移住先進県 長野県の移住支援と移住施策の歴史と現在の取り組み

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はじめに-地方への移住を意味する「Iターン」という言葉が生まれた長野県-

長野県は全国の都道府県の中でも早くから移住促進に取り組んできた歴史がある。

このことを象徴する事実として今日、特に都市圏在住者に代表される人々が出身地にかかわらず当該地域に移り住むことを指すIターンという言葉が長野県発祥であることがあげられる。この言葉は1980年代に元参議院議員の小山峰男が長野県社会部長時代に作った造語である [稲垣吉彦, 1999]。

この記事では長野県がこれまでに行ってきた移住支援・移住施策と、現在行う移住支援と移住施策の概況をみていく。より詳しい内容は参考資料からみていただきたい。また本記事は固めの内容だが、よりやわらかく長野県の移住について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

2006年に215人だった長野県への移住者は、2018年に2,315人を記録

長野県は2006年度に県、市町村、民間事業者等が連携し、長野県への移住・交流人口の拡大を推進することにより、地域の活性化に寄与することを目的に田舎暮らし「楽園信州」推進協議会を設立した [楽園信州・移住推進室, 2016]。

協議会は長野県、76市町村、28の民間事業者等によって構成され今日まで移住セミナー等の実施、情報発信、受入支援などの事業を行っている。

協議会が発足したこの年から行政サポートによる長野県への移住者統計は開始され、初年度の2006年は215人であった。その数は増加の一途を辿り2013年には初めて500人を超え、2018年には2,315人と2,000人を超えた [企画振興部信州暮らし推進課, 2019]。

移住者の元の居住地は、統計開始時の2006年は首都圏の割合が7割以上であったが2015年には首都圏居住者が6割弱となり、その他地域からの移住者が増えている。

2009年から始まった県が主催する移住セミナー相談会の回数も年々増えており、2009年は東京で1回4市村の参加のみであったが、2015年には東京名古屋大阪で計37回、40市町村が参加した。

信州首都圏総合活動拠点(銀座NAGANO)において実施する移住セミナー相談会は多岐にわたり、2015年は転職セミナー、就林セミナー、移住者創業セミナーなど計23回に738人が参加した。

長野県の各部局が行う移住施策と長野県の移住施策の特徴

移住交流施策は協議会や担当部局のみが実施するものではなく、各部局がそれぞれの課題にあわせて移住施策を行っている。2016年に実施された各部局の移住施策は表1の通り。

産業労働部労働雇用課信州シューカツ応援プロジェクト UIJターン助成金交付事業
産業労働部産業立地・経営支援課創業・サービス産業振興室創業サポート強化事業 ときどき&おためしナガノ
農政部農村振興課新規就農者を支援する事業 長野でかがやく農業女子応援事業
健康福祉部医療推進課医師確保対策室ドクターバンク事業
健康福祉部地域福祉課信州介護人材誘致・定着事業
建設部建築住宅課信州健康エコ住宅助成金 信州型住宅リフォーム助成金 二地域居住者向けコンパクト住宅普及促進事業 あんしん空き家流通促進事業
県民文化部次世代サポート課信州型自然保育普及事業 長野県婚活支援センター設置・運営
県民文化部こども・家庭課ひとり親家庭の移住・定住支援事業
表1:長野県各部局が行う移住施策 [楽園信州・移住推進室, 2016]

永井による2014年の調査では、北海道ならびに鹿児島県と長野県の三自治体による定住促進の取組施策数が、他の県と比較して顕著に多いことが明らかになっている。

地方創生が国策として掲げられる2015年以前の長野県の移住施策の特徴として、過疎地域における住居関連施策が過疎地以外の地域と比較して割合が多くなっており、移住人口確保のための施策として移住者住居の確保を重点施策として取り上げていた点が挙げられる [永井保男, 2014]。

その後、地方創生の流れを受け2015年度に策定されたまち・ひと・しごと創生法の「都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略」として位置付けられるしあわせ信州創造プラン(長野県総合5か年計画)における「長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略~信州創生戦略~」においては、移住希望者に長野県を選んでもらうための工夫として市町村や民間事業者と連携した「信州暮らしの魅力を発信」「相談に関する対応」「地域への溶け込み支援」が3つの柱として掲げられた [長野県企画振興部総合政策課地方創生・計画担当, 2015]。

長野県による移住者の定義は「長野県に愛着を持ち、一定期間居住する意思をもって転入してくる者」

長野県は移住者を、「長野県に愛着を持ち、一定期間居住する意思をもって転入してくる者」と定義している。なお新卒でUターン就職をする学生はここには含ない。

県による移住者数測定は、上記定義を基に市町村の転入窓口で配布するアンケートにて行っており、移住者の要件は概ね5年以上居住する意思があるかどうかで判断している [長野県企画振興部 楽園信州・移住推進室, 2017]。

2017年度の長野県や自治体による行政サポートを受けての移住者数と年齢内訳は、移住者数が1,616人、世帯主の年齢が10代 0.2%、20代 17.1%、30代 29.7%、40代 21.1%、50代 12.7%、60代 15.0%、70代以上 4.0%、不明 0.2%となっており、30代40代が多いことがわかる。

ここでの行政サポートによる移住者の定義は、県や市町村の相談窓口に直接相談した者や移住者を対象とする支援制度を利用した者など、行政の支援を活用して移住した者としており、サポートとは具体的には県や市町村の相談窓口での直接相談や、移住者を対象とする支援制度の活用を指す [長野県企画振興部 楽園信州・移住推進室, 2017]。

最後に-長野県が移住したい都道府県で上位に位置する理由-

これらの取組が功を奏し長野県は各種調査で移住したい都道府県として高い順位を維持し続けている。

地方への移住を検討する人向けの月刊誌「田舎暮らしの本」(宝島社)が毎年まとめている「移住したい都道府県ランキング」では、長野県が2006年から14年連続で1位に選ばれ続けている [宝島社, 2020]。

NPO法人ふるさと回帰支援センターが毎年公開する来場者アンケートによる移住したい都道府県ランキングでは、2009年~2019年の11年間で長野県が7度首位に輝いている [認定NPO法人ふるさと回帰支援センター, 2020]。

以上が長野県の移住支援・移住施策の歴史と現在の取り組みである。長野県は移住したい都道府県ランキングなどで上位に位置することが多いが、これらの取り組みを踏まえると地理的環境やコンテンツだけでなく政策的に上位に位置していることがわかる。今後もKAYAKURAでは長野県の移住動向を取り扱っていく予定なので、興味ある方はぜひメルマガなどに登録しチェックしていただきたい。

参考資料
・稲垣吉彦, 1999, 『平成・新語×流行語小辞典』講談社.
・長野県 楽園信州・移住推進室企画振興部 地域振興課, 2016, 「長野県の移住交流施策について」.
・永井保男, 2014, 「国内移住の人口学」『中央大学経済研究所年報』45: 653-687.
・長野県企画振興部総合政策課地方創生・計画担当, 2015, 「長野県人口定着・確かな暮らし実現総合戦略~信州創生戦略~」長野県.
・長野県企画振興部 楽園信州・移住推進室, 2017, 「【A-1】移住・交流推進事業」長野県.
・宝島社, 2020, 「移住したい都道府県ランキング」『田舎暮らしの本』.
認定NPO法人ふるさと回帰支援センター, 2020, 「2019年移住希望地域ランキング公開」.

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.