【連載】SDGs×地方創生を問う-第1回 SDGsと地方創生の共通目標とは-

KAYAKURAメールマガジン登録随時受付中

KAYAKURAでは、読者の皆さまのお役に立つ地域・社会・観光に関する最新情報・関連情報をメールマガジンでお知らせしています。2週間に1度送信される無料のメールマガジンでは、メールマガジンでしか読めないコンテンツやおすすめ記事の紹介・イベントの紹介などを掲載しています。

メールマガジンの配信を希望される方は、以下のページからご登録ください。

メールマガジン登録ページはこちら

2030年までの達成に向けて国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。国や企業、個人にゴール達成に向けたアクションが求められるのと同じく、SDGsでは地域/自治体が達成に向けて取り組みを行うことが求められている。

日本政府は地方創生の流れのなかで、自治体がSDGsに積極的に取り組むことを推進している。国連が定めたSDGsと日本政府が行う地方創生。一見すると別物にみえるが、実はSDGsと地方創生は密接に関係していると内閣府地方創生推進事務局 遠藤氏やその他政府関係者は語る。

本連載では、全5回を通して「SDGs×地方創生」の基礎的な考え方、可能性、課題、実際に行われる取り組みなどを取り上げていく。あらかじめ筆者の立ち位置を明確にしておくと、筆者はSDGs推進論者でも、SDGs否定論者でもない。SDGsのよいところは積極的に地域に生かし、SDGsがかかえる問題点は早急に改めていくべきという立場である。

第1回の今回は、「そもそもSDGsと地方創生はどう関係するのか」と題し、SDGsと地方創生で共通して掲げる2つのポイントをみていく。1つ目は「持続可能な地域の形成」2つ目は「パートナーシップの形成」である。最後には、地方創生がかかえる課題をSDGsのアプローチが補う可能性についても指摘する。

「そもそもSDGsってなに?」という方は、こちらの記事もあわせてご覧いただきたい。

SDGs×地方創生が目指すのは「人口減少社会の課題解決」

政府が2019年に地方自治体を対象に行った調査(「SDGsに関する全国アンケート調査」)では、SDGsに取り組む自治体の割合は13%だった。政府は2024年度末にこの数字を60%に引き上げ、持続可能なまちづくりを推進しようとしている。

ではなぜ政府は自治体にSDGs×地方創生の取り組みを求めるのか。一番の理由は人口減少社会において、地域コミュニティの衰退や地域経済の縮小などの課題を解決するためである。

人口減少社会の到来により浮上するさまざまな課題を解決するためには、地域内のアクターがバラバラに動いていたり、目標が定まっていない状態ではいけない。地方創生とSDGs、日本の自治体にとって両者に共通するのは「地域課題を解決し持続可能な地域をつくる」という理念である。

SDGsと地方創生の共通目標Ⅰ:持続可能な地域の形成

地方創生とSDGsの共通するポイントとして主に2つが挙げられる。1つ目は「持続可能な地域の形成」である。現在の日本では人口、経済、文化の東京一極集中、地方の学校統廃合、公共交通の廃線、第一産業の衰退、介護医療問題など課題が山積している。

地方創生はこうした課題を解決し「国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことのできる地域社会の形成」を目指す政策である。これは言い換えれば「持続可能な地域の形成」である。

SDGsは日本語にすると「持続可能な開発目標」である。SDGsは17の目標と169のターゲットを達成することで「持続可能な世界を実現し、地球上の誰一人として取り残さない」ことを目指す。これも言い換えれば「持続可能な地域の形成」である。

地方創生が日本の地方にフォーカスし、SDGsが地球全体にフォーカスしているという違いはあれど、目指すところは同じである。それは「将来世代を含むそこに住む人々が、いつまでも暮らしていける地域であり続けること」なのである。

SDGsと地方創生の共通目標Ⅱ:パートナーシップの形成

地方創生とSDGsの共通するポイント、2つ目は「パートナーシップの形成」である。

2014年からはじまった地方創生だが、官民が連携し移住者の増加や観光客増などで人口減少に伴う課題を乗り越える自治体も少数ある一方、多くの自治体は状況を改善で来ていない。東京一極集中にも一向に歯止めはかかっておらず、第1期地方創生は政策としては失敗しているといわれても仕方のない状況にある。

筧氏は、このような状況を生んでいる要因の一つが地域内に多くの分断が存在することだと指摘する。縦割り組織の分断、現在と未来の分断、地域間の分断、世代の分断、ジェンダーの分断などなど。

本来、まちづくりとは住民も行政も企業も関係なく、その地域に住む人が自力でみんなでやることである。しかし現在は自治体も住民も自分たちの役割を限定し、相手の責任にし、消極的な姿勢が多くみられる。

このような状況では「将来世代を含むそこに住む人々が、いつまでも暮らしていける地域であり続けること」は達成できない。

地方創生はさまざまなアクターが連携して地域課題に取り組むこと=パートナーシップを形成して地域課題に取り組むことを目指してはきたが、残念ながら成功していない。しかし目指す方向性自体は間違っていないといえる。

SDGsは上記のような地方創生が目指すパートナーシップを形成して地域課題に取り組むことそのものずばりを、目標として掲げている。目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、SDGsの全目標に通底する姿勢を示したものであり、多数の分断を超えることを推奨する。

地方創生が目指すパートナーシップ形成による地域課題の解決は、SDGsのアプローチを用いることでよりスムーズに行える可能性がある。

住民、事業者、農家、行政、NPO、自治会、商工会、農協、学校などの個別の立場や組織を超えること。産業・環境・教育・医療・福祉・防災・まちづくりなどの領域を超えること。それが持続可能な地域の未来を実現するための活動であり、それが理想的なSDGsに基づく地方創生の活動なのである。

SDGsは地方創生の「拡大都市・人口主義」を乗り越える視座

SDGs×地方創生連載第1回の今回は「SDGsと地方創生の共通目標とは」と題し、両方に共通する目標をみてきた。地方創生が単体では無しえなかった部分をSDGsが補強する形で人口減少社会の課題を解決する、そんな未来が描ける可能性がSDGs×地方創生にはある。

最後に1点、地方創生がかかえる課題をSDGsが乗り越える可能性について触れたい。地方創生は「2060年に約8,600万人まで減少する人口を約1億人までかさ上げする」ことを政策目標にしている。つまり国は「拡大都市・人口増絶対主義」の路線を地方創生ではとっている。

しかし現実的に考えてこれは難しい目標であり、マイナス効果でさえある。なぜなら地方創生のこの目標に従って各自治体は「自治体間競争」=住民の奪い合いゲームの様相を呈し始めているからである。人口の総和が減少する中で、自治体それぞれが人口を増やそうと取り組むことは「持続可能」ではない。

これに対しSDGsは人口を指標にはしていない。目標11「住み続けられるまちづくりを」をSDGsは掲げているが、人口減少社会において住み続けられるまちとは「人口が多いまち」だろうか?SDGsの理念に従えば、必ずしもそうとは言えないだろう。

「人口減少を克服し、地域経済を活性化する」地方創生にSDGsの視点を組み合わせれば、「人口が減少することを前提に、地域経済が活性化する方法を考える」という選択肢も生まれる。また「人口減少社会において、地域経済はほどほどでも住民は幸せな地域を目指す」という選択肢も生まれるだろう。

このようにSDGsには地方創生が暗黙のうちに是とする「人口増絶対主義」の枠組みを1度はずし、オルタナティブな発想を私たちに授ける。SDGsが具体的な方法を示しているわけではないが、自治体間競争から抜け出すためのヒントはあるだろう。

次回第2回は「SDGs×地方創生がかかえる課題」と題し、SDGs×地方創生が推進されるなかで起こってきている問題を取り上げていく。

参考文献
・筧裕介, 2019, 『持続可能な地域のつくり方』英知出版.
・月刊広報会議, 2020, 『地域×SDGs』宣伝会議.
・高木超, 2020, 『まちの未来を描く!自治体のSDGs』学陽書房.
・田中治彦他, 2019, 『SDGsとまちづくり』学文社.
・山口幹幸他, 2020, 『SDGsを実現するまちづくり』プログレス.

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.