「持続可能なまちづくり」という発想の落とし穴-言葉の定義から考える-

持続可能性 まちづくり 千曲市ワーケーショントレイン

昨今「まちづくりには持続可能性が必要だ」という議論を聞く機会が増えています。理由として大きいのは、SDGsの目標11として「住み続けられるまちづくりを」が掲げられたからです。

SDGsは日本語にすると「持続可能な開発目標」となります。SDGsについて詳しくは下の記事をご覧いただければと思いますが、SDGsが掲げるまちづくりとは、イコールで「持続可能なまちづくりを実践しよう」という話になるわけです。

→【5分でわかる】 SDGs(エスディージーズ)とは?わかりやすく簡単に解説します!

ここで多くの人を悩ませるのが「じゃあ一体、どうすれば持続可能な町づくりができるのか?」「持続可能なまちづくりって何?」という点です。

今回は、さまざまな地域でまちづくりの実践に関わりながら、まちづくりとSDGs研究する筆者が考える「持続可能なまちづくりへの疑問の回答」を提示したいと思います。

関連記事:【連載】SDGs×地方創生を問う

持続可能性とは何か1-将来世代も現役世代も満足する状態-

はじめに「持続可能とは何か?」という問いの答えを定義してみましょう。SDGsにおいて国連は持続可能な開発を次のように定義しています。

「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」

この定義から、持続可能性のひとつめの条件がわかります。それは「将来世代と現役世代、両方のことを考える」ということです。現役世代だけが得をして将来世代につけをまわすような取り組みは、持続可能とはいえません。

一方で現役世代が満足できない生活という大きな負担を担うことで、将来世代の欲求を満たすのも持続可能とはいえないのです。人間誰しも、苦痛な状態は継続できません。継続するためには、苦痛よりも楽しさや満足感が必要なのです。

持続可能性とは何か2-経済、環境、社会、三方良し-

SDGsにおいて国連は、さらに細かく持続可能性を成り立たせる土台を定義しています。国連は、持続可能な開発を達成するために、次のようにいっています。

「経済成長、社会的包摂、環境保全を個人と社会の福祉のために必要な要因としてその調和を図ることが不可欠」

この文章から「経済」「社会」「環境」の三方良しのバランスが取れた状態が持続可能性を成り立たせる必要条件だとわかります。より深く理解するために、具体例をみてみましょう。

森林破壊を食い止めるために、莫大な税金を使って対象地域に住む人々を強制移住させる事業があるとします。これは、環境を守るために、人々の居住権を奪いかつ経済負担が大きなことをしているため、三方良しとなっていません。つまり持続可能な状態とはいえません。他の例もみてみましょう。

自治体の人口を増やすために、田んぼを潰して大きな新興住宅地をつくるとします。これは人口が増えるという点で地域の持続可能性を高めているようにみえますが、将来的に空き家が大幅に増加するリスクや、田んぼを潰すという環境破壊を行っている点で持続可能とはいえません。今ある空き家を潰してその場所に新築を建てたり、いまある空き家を利活用するような取り組みのほうが持続可能でしょう。

以上のことから、持続可能性を成り立たせる条件は、次の2点であることがわかります。

  1. 将来世代も現役世代も満足するかたち
  2. 社会、経済、環境の三方良し

まちづくりは、持続可能であることが前提

ここまでみてきた持続可能性の定義を踏まえ、以降はまちづくり×持続可能性についてみていきます。

ここで本記事の回答を書きます。

それは、「まちづくりは、持続可能であることが前提である」ということです。つまり、持続可能でないまちづくりは、そもそもまちづくりではないということです。

まちづくりにはさまざまな定義があります。詳しくは下の記事をご覧いただきたいですが、ここでは代表的な定義として佐藤と石原の定義を紹介します。

→【5分でわかる】まちづくりとは?定義や歴史・用法をわかりやすく解説

佐藤はまちづくりを次のように定義しています。

「まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、生活の質の向上を実現するための一連の持続的な活動」

佐藤のまちづくりの定義の中には「持続的な活動」という、そのものずばりの言葉が登場します。また「地域社会に存在する資源を基礎として」「多様な主体が連携・協力して」という部分は、地域資源の活用とパートナーシップの活用ということで、SDGsの理念と合致します(SDGsを持ち出すまでもなく、それらが持続可能性につながるとわかります)。

まちづくりの三要素「地域環境」「地域経済」「地域社会」

つづいて石原によるまちづくりの定義、まちづくりの三要素をみていきましょう。石原はまちづくりにおいて重要な3つの要素を次のように示しています。

  1. 空間形成など:「地域環境」
  2. 商店街活性化や産業振興:「地域経済」
  3. 地域の人々の関係構築:「地域社会」

ここで示された「地域環境」「地域経済」「地域社会」は、国連が掲げる持続可能性の3要素「環境」「経済」「社会」と完全に一致します。ちなみに石原がこの定義を示したのは2004年なので、SDGsのSの字も出ていない時代です。

以上、佐藤と石原によるまちづくりの定義からわかることは「そもそも、まちづくりは持続可能なものでなければならない」ということです。裏を返せば、持続可能性が無いまちづくりは、まちづくりではないのです。

最後に-持続可能なまちづくりではなく、持続可能な地域を目指すまちづくりを-

持続可能性 まちづくり 千曲市ワーケーショントレイン

この記事を通して読んでくださった皆さんは、「持続可能なまちづくり」という言葉自体が間違っていることに気づかれたかと思います。「まちづくり」という言葉には、すでに「持続可能性」が含まれているのです。

最後に皆さんに伝えたいのは、まちづくりは手段であるということです。では、なんのための手段なのか?

まちづくりは、「持続可能な地域」を目指すための手段です。いまその地域で暮らす現役世代も、今後その地域で暮らす将来世代も、環境・社会・経済三方良しの状態で満足いく暮らしができる地域=持続可能な地域をつくるための手段が、「まちづくり」なのです。

ここで間違えてはいけないのは、「まちづくりは、そもそも持続可能なものだから方法を変えてはいけないんだ」ということではないという点です。持続可能とは、同じ方法を取り続けることではありません。

まちづくりの手段は、時代と社会状況に合わせて柔軟に変化させた方が良いこともあります。関わる人々には、常に最善のまちづくりの手段を考え実践することが求められます。最善であれば、それが以前のものと異なる手段となっても問題はないでしょう。大切なのは、持続可能な地域を目指すことです。

以上、本記事では持続可能性とまちづくりについて解説してきました。地域の持続可能性や、持続可能な手段についてもっと深く具体例を交えて知りたい方は、ぜひ下の記事もあわせてご覧ください。

→地方創生におけるイノベーションとは何か-地域資源を活かしたまちづくり-

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.