スーパーシティ法案とは?改正国家戦略特区法の概要・事例・期待と課題点などを解説

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人工知能技術やICTなどを活用した先端都市「スーパーシティ」の構想実現に向けた改正国家戦略特区法が、 2020年5月22日に参議院・ 地方創生・消費者問題特別委員会で可決され、5月27日は参議院本会議で採決されました。

「スーパーシティ」という字面からすごそうな雰囲気が伝わってくる一方、中身に関する言及はマスコミではあまりなく内容はわからない人が多いかと思います。そこでこの記事では、

  • そもそもスーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)とは?
  • スーパーシティで描かれる未来像
  • スーパーシティ構想実現までの道のり
  • スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)への期待と課題点

について政府やマスメディアの発表をもとに整理して解説していきます。

※この記事の内容は以下のページから音声でも聴けます。日常のスキマ時間にぜひ学びたい方におすすめです。

※法案の採択以降SNS上では「#スーパーシティ法案に反対します」「スーパーシティ法案の廃案を求める」「#超監視超管理社会を拒否します」などのタグが散見されます。スーパーシティ法案の何が批判されているのかについて4側面からまとめた記事も公開しました。論点を整理したい方はこちらの記事もご覧ください。

スーパーシティとは?定義と意味

スーパーシティーとは、複数にまたがる分野の規制を一括で緩和し、自動運転やキャッシュレス決済などの先端サービスを住民に提供する地域の構想です。複数にまたがる分野の規制を一括で緩和することで、技術革新の促進や各種サービスの利便性を高めることを目的としている点が特徴として挙げられます。

日本はこの分野で欧州各国に遅れをとっているため、世界と勝負できる未来都市をつくるためにスーパーシティ構想(国家戦略特区法改正案)が提示されました。

なぜスーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)が必要なのか

規制改革の大本命とも一部ではいわれる「スーパーシティ構想」は、簡単にいえば未来都市をつくることを目的としています。

未来都市をつくるために必要な規制緩和は、現行制度下で行おうとすると、1つ1つの規制を細かく協議せねばならず、規制の特例をつくるだけで多くの時間を費やしてしまいます。そこで国家戦略特区法改正案を成立させることで、弊害となる規制を一括で素早く緩和できるようにすることが改正案の狙いです。

スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)で描かれる未来像とは

政府の発表では、「スーパーシティ」は、最先端技術を活用し、第四次産業革命後に、国民が住みたいと思う、より良い未来社会を包括的に先行実現するショーケースを目指すと発表されています。

では人口知能(AI)やビッグデータ、ICT(情報通信技術)を活用したスーパーシティが描く未来はどんなものなのでしょうか?スーパーシティ構想で描かれる未来が実現すると以下のようなことが可能になります。

  • 自動車の自動運転
  • ドローン配送
  • キャッシュレス決済
  • オンライン診療
  • 行政サービスのペーパーレス化
  • 働き方の遠隔対応(テレワーク/リモートワーク)

スーパーシティ法案で実現しようとする未来像「自治体のデジタル技術・ICTの積極的活用」の自治体事例について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

スーパーシティ構想実現までの道のり

政府は全国で5カ所程度の地域を特区に指定する方針を示しています。2020年秋までに募集を開始し年内の決定を目指すとのこと。計画を具体化し、実現するのは2022年以降になる見込みです。

現在、全国5か所の枠に対して全国54の自治体がスーパーシティ構想に意欲を示しています。候補地の中には、2025年の万博の開催予定地である大阪市の人工島「夢洲(ゆめしま)」を含む地域もあがっているそうです。

政府が年内に5か所に絞ったとしても、選ばれた地域で住民の合意が得られなければ実施することは困難なため、数年かけて首相が担当閣僚に規制緩和に向けた特例措置を指示したり、住民との協議を重ねたり、関わる企業との調整をしたりするため2022年以降に実現する予定となっています。

スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)が描く未来への期待と課題点

スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)の成立には、期待する声と課題を訴える声の両方が聞かれました。ここではスーパーシティ法案によって実現する未来への期待と課題点を、地方自治体のまちづくりに関わってきた筆者の体験と学術的視点から検討していきます。

スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)への期待

スーパーシティ法案が実現することで、人口減少が進む地方都市の再興が実現する可能性があります。地方都市がスーパーシティ化することでブランディングとなり移住者が増えたり、企業の実験場として活用され技術革新が急速に進んだりすることが考えられます。

例えばサービスとしての移動を実現するMaaSはスーパーシティ構想の軸の1つですが、MaaSが実現することで移動が困難な高齢者の生活利便性を高めたり、自家用車の利用率を下げ環境負荷の少ないモビリティ環境を実現したりする可能性があります。MaaSの基本的情報を知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

5つの事例が実現したところで急速に地方創生が進むわけではありませんが、モデル特区が実現することで周辺地域にもプラスな影響を与えることが予想できるでしょう。

スーパーシティ構想を実現するためには、第5世代(5G)移動通信システムの導入が不可欠であるため、中山間地域での5G整備がこれを機に進む可能性もあります。

スーパーシティ構想とも深く関連するMaaSの具体的事例について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)の課題点

スーパーシティ法案には批判・課題点もあります。第1の批判としてタイミングの問題があります。コロナが収束していない2020年5月時点で急いでこの法案を通す必要があるのか、スーパーシティよりも大切なことがあるのではないかという批判です。

第2の課題点は情報集約のデメリットについてです。NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表の内田聖子氏はスーパーシティ法案の課題について以下のように指摘しています。

「国や自治体、警察、病院、企業が、いまは別々に持っている情報がありますよね。例えば、納税の状態や既往症、位置・移動情報や商品の購買歴といった個人情報です。これらの情報の垣根が壊され、一元化が進む恐れが強いと思います」

個人情報の取り扱いと管理については、プライバシーの侵害や個人情報保護の観点からスーパーシティに限らず世界全体の今後の課題であるため注意して議論していく必要があるでしょう。課題点・論点についてより詳細に知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

まとめ-スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)が描く未来-

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fujiwaraさんによる写真ACからの写真

スーパーシティ法案(国家戦略特区法改正案)が採択されたことをうけて、今後数年間で未来都市の実現に向けた動きが急激に加速することが予想されます。批判点・課題点が指摘される一方で、スーパーシティの実現によって解決される地方自治体の課題もあります。地域住民の声を蔑ろにしないかたちで暮らしの利便性を高める未来都市の実現から今後も目が離せません。

KAYAKURAではMaaSに関する講座や勉強会の講師・WSのファシリテーション、MaaSと関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンド・移住関連事業のサポート/コーディネートを行っております。お困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

参考資料
・「スーパーシティ」構想の実現に向けた有識者懇談会「『スーパーシティ』構想の実現に向けて(最終報告)」
・しんぶん赤旗電子版(2020年3月1日配信)
・Newsweek:「規制改革の大本命「スーパーシティ構想」で、日本の遅れを取り戻せ」

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.