総務省 2021年度に地域おこし協力隊員をまとめる「協力隊マネジャー」新設へ

日本経済新聞8月11日記事によると、総務省が地方に移り住んで地域活性化事業などに取り組む「地域おこし協力隊」制度で、隊員のまとめ役や活動の責任者を担う「協力隊マネジャー」を2021年度に創設する考えであることがわかった。

日経以外まだこの情報をあまち取り扱っていないことと、記事タイトルの文字数の問題からかタイトルが「地域協力隊」となっていることにより、現役の地域おこし協力隊や行政職員でもこのことをまだ知らない人は多い。そこで本記事では現時点で公開されている情報から想定される制度の在り様と、制度創設に至った経緯、制度導入時の課題点などを考察する。

地域おこし協力隊とは

地域おこし協力隊とは人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、その定住・定着を図ることで、地域での生活や地域社会貢献に意欲のある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度である。

現在、地域おこし協力隊は各自治体が募集・採用を行い、最長3年間の任期中に自治体職員として働くかもしくは委託を受けてさまざまな地域の活性化事業に取り組む。商工業・観光・空き家・移住促進・特産品開発・情報発信など活動内容はさまざまである。

協力隊マネジャーとは

総務省が2021年に新設する予定の協力隊マネージャーは、日本経済新聞の記事によると各自治体で活動する複数人の地域おこし協力隊の事業を責任者としてけん引したり、自治体内で活動する隊員のまとめ役として行政や企業・学校など関係するアクターとの関係づくりを進めるようだ。

協力隊マネジャーは一定の実績や人脈がある活動中の隊員を任命するケースを想定

協力隊マネジャーの詳しい要件は今後詰められていく予定とのこと。現時点では各自治体が一定の実績や人脈がある活動中の隊員を任命するケースが想定されている。知識や技術を磨くための企業研修への参加といった支援充実を図ったり、報酬を含めて隊員1人当たり年440万円を上限に自治体に配っている特別交付税の引き上げも検討していくとのこと。

また専門性の高さや職責に見合った報酬の引き上げなど支援を拡充する可能性もある。

協力隊マネージャー新設の背景

協力隊マネジャーが新設される理由として、初期段階での手厚いサポートと、定着への継続的なサポートの面がある。地域おこし協力隊は最長3年間と期間が短い。多くの地域おこし協力隊員は最初の1年目を人脈作りや地域に慣れることにつかい、2年目以降、本腰を入れて活動し始めるようなケースが多い。

しかし滑り出しの1年間の人脈作りや地域のことを知る期間をより効率的に短縮できれば、本格的に本来の業務に取り組める時間が増えることになる。協力隊マネジャーが新設され、彼らが新しい地域おこし協力隊員と地域の間に立つことによってより素早く円滑に人間関係が構築され、地域の情報が共有できる可能性がある。

協力隊マネジャーによって解決したい課題の2つ目が隊員の定着率である。過疎化が進む地方の人口増に貢献する一方、隊員が地域になじめず着任1年以内に25%が退任するとの調査結果もあり、受け入れ環境が課題となっている。

島根県浜田市弥栄町での福島らの研究から、地元住民と移住者が相互理解を深めるために対話の場や双方の考えを伝える翻訳者の存在が重要であることが示唆されている。着任1年目に、新しく来た地域おこし協力隊員と地域の人の間に協力隊マネジャーがたつことで、移住者としての協力隊員は悩みや苦労を相談することができ、地元住民は信頼できる協力隊マネジャーがいることで、新しい隊員とも関係を築きやすくなると考えられる。

協力隊マネージャー新設に向けての課題と懸念

現時点では協力隊マネージャーに関する情報はほとんど公表されていない。しかし協力隊マネージャーを新設するうえではいくつかの課題が想定される。第一に協力隊内での上下関係である。これまで協力隊内の上下関係は年齢や着任年数を個人的に意識する以外に、公式なものはない。しかし協力隊マネージャーが新設されることで自治体内の協力隊内に上下関係が発生する可能性がある。協力隊マネージャーが負う責任の程度や、他の協力隊員との関係性はしっかりと検討する必要がある。

第二に地域おこし協力隊員以外の行政職員との関係性である。地域おこし協力隊のサポーター的役割の人が、必ずしも地域おこし協力隊の先輩であるケースばかりではない。行政内の他の職員がつなぎ役になっていたり、業務内容が異なり課や部署が異なれば上司にあたるような人も隊員によって異なる。1人1人の活動の多様さと自由度が特徴である協力隊の活動を制限するような「まとめ役」に協力隊マネージャーがなってしまったり、行政内の人間関係やシステムをより複雑にしてしまうような「マネージャー」にならないことが大切である。

第三は協力隊マネージャーの選出方法である。行政が任命するのか、それとも現役の地域おこし協力隊員が選ぶのか、それとも第3の機関が任命するのか。誰が任命するのかによって誰が協力隊マネージャーとして選ばれるのかは変わる。例えば協力隊員にとっては頼りになる人が行政からしたら面倒ということもあるし、行政からすると扱いやすいが他の協力隊員からすると行政寄りすぎて関係性が構築しにくいということもある。

まとめ-協力隊マネージャー新設は課題を解決するか-

最後に課題や懸念点を書いたが、筆者は概ね協力隊マネージャーの新設には賛成である。しかしこのマネージャー的存在の必要性は、協力隊飲みに限られた問題ではない。特に移住後の暮らしを支援サポートするようなアドバイザーやコーディネーターは、一般の移住者にとっても必要な仕組みである。協力隊マネージャーが足掛かりとなって、地元住民と移住者をつなぐ役割の重要性に光があたることに期待したい。

参考資料
日本経済新聞, 2020年8月11日, 地域協力隊にマネジャー 報酬増も、人材定着後押し.
福島万紀・相川陽一・高橋純恵・藤田容代・藤山浩(2012)「外部支援人材による『寄り合い』の運営を通じた地域住民のつながり創出の試み-島根県浜田市弥栄町におけるこれまでの成果と課題-」『島根県中山間地域研究センター研究報告』8 号, 19-30.

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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