【連載番外編】SDGs×企業×地域活性化-具体的な事例・注目度・課題・メリットなどよくある5つの質問に答えます-

KAYAKURAでは2020年12月現在、全5回を通して「SDGs×地方創生」の基礎的な考え方、可能性、課題、実際に行われる取り組みなどを取り上げる連載「SDGs×地方創生を問う」を公開しています。

本記事は連載番外編として、記事を公開する中で寄せられた質問に対して事例やデータと共に答えます。特にSDGs×企業に焦点を当て、企業がSDGs×地方創生に取り組む事例や、企業の現状を解説していきます。

質問1 企業や民間でSDGs×地域活性化は注目されていますか?

はい、注目されています。内閣府地方創生推進事務局が2020年に発表した「令和元年度上場企業及び機関投資家等における地方創生SDGsに関する調査」では次のような調査結果が公表されています(調査対象は上場企業3,645社と機関投資家等254社)。

  • 地方創生SDGsに既に取組んでいる企業が回答の約4割を占め、検討中を合わせると6割を超える。
  • 回答企業の7割近くが、地方創生SDGsへの取組は現在の収益事業の一部と位置付けている。
  • ステークホルダーとの連携を重要と考える企業は多く、重視する連携先は市区町村が約6割と最も多く、次いで都道府県が約5割であった。

企業や民間にとってSDGs×地方創生・地域活性化に取り組むことのメリットは質問3をご覧ください。

質問2 具体的に企業や民間のSDGs×地域活性化にはどのような取り組みがありますか?またその取り組みはどんな地域課題解決につながりますか?

滋賀銀行の取り組み-SDGsへの貢献度が高いビジネスに投融資-

滋賀銀行の取り組みが挙げられます。地方の人口が減少する中で地方銀行は融資先の獲得が厳しくなっています。SDGsへの貢献度が高いと考えられる新しいビジネスに投融資を行い、その事業が育てばのちに融資額も増えるはずです。

滋賀銀行は2017年11月に「しがぎんSDGs宣言」を表明。地方銀行としてはじめてSDGsに貢献する新規事業に対する金利を優遇した融資商品を取り扱い、社会的課題解決を行うビジネスをサポートしています。

これまでに水質浄化技術を活用してトラフグやヒラメの陸上養殖を新規事業として立ち上げたアクアステージ社に融資をし、将来性や地域活性化を評価し六次産業化ファンドを通じた出資もしています。

有志と出資を受けたアクアステージ社の取り組みは、環境負荷の軽減、水質汚染軽減、食料供給実現、地域特産品の創出、雇用増を実現しています。

例えば上記のような地方創生×環境保護の事例に出資することで、地域金融機関の役割をアピールし、SDGsに積極的というブランディングにもなり、将来的な収益増にもつながっています。

IKEUCHI ORGANICの事例

IKEUCHI ORGANICは愛媛県今治市にあるタオルメーカーです。「最大限の安全と最小限の環境負荷」を掲げ、生産、販売、PR、経営、組織などあらゆる面で持続可能性を追求している。

タオルの原料となるコットンを100%オーガニックにしたり、染色工場に世界最高水準排水浄化装置を導入したり、消費電力を100%風力で賄ったり、オーガニックコットンはフェアトレードにこだわったりと追及に余念がない。

商品のタオルは長持ちにこだわりメンテナンスサービスも提供している。また同社はオウンドメディア「イケウチな人たち」で積極的に理念に基づく行動や消費者の声を発信している。

環境配慮に力を入れるようになったのは2003年に大口取引先が倒産し民事再生法を適用したから。企業の持続可能性を高め生き残るために戦略的に「持続可能性」「環境配慮」を軸にした。

これらの取り組みが実を結び、企業理念に共感し消費者=ファンが増えた。EGS投資家からの投資も呼び込めた。売上高も増え事業再生を実現できた。さらに今治市「イマバリ」のブランドイメージ向上にもつながった。環境配慮にこだわったことで企業も地域も恩恵を受けた好事例である。

質問3 企業や民間がSDGsに乗り出すことでビジネスチャンスはありますか?

質問1で取り上げた内閣府地方創生推進事務局の調査によれば、企業は地方創生SDGsに取組むうえでのメリットを次のように考えていることが明らかになっています。

  • 企業の評価が高まることによる既存事業の拡大:75.7%
  • 新たなイノベーションの創出など、新規事業の創出:55.1%
  • 就活生など、人材獲得への好影響:54.3%

企業や民間はSDGsに乗り出すことで既存事業の拡大や新規事業の創出に結びつくと考えています。理由は様々ですが国際的に共有されるSDGsは世界基準となるため、海外に進出する企業にとってはSDGsに積極的なことは取引相手に選択してもらえる可能性を高めるのです。

就活生など人材獲得への好影響も半数以上の企業が期待しており、SDGs世代ともいえる若い世代にはブランディングとして効果的だと企業が考えていることがわかります。地方の企業が積極的にSDGsを打ち出せば、若者の流出を防ぎ地元で就職してもらうことにもつながります。

一方で一部の研究者からは「経済利益と環境保護の両取りは難しい」との指摘もされています。SDGsと経済経営の両立の課題について知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

質問4 地方創生SDGs・SDGs未来都市・地方創生SDGs官民連携プラットフォームってなんですか?

持続可能なまちづくりや地域活性化のために、新しい時代の流れを力にするという考え方に基づき、SDGsを原動力とした地方創生を推進することを地方創生SDGsと呼びます。

SDGs未来都市とは、内閣府が、SDGs達成に取り組む都市を選定する制度です。 持続的な経済社会の推進を図るために優れた取り組みを世界中に発信することを目的に、 2018年から2020年に各都市、最大30都市を選定してきました。

地方創生SDGs官民連携プラットフォームとは、SDGsの国内実施を促進しより一層の地方創生につなげることを目的に、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深める官民連携のプラットフォームとして内閣府により設置されたものです。

質問5 地方創生にSDGsを取り入れることのメリットはなんですか?

大きく3つのメリットがあります。1つ目は地方創生の人口第一主義的な側面を是正し、人口減少社会を前提とした持続可能なまちづくりを考える自治体が増える可能性があること。

2つ目は地域内で個別に地域のために活動するアクター間のパートナーシップ形成が進む可能性があること。SDGs目標17ではパートナーシップが掲げられているため、地域内の分断を乗り越えようと動く地域が増えることにつながる。

3つ目は地方創生を進める中で起こっていたけどこれまで可視化されなかったトレードオフの関係に意識が向くこと。

例えば持続可能なエネルギー発電を設計するのに自然破壊するのは本当に良いのか、自然破壊を最小限にとどめつつ持続可能なエネルギー発電をする方法は無いか、といった考え方はSDGsのインターリンゲージ(個々の課題と目標がつながっているという考え方)を導入することで現場の人たちが意識しやすくなります。

質問5については、こちらの記事で詳しく書いています。

最後に-SDGs×企業×地域活性化 課題は認知度と分析評価-

地方創生SDGsについて聞いた内閣府の調査によれば、企業がかかえる地方創生SDGs推進の課題は「社内外の認知度が高まっていない:57.4%」「事業との関連性および社会的影響に関する分析評価がわからない:51.6%」が主なものであった。

どちらも地方創生SDGsに限らない、世界的なSDGs目標達成に向けた課題ではあるが2つ目に関しては日本独自の解決案が提示されている。

自治体SDGs推進評価・調査検討会がオンライン上で公開している「地方創生SDGsローカル指標リスト」には、SDGs17の目標を地方創生に引き付けたカタチでゴールや指標が提案されている。分析評価に際してはこういったものも使えるだろう。

本記事は連載「SDGs×地方創生」の番外編だが、本編も以下のように公開しているので興味ある方はぜひご覧いただきたい。

KAYAKURAではSDGsに関する講座や勉強会の講師(オンライン可)・WSのファシリテーション、SDGsと関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンド・移住関連事業のサポート/コーディネート、執筆、調査を行っております。まずはお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。講師のプロフィールはこちらをご覧ください。

参考資料
内閣府地方創生推進事務局, 2020, 「令和元年度上場企業及び機関投資家等における地方創生SDGsに関する調査 報告書」.
・バウンド, 2019, 『60分でわかる!SDGs超入門』技術評論社.

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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