おためしナガノは長野県が6年前から実施している制度です。筆者は2019年度にこの制度を使って長野県と東京都の二拠点生活を行っていました。
おためしナガノは、約3ヶ月~約6か月弱の長野県ライフおためし期間中、県が宿舎の提供、引越し代・交通費等の補助をする制度。対象はIT関連事業の個人・法人で、首都圏と地方の二拠点生活を試してみたい人や、「いきなり移住やサテライトオフィス開設は……」と考えている個人や企業が対象となります。
2020年度の募集期間は6月22日~7月15日まで。本記事ではおためしナガノ参加経験者である筆者が感想を交えながら制度の特徴や採択までの流れ、気を付けたいことを解説していきます。これまでおためしナガノ経験者が詳細におためしナガノの体験を記した記事はあまりなかったと思うので、おためしナガノ応募を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
→おためしナガノ以外の地方移住時に使える補助金/支援金制度はこちら
おためしナガノとは
おためしナガノはIT関係の仕事や活動を行う人々を対象に、長野県で「おためし」に住んで、仕事ができる機会を提供する制度です。長野県は主にオフィス(コワーキングスペース)の利用料や引っ越し代金、交通費などを上限30万円(個人ではなく団地あの場合は少し下がる)で支援してくれます。
おためしナガノの対象者となる「IT関連の事業」をしている人とは?
2020年おためしナガノの要綱をみると対象者は以下のように規定されています。
- 地方への拠点設置を検討している首都圏等のIT 企業の方
- 長野県を「仕事場」にしたいIT 関連の事業を営む方
- 長野県内でIT 関連の事業を行いたい方
- 地方でIT 関連の事業をやろうと考えている方 など
ポイントは4点です。1点目はすでに事業を実施していたり具体的な事業計画を持っている人のみが対象となること。2点目は長野県内へのIT企業就職希望者は対象にならないということ。3点目は移住希望者は大歓迎ですが移住や定住を強要されることはない。そして4点目は広義のIT関連事業者すべてが対象となることです。
IT関連の事業とはITを活用した事業全般を広く指しており、アプリやゲームの開発、画像や映像等の制作、ITを用いたモノづくり、ITサービスの提供、ITソリューションの開発、Web関係など多岐にわたります。心配な場合は事前に県に相談することをおすすめしますが、基本的にはIT関連の職だと主観的にも客観的にも思える方は当てはまると思って大丈夫でしょう。
おためしナガノ2020年の参加条件
IT関連の事業に携わる人という条件以外に、年齢・居住地、拠点という条件があります。年齢は2020年8月1日現在で20歳以上、おおむね45歳以下の方です。私は昨年度、23歳大学院生という属性で通りました。よって20代前半で学生でも事業がある程度しっかりしていれば通るという事例はあります。
居住地は長野県以外に居住している人が対象です。長野県出身者も参加可で県外の居住年数は問われません。拠点については長野県内に拠点を有していない事業者が対象となります。
おためしナガノ2020年実施期間
2020年のおためしナガノ実施期間は10月上旬~随時です。最長で2021年2月末まで約5ヶ月程度体験することができます。最短の場合は3ヶ月でもおためし可能なので、会社や家族の都合で5か月程度おためしできない人も、まずは応募してみましょう。
おためしナガノ2020年募集期間
2020年おためしナガノの募集期間は、6月22日~7月15日までです。提出にあたって書類が主に3種類必要となるので、書類はコツコツ終わらせるようにしましょう。
おためしナガノで採択されるためには、ある程度先輩おためしナガノ参加者の話を聞いて実状をつかんでおく必要があります。制度の枠は広くできることは無限大ですが、「やりたいことがやりやすい自治体とやりにくい自治体」「受け入れ態勢の整い具合」は自治体によってまちまちです。可能であれば1人以上は実際におためしナガノを使ったことがある人に直接話を聞くといいでしょう。
おためしナガノ2020年募集数
2020年度のおためしナガノ募集数は12組程度です。全体では25名程度が採択されるとのことですが、例年大都市圏で行われる事前説明会にはそこそこ人が来ている印象です。
2019年度、私は採択されましたがある知人は落ちていました。落ちた友人曰く「なぜその自治体でおためししたいのか」をしっかり考えておくのが重要とのこと。募集数以上に応募は集まるので決して通過は楽ではないと思っておくとよいでしょう。
おためしナガノ2020年参加者に対する支援
支援金額の上限は半年間で30万円と、国の支援制度と比較すると決して多くありませんが、首都圏と長野県を移動する際の交通費も対象となるのが最も嬉しい点でした。おためしナガノの対象となる費用は以下の通りです。
- オフィス利用料(コワーキングスペース利用料、最大6か月程度)
- 移転費(引越代等)
- 県外(東京等)への業務上の交通費(主要駅間のみ)
- 家具・家電、自動車等交通用具のレンタル料
- 住居の通信環境整備費(導入時の工事費等)
- 住居修繕費(県提供施設利用者のみ。原則として大きな修繕は県が行います)
- 県内で開催するセミナー等の会場費
おためしナガノに採択されるまでの流れ
2019年度に採択された際の流れを振り返ります。私は募集開始前に行われた銀座NAGANOでの説明会に参加して事業の全体像をまずは掴みました。
募集期間になったら「参加申込書」「参加希望者経歴書」「事業計画書」を提出し、一時の書類選考の結果を待ちました。二次選考の面談には書類選考通過者しか進むことができないため、一次が通過した時点で面談日程の調整がメールでありました。
昨年度、私は面談を銀座NAGANOで受けました。県の担当者1名と面接官が3名(県内コワーキングスペース運営者やその他関係者)おり、私を含めた5人で20分ほど話した覚えがあります。内容は事業計画書についての指摘や実現可能性、将来の移住定住希望などでした。(今年度は二次選考がWebで行われるそうです)
一次選考、二次選考を経て参加対象者に決定後は経費補助の手続きなどをへておためしナガノ開始となりました。
おためしナガノ期間に実践したこと
私は2019年8月~2020年2月まで東御市のコワーキングスペースえべやでおためしナガノに参加しました。期間中は毎週土日もしく週に3日程度長野県を訪れて、えべやを拠点に観光インバウンドサイトの制作に取り組みました。
期間中はコワーキングスペースの利用と共にコワーキングスペース内に月契約の事務所も借りたため、事業で必要なものは全て事務所に置いていました。コワーキングスペースの管理者さんがいつもいるのでセキュリティは万全、安心でした。
コワーキングスペースえべやのコーディネーターさんはとても社交的で地域ネットワークが広い方なので、私は開始当初に観光協会や役場の担当者との面談機会を設けてもらいました。これによって「伊藤さんという人が観光系でおためしナガノをしている」ということが行政内でも理解していただけたため、その後動きやすくなりました。
期間中は1度、12月に実施されたおためしナガノ参加者交流会に参加しました。過去の参加者の方も来られていて県内のIT事情やおためしナガノの有効な活用方法について意見交換ができ充実した時間でした。
まとめ-おためしナガノは絶対応募すべきおすすめの支援制度-
おためしナガノでは、最終的にコワーキングスペースを持つ自治体が受け入れ先となります。長野県が地元だったり先輩移住者だったりするコワーキングスペースのスタッフさんが地域や行政とのつなぎ役になってくださるので、移住あるあるの「ホームシック」「ローカルルール分からない問題」が発生しにくくなっています。おためしナガノの最大の特徴はこの点と言っても過言ではありません。
決して簡単に通る制度ではありませんが選好の観点になっている「事業計画の独自性」「事業計画の実現性」「長野県への来てほしさ」は終始意識したほうがいいと思います。この点がうまくアピールできれば採択されること間違いなしなので、ぜひ応募してみてください!
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