再生可能エネルギーの課題と歴史を紐解く-日本の太陽光発電の事例から-

再生可能エネルギーと聞くと、近年注目され始めた新しい流れのように感じる人もいるかもしれません。しかし実は日本における再生可能エネルギー政策はオイルショック以降、波がありながらも続いているのです。

本記事では日本の再生可能エネルギーの歴史と課題を紐解いていきます。後半では海外の先行事例を参照しながら、再生可能エネルギーが抱える課題とこれからの可能性を深堀することで2020年代の再生可能エネルギーの展望を考えるキッカケとなれば幸いです。

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再生可能エネルギーへの期待1970年代以降の政策と課題-

1973年のオイルショックを機に、通産省(現:経済産業省)は新エネルギー技術研究開発計画 通称「サンシャイン計画」を打ち出しました。これは原子力を除く、太陽・地熱・石炭・水素を中心としたエネルギーの技術開発を行う計画でした。このとき特に注目されたのは地熱発電です。理由は地熱発電のほうが太陽光発電よりも歴史あるからでした。

1978~1993年には省エネ技術の研究開発計画(通称「ムーンライト計画」)が行われました。エネルギー転換効率の向上、未利用エネルギーの有効活用などを目的とした研究が実施され1973年よりも幅広い分野の再生可能エネルギー技術が発展しました。

1994年になると「新エネルギー導入大綱」がまとめられ、国全体としてどのようにエネルギー問題に取り組むかといった指針が策定されました。日本の再生可能エネルギー政策は歴史がある一方、なかなかその流れは加速していませんでした。しかしこの頃から住宅用太陽光発電の販売が始まる等、今日まで続く再生可能エネルギーの急速な発展と一般化の波がきました。

1990年代に開始された住宅用太陽光発電の歴史~東日本大震災以降の展開

住宅用太陽光発電が日本で最初に販売されたのは、今からおよそ27年前の1993年のこと。しかし当時はとても価格が高く一般家庭が導入できるものではありませんでした。1994年になると太陽光発電導入のための補助金制度も始まりましたが、以前ハードルは高いもの。現在と比べてその価格は約5倍と一般家庭には遠い存在でした。

しかし価格が高くても新しいエネルギー技術への興味や環境問題に対する強い意識から、一定数購入する人たちがいました。彼らが高いながらも購入していったことで市場規模も拡大し、2000年代前半になると価格が下がりはじめます。

太陽光発電の可能性と価値が改めて広く認識されたのが東日本大震災です。福島第一原発事故や計画停電をキッカケに、太陽光発電のもつ自家発電の価値が改めて認識されたのです。この流れは東日本大震災後すぐに萎むことはありませんでした。

2011年に上限キャップ価格という仕組みが導入されます。また2012年には10kW以上の太陽光発電システムはすべての電力を買い取る全量買取制度(通称 FIT制度)がスタート。投資家を巻き込む売電事業の拡大や、メガソーラーなど大規模発電の設置が相次いだことで発電事業の新しい市場が拓けました。

太陽光発電への人々の興味関心の高まりや価格の低下、充実した補助や売電制度は2020年現在も続いており、2020年代のさらなる展開が期待されます。

2010年代の再生可能エネルギー政策の展開-欧州各国と比較して-

日本では2010年代中ごろから急速に普及した再生可能エネルギーですが、欧米諸国では日本よりも早い段階から再生可能エネルギーに注目が集まっていました。

2010年の世界全体の再生可能エネルギービジネスへの投資額は、前年比32%成長となる、2110億ドルを記録。主要国別に見ると、中国(544億)、ドイツ(412億)、米国(340億)が突出しています。本は35億と上位3カ国の10分の1以下にとどまっていることからも、さらなる普及が日本で必要なことがうかがえます。

再生可能エネルギー先進国のドイツは、2020年までに最終エネルギー消費量の18%、総電力消費量の35%を再生可能エネルギーでまかなう目標を掲げており、達成に向けて導入量を増加させています。水力発電を除く再生可能エネルギーの総発電量に占める割合は、2000年の2.1%から、2009年には12.8%まで増加。2019年にははじめて再生可能エネルギーが化石燃料を上回りました。

ただそんなドイツでも太陽光発電が再生可能エネルギー全体に占める割合は9.0%となっており、さらなる拡大が望まれています。

国の単位を超えて再生可能エネルギーの普及を望む声は、グレタ・トゥンベリさんら若者の行動というカタチでも欧米諸国に広がっています。グレタさんらの声は日本ではあまり実際の行動に結びついていませんが、私たちの生活や価値意識とも実は密接に関わる再生可能エネルギーは今後の大きな政治テーマの1つとなるでしょう。

まとめ-これからの再生可能エネルギー/太陽光発電の展望と課題

明るい未来を実現するための再生可能エネルギーですが、さらなる普及のためにはいくつか課題があります。第一に安定した供給の難しさという課題があります。

再生可能エネルギーは基幹エネルギーになりつつあるものの、太陽光や風力の発電量は天候に左右される不安定なものです。発電量と電力消費の予測にもとづいた需給調整や、蓄電池などを利用した電力調整機能を備えたもの普及が求められます。

第二にコストの問題があります。日本ではコストは安くなりつつあるものの海外と比べるとまだまだ高い現状があります。低価格化に向けた技術開発や、政治的な規制改革などが必要となるでしょう。

第三に「固定価格買取制度(売電制度)の再エネ賦課金(火力などほかの電源よりも高く買い取った分の差額を国民全体で負担する仕組み)が高い」という課題です。この批判を踏まえて昨今は「売電」ではなく蓄電池などの「自家発電・自家消費」が注目されてきています。今後は自家発電・自家消費が発展することとなるでしょう。

これらの課題は技術革新と制度の充実・選択肢の多様化によって乗り越えていくことができます。日本の太陽光発電ではこれまで価格というモノサシが一般的でした。しかし多くのメーカーが参入し種類が増えたことで、「機能と質」という新しいモノサシが誕生し購入動機に大きな影響をあたえるようになりつつあります。質の高さで選ぶこともできれば、価格で選ぶこともできる、再生可能エネルギーは新しい段階に突入しようとしています。

KAYAKURAでは本記事のように持続可能な社会の実現を目指す方への記事を多数掲載しています。興味関心のある方は、こちらのSDGsに関する記事サーキュラーエコノミーに関する記事もあわせてご覧ください。

参考資料
意外と知られていない、世界と日本の太陽光発電の歴史
再生可能エネルギーの歴史と未来
再エネ先進国、ドイツの苦境
ドイツ再生エネ46%、はじめて化石燃料を上回る
http://ieei.or.jp/2018/06/special201804004/2/
https://www.env.go.jp/council/06earth/y0613-16/ref06-18.pdf

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。