印象として強かったが、ゆるキャン△は「冬場のキャンプ」や「ソロキャン(1人でキャンプすること)」などの存在を世に広めた。これによってこれまで「キャンプなんて友達がたくさんいるリア充がするものでしょ」とキャンプに興味関心をいだかなかった層が、「キャンプ楽しそう!」と思うきっかけを生み出したのである。

ソロキャンプブームの第一人者 Youtubeチャンネル登録者数は約90万人 ヒロシさん

ゆるキャン△と共に昨今のソロキャンプブームを牽引する人がいる。それはお笑い芸人のヒロシさんだ。2010年代後半からソロキャンパーとして主にYoutube上での活動を開始。2020年8月現在、チャンネル登録者数は89.8万人おり国内で最も影響力のあるキャンパーの1人となっている。8月6日には初のキャンプ本『ヒロシのソロキャンプ〜自分でみつけるキャンプの流儀〜』を出版した。

ヒロシさんの淡々とキャンプに勤しむ動画はゆるキャン△と同じく、これまでキャンプに興味関心が無かった層や「自分はちょっとそういうの違うんで…」とキャンプを敬遠していた層にキャンプの魅力を伝えている。現在はヒロシさんのようにソロキャンプの様子を配信する人は多くおり、YouTube時代ならではのキャンプ文化の広まり方をしている。第二次キャンプブーム(第三次キャンプブーム)はSNSや動画配信サービスと密接に関係しているのである。

素材の進化・野外フェスブーム・SNSでの発信「アウトドア・ファッション」

キャンプを含めアウトドア市場が拡大している要因として「ファッション」があげられる。アウトドアウェアが日常着の定番となりつつあり、オフィス街でもアウトドアファッションに身を包んだ人を見る機会が増えている。一体、これはなぜなのだろうか。

新潟に本社を置くアウトドアブランドsnowpeakが日常着として使えるアウトドアウェアを販売し始めたのが2014年。この頃から野外フェスも一般人気を獲得しはじめ幅広い層が気軽にアウトドアファッションに手を伸ばすようになった。1度着てみるとその着やすさや使いやすさ、ファッション性の高さにみんなが気づきはじめアウトドアな場面以外でも着るようになっていった。

ウェアの素材が急速にハイテク化していることも見逃せない。ファッション業界全体で新素材ブームともいえる状況になっている今日、アウトドアウェアも年々進化している。はじめは見た目や着心地のみで選んでいた層も徐々に機能性を重視しはじめ、結果としておしゃれで着心地が良くて機能性も高いアウトドアウェアは広い人気を獲得してきている。

ウェアに限らずキャンプ用品などひっくるめて「ファッション」として捉えると、SNSとの関係性もみえてくる。おしゃれなウェアに身を包んだ写真を友達と一緒にSNSにあげたり、新しく買ったアウトドア用品をSNSで紹介したり、キャンプ場に着いてから帰るまでを動画に収めて配信したり。いまや「ウェアやアウトドア用品を選び買うところ」から実際にアウトドア・アクティビティを楽しんで「発信するまで」ひっくるめて「アウトドア・アクティビティ」になっているのである。

コロナ禍にキャンプが人気な理由と注目のキャンプスタイル

ここまでみてきたようにキャンプはコロナ禍に急に注目されたわけではなく、コロナ以前から着実にその市場規模を拡大しファンが増えていた。コロナ禍では感染拡大防止のため「3密」を避けることが求められるため、3密を避けながら自然を満喫できるキャンプに注目が集まり、従来のブームにさらにプラスしてコロナによってキャンプブームが加速しているのである。

例えばキャンプの中でも施設側が道具や食材などを用意し豪華なキャンプができる「グランピング」が、コロナ禍に人気を集めている。準備がいらないので初心者でも手軽に楽しめることが人気の秘訣で、施設側は初期投資がかかる一方で一般的なキャンプよりも客単価が高ため、ニーズと共有がうまくマッチしたカタチとなっている。

アウトドア熱はキャンピングカーにも波及している。レンタル会社「キャンピングカー株式会社」(東京都千代田区)の今月の売り上げは前年比120%に。4月は同15%まで下がったが、6月から国内客や日本在住の外国人の利用が増え始めたという。移動時に人と会うことなく家族や友人とだけ楽しめるキャンピングカーは、今後さらに需要が高まることが予想される。

ゆるキャン△やヒロシチャンネルで徐々に認知度が高まっていた「ソロキャン」もコロナ禍に人気を博している。人と会わずに楽しめること、大掛かりなグッズが必要ないため始めやすいこと、近くに自然があったり自宅に庭があればすぐ近くで楽しめることなどがソロキャンが人気な理由だ。

最後に-コロナ禍にキャンプを楽しむ際は安全と感染に注意しましょう, 詳しくはガイドラインを参照-

コロナ禍に加速するキャンプブーム。本記事ではなぜキャンプブームが起こっているのか、これまでの経緯をみてきた。ここでみてきたものは代表的な要因であるため、これ以外にもデジタルデトックス的側面や、グループの場合つながりの再構築といった理由もある。

最後にコロナ禍のキャンプをより楽しいものにする為に、いくつか楽しむ際に注意したほうがいい点を確認していく。

本記事で取り上げたソロキャンの場合は複数人の場合と異なり音があまりたたないため、動物が人間に気づかずに近づいてきたり襲われたりする可能性が高いともいえる。静かな自然を楽しみつつ、しっかりと鈴やラジオを持参して動物に自分の存在をアピールすることが大切だ。

キャンプ場の指定、キャンプクラブの育成、キャンプ講習会の開催、キャンプ指導者の育成、キャンプ情報の提供、関連諸団体との交流、関連業界への助言、などの活動をとおして、日本における「安全で楽しいキャンプの普及」に努めている日本オートキャンプ協会は、キャンプを楽しむ利用者向けに次のような指針も示している。しっかりと確認してからキャンプを楽しもう。

  • 県境をまたぐ移動は、各キャンプ上の自治体の指示に従う
  • 食材や消耗品の用意は自宅周辺で済ませる
  • 出発時に検温などの健康チェックを徹底する
  • キャンプ場に向かう途中、サービスエリアや観光施設など3密になりやすい場所の利用を避ける
  • キャンプ場では、運営者の指示に従って感染防止に積極的に協力する
  • 管理棟、炊事場、トイレなど、屋内施設での3密状態を避ける
  • マスクを持参し、他人との距離が十分取れない場合のみ着用する
  • マスク着用時の熱中症リスクに注意する
  • 消毒用アルコールの引火リスクに細心の注意を払い、高温になる車内に保管しない

参考資料
吉田大, 「ファッションのアウトドア化を推し進める「新素材開発ブーム」 スノーピークで聞いた背景」.
ヒロシちゃんねる.
株式会社矢野経済研究所, 成長を続ける国内アウトドア市場、2018年は前年比107.5%の5,007億7,000万円.
時事ドットコムニュース, 「「グランピング」2カ月待ち キャンプカー利用者増加―コロナでアウトドア熱高まる」.
日本オートキャンプ協会, 「オートキャンプ場における新型コロナウイルス対応ガイドライン」.
沖縄タイムス, 「97%が「売り上げ9割減」 県旅行業協会調べ 連絡が取れなくなった企業が20社も」.

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.