【連載】SDGs×地方創生を問う-第3回 自治体は具体的にどの課題に取り組むべきなのか-

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2030年までの達成に向けて国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。国や企業、個人にゴール達成に向けたアクションが求められるのと同じく、SDGsでは地域/自治体が達成に向けて取り組みを行うことが求められている。

日本政府は地方創生の流れのなかで、自治体がSDGsに積極的に取り組むことを推進している。国連が定めたSDGsと日本政府が行う地方創生。一見すると別物にみえるが、実はSDGsと地方創生は密接に関係していると内閣府地方創生推進事務局 遠藤氏やその他政府関係者は語る。

本連載では、全5回を通して「SDGs×地方創生」の基礎的な考え方、可能性、課題、実際に行われる取り組みなどを取り上げていく。あらかじめ筆者の立ち位置を明確にしておくと、筆者はSDGs推進論者でも、SDGs否定論者でもない。SDGsのよいところは積極的に地域に生かし、SDGsがかかえる問題点は早急に改めていくべきという立場である。

第3回の今回は、「自治体が取り組むべき課題とSDGsはどうリンクしているのか」をテーマとし、SDGs17の目標がそれぞれどんな地域課題とリンクするのかをみていく。地方創生の流れの中で解決すべき地域課題をSDGsのアプローチで捉える参考になれば幸いである。

本記事では17の目標それぞれに対応する課題をリスト化しているが、詳細な解説は全てには付していない。詳細な解説を付けていないものはリストを見て取り組むべきことがわかりやすいと考えられるものであり、リストだけではわかりにくいもの・地方創生に特に密接に関わるものに重点的に説明を付している

なお記事の最後で触れるが、ここで挙げた事例は全て根底では繋がっている。これをSDGsではインターリンゲージというが、読者の皆さんもぜひ独立した課題と捉えずにここの課題と目標は、他の課題や目標とつながっていることを強く意識してほしい。

「そもそもSDGsってなに?」という方は、こちらの記事もあわせてご覧いただきたい。

目標1 貧困をなくそう

  • 子どもの貧困
  • 生活保護
  • ワーキングプア

国内で発生する貧困の中でも子どもの貧困は可視化されづらい。厚生労働省の調査によれば2015年時点で13.9%の子どもが貧困状態にある。大人と違い子どもは自身の貧困状況に気付きにくい。独自調査や子ども食堂の支援などの取り組みが求められる。

目標2 飢餓をゼロに

  • 食料自給率
  • 農業

目標3 すべての人に健康と福祉を

  • 交通事故の死亡者数
  • 超高齢化社会
  • 健康寿命
  • 社会保障費
  • 介護人材不足
  • 認知症
  • 生活習慣病
  • 医師・看護師不足
  • 精神疾患
  • 自殺
  • 孤独死

目標3は「健康」と「福祉」というテーマが掲げられているため、自治体の取り組みで関連するものも多岐にわたる。例えばターゲット3.6では「2020年までに世界の道路交通事故による死傷者を半減させる」が設定されている。目標9の技術革新などとも絡めながら自治体は課題解決に取り組むことが求められる。

目標4 質の高い教育をみんなに

  • 不登校
  • いじめ
  • 発達障害
  • 地域間格差

現代の日本においても様々な教育格差は存在する。学校に行くことを前提とした学びの体制による不登校児童の学習の遅れ、都市と地方での学習機会格差など。

国内の小中学校での不登校児童・生徒数は年々増加しているため、「学校に行かなければならない」という価値観と体制を転換し、特に地方では生徒の教育に関する選択肢の増加を目指す必要がある。

詳細はこちらをご覧いただきたい

目標5 ジェンダー平等を実現しよう

  • 女性リーダー
  • 政治への三角
  • 仕事と子育ての両立
  • 男性の家事・育児
  • 未婚化

日本は他の先進諸国と比較して自治体や議会の意思決定に女性が関与する機会が著しく低いことが指摘されています。例えば全国1741の市町村議会のうち311議会は女性議員がいません。目標5は日本が最も尽力すべき目標の1つであると断言できます。

目標6 安全な水とトイレを世界中に

  • 水不足
  • 水道管などの老朽化

目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに

  • 再生可能エネルギー
  • 原子力発電

東日本大震災を経験した日本の地方は、「火力発電に変わる発電としての原子力」の持続性について真剣に考える必要がある。

大型エネルギー発電施設の誘致でもらえる補助金や助成金は果たして将来世代のためになるのか、本質的な課題解決になるのか。再生可能エネルギーの普及とエネルギーの自家発電は多くの自治体に求められる。

目標8 働きがいも経済成長も

  • 障がい者も働きやすい自治体へ
  • ワークライフバランス
  • 非正規雇用

目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう

  • 住民が足を運ばない役所への転換
  • AI, ロボット, DX, IoTの活用
  • 企業
  • インバウンド
  • 後継者不足

地方創生では「より魅力的な役所/役場をつくる」取り組みがさまざまな自治体で行われている。それ自体は良いことだが、交通弱者が足を運ばなくても済むような仕組みづくりや、移動に伴う排気ガスの削減などもSDGsを絡めると重要な視点だ。

発想を転換し「住民が足を運ばない役所」に転換することでより本質的な課題解決につながる。マイナンバーカードの有効活用などは、まさにその実現への第一歩ではないだろうか。なお自治体の技術革新について深く知りたい方は、以下の記事をご覧いただきたい。

目標10 人や国の不平等をなくそう

  • 人口減少
  • 地域経済格差
  • LGBTQ
  • 障がい者雇用
  • 外国人労働者, 外国人住民への対応

地方創生で見落とされがちなのが、地域社会に暮らす人々の多様性である。先進的な取り組みばかりが注目されがちだが、これまで地域から排除されてきた人々の機会の不平等をボトムアップ型で改善することは大切だ。性的マイノリティ、障がい者、外国人住民、移住者などに目を向けた政策がSDGsでは求められる。

目標11 住み続けられるまちづくりを

  • インフラ老朽化
  • 買い物弱者
  • 空き屋増
  • 単独世帯化
  • 震災, 災害への備え

目標13でも触れるように、SDGsでは災害に強い地域づくりが求められている。一方、日本独自の文脈では地方創生でも掲げられるように「地方の持続可能性を担保する」ことが重要だ。

免許返納によって車が運転できなくなても住み続けられる地域はどうすればつくれるのか、日本の7軒に1軒が空き屋といわれる時代に空き家をどう利活用するのか、人が住み続けているのにインフラが老朽化した地域にどう物資を届ければいいのか。

地方創生と絡めるとこういった課題に対してSDGsのアプローチで取り組むことは必要だ。例えば目標9と絡めてMaaSによって交通弱者を減らしたり、ドローン配達などでインフラ老朽を補うなどの手は考えられるだろう。MaaS×地方創生に興味ある方は以下の2記事をご覧いただきたい。

目標12 つくる責任 つかう責任

  • フードロス
  • プラスティックゴミ
  • ゴミ削減
詳細はこちらをご覧いただきたい
目標12と密接に関わるサーキュラーエコノミーについて深く知りたい方はこちらをご覧いただきたい。

目標13 気候変動に具体的な対策を

  • 温室効果ガス
  • ヒートアイランド現象
  • ゲリラ豪雨・台風対策
  • 自治体の地球温暖化対策

気候変動というと地域とは関係なく聞こえるが、目標13は今日の私たちの生活を脅かす「災害」と密接に関わっている。2020年の令和2年7月豪雨、2019年の台風19号、2019年の九州北部豪雨など、たった2年の間に死者を出した災害が頻発している。

これらの原因は地球温暖化であることはほぼ間違いない。私たちの生活を一瞬で壊す災害を防ぐために温室効果ガスの排出を抑えることは重要である。また目標11と絡め「災害が来ることを前提とした、災害に強いまちづくり」を進める必要もある。

詳細はこちらをご覧いただきたい。

目標14 海の豊かさを守ろう

  • プラスティックゴミ削減
  • 水産資源の枯渇

2018年に神奈川県がプラスチックゴごみゼロ宣言を発表して以降、多くの自治体が同様の宣言を行っている。京都府亀岡市のようにプラスチックレジ袋の禁止を条例で定めるところもでてきているが、理由は海に流れ着くプラスティックゴミの多くが、川を通じて流れ着いているという背景にある。

海の豊かさを守るためには、海沿い以外の自治体の取り組みも必要なのである。

目標15 陸の豊かさも守ろう

  • 生物多様性の保全
  • 森林と林業

目標16 平和と公正をすべての人に

  • DV
  • 児童虐待
  • 行方不明者
  • 振り込め詐欺被害
  • 政治参加
  • オンライン上でのいじめ

学校におけるいじめや児童虐待、教員による生徒への過度な指導などはターゲット16.2がかかげる「子どもに対する虐待、搾取、取引およびあらゆる形態の暴力および拷問を撲滅する」に関連する。運動部などで暴力や行き過ぎた指導が問題となることがあるが、公営の学校の場合、自治体は状況改善に取り組むことがSDGsでは求められるといえる。

目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

  • コミュニティ
  • 自治体, 町内会, 消防団, 商工会青年部など
  • 自治体の財政力指数

目標17はその他16の目標と少し異なる。16の目標が地域が抱える課題を示すものなのに対し、17番目は解決方法自体を示したものだからだ。

日本語に訳せば協働・連携と言えるパートナーシップだが、地域コミュニティや地域のつながりが弱体化する中で、地域に存在する社会関係資本や社会的ネットワークを効果的に用いることが求められている。

最後に-全ての課題と目標はインターリンゲージしている-

今回は自治体がSDGs×地方創生の文脈で取り組むべき課題について、17の目標と絡めてみてきました。初めに書きましたが重要なのは、これらの課題と目標は分かれているわけではなく相互に関連しあっている=インターリンゲージしているということです。

これまでは個別の課題として捉えられてきたものが、SDGsのアプローチを用いることで相互に関連した課題であると気がつき、悪影響を及ぼさない形でシナジーを生み出さないといけないことがわかります。ぜひ皆さんも自身が取り組む課題解決や事業とSDGsを絡め解決する方法を考えてみてください。

次回第4回では、日本国内でSDGs×地方創生の先進的な取り組みを行う地域の事例を紹介します。

KAYAKURAではSDGsに関する講座や勉強会の講師(オンライン可)・WSのファシリテーション、SDGsと関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンド・移住関連事業のサポート/コーディネート、執筆、調査を行っております。まずはお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。講師のプロフィールはこちらをご覧ください。

参考文献
・筧裕介, 2019, 『持続可能な地域のつくり方』英知出版.
・高木超, 2020, 『まちの未来を描く!自治体のSDGs』学陽書房.

この記事を書いた人

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Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.