なぜスーパーシティ法案は反対されるのか-問題点や危険といわれる理由を解説-

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スーパーシティ法案とは「複数にまたがる分野の規制を一括で緩和し、自動運転やキャッシュレス決済などの先端サービスを住民に提供するモデルケースの実現を目指す法案」です。5月下旬からニュースで取り扱われていますが、SNSをみると「#スーパーシティ法案に反対します」「スーパーシティ法案の廃案を求める」「#超監視超管理社会を拒否します」などのタグをつけた投稿が多くみられます。

法案の中身に関しては以下の記事の中で解説しているのでぜひご覧いただきたいですが、なぜこれほどまでに反対や廃案を求める声が挙がるのかわからない方は多いと思います。そこでこの記事ではスーパーシティ法案の問題点・課題点・反対の声などを各種報道やデータに沿って検討していきます。キーワードは、住民合意・規制緩和・個人情報です。

なお筆者のスーパーシティ法案に対するスタンスは「住民の暮らしの利便性を高め、地域生活の満足度や幸福度を高めるために最新技術を導入することは意味がある。一方、実現のために人権や住民の声を無視した形で構想が進んでいくことは問題である。各アクターの声を反映させつつ理想的なスーパーシティを実現することが重要だ」というものです。

この記事の目的は法案に反対したり廃案を望んだりすることではなく、スーパーシティ構想をよりよいものにするために議論を活発にするための話題提供です。

記事本文に入る前にスーパーシティ法案の基本情報を知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

スーパーシティ法案反対理由/問題点1:時期の問題

第1の批判として法案を審議し採決するタイミングの問題があります。スーパーシティ法案は2020年5月22日に参議院・ 地方創生・消費者問題特別委員会で可決され、5月27日は参議院本会議で採決されました。

新型コロナウイルスが収束していない2020年5月時点で急いでこの法案を採決する必要があるのか、スーパーシティよりも大切なことがあるのではないかという声が反対理由の1つとしてあります。

スーパーシティ法案反対理由/問題点2:住民合意の問題

スーパーシティ構想を実現するためには、住民や企業などから集めたさまざまな分野の情報を「データ連携基盤(都市OS)」に集約し、AIやICTなどの技術と連結させてサービスにつなげる必要があります。そこでネックになるのが選出された自治体がスーパーシティ構想を実施するための対象地域を決める際の住民合意をどう得るかです。

住民の合意がない状態や反対意見が大きい中でスーパーシティ構想を進めることは、住民の暮らしの利便性を高めるためのスーパーシティ構想の質を低くし将来にしこりを残す可能性があります。この点について内閣府地方創生推進事務局は「個別ケースの判断」としており、具体的に「どう住民合意を得ていくのか」は定まっていません。

カナダのトロントでGoogleが進めていたスマートシティ構想は、参入するIT系企業への反発が高まり大きな逆風に直面し計画が頓挫してしまいました。理由は都市とその住民が、自分たちのデータがシリコンヴァレーの企業にどう扱われるのかについて、次第に不信感を抱くようになったこと。説明責任が果たされず住民の不信感を拭えないままにスーパーシティ構想を進めると途中で行き詰まる可能性があることをトロントの例は示唆しています。

スーパーシティ構想反対理由/問題点3:規制緩和の問題

スーパーシティ構想は、複数にまたがる分野の規制を一括で緩和することで技術革新の促進や各種サービスの利便性を高めることを目的としている点が特徴です。従来も国家戦略特区では企業を呼び込み新しいビジネスを地域で生み出すための、規制緩和や税制優遇がなされてきました。

しかしスーパーシティ構想の規制緩和は、国や自治体やもっている個人情報や企業がもつ個人情報を「データ連携基盤(都市OS)」に集約することで、暮らしの利便性を高めることを目的としたものです。これまでの企業の農業参入や民泊とは質が異なる個人や暮らしと直で関係する規制緩和のため、「制度設計に問題はないのか」「過度な規制緩和ではないか」と批判されているのです。

スーパーシティ構想反対理由/問題点:個人情報の取り扱い

規制緩和と関連して問題視されているのが個人情報の取り扱いです。例えば、スーパーシティ構想によってオンライン診療を実現する場合、国や自治体は、情報を集約して管理する「データ連携基盤(都市OS)」を管理する事業者から診療を望む人の住む場所、健康状態、過去の診断記録や薬の情報、高齢者の場合は要介護度などの情報提供が必要になる可能性があります。

政府は発表の中で「個人情報保護法令に従い、必要な場合は本人の同意が必要」と説明していますが、「公益に資するなど特別な理由がある場合、本人の同意なしで情報提供できる」と定められた行政機関個人情報保護法も存在します。この2つのどちらの法を優先すればいいのか曖昧だと批判されているのです。

政府は国会での答弁で「国や自治体や事業者でつくる区域会議が判断する」としており、具体的な方針は決まっていません。この点について「監視社会化が進む」「個人情報保護はどうしたんだ」と批判が高まっています。

個人が特定されないようなカタチに情報を処理することで問題を解決することもできそうですが、プロファイリングや生態認証に対して懸念をもつ人は社会にまだまだいます。

IBM Securityのレポート「The IBM Security: Future of Identity Study」によれば、先進諸国を対象とした調査で生体認証データを保有する大手金融機関を信用するユーザーの割合は48%にとどまっています。またこれが大手ショッピングサイトだと信用するユーザーの割合は23%ソーシャルメディアネットワークでは信用するユーザーはたったの15%に過ぎないことがわかっています。

米国カリフォルニア州サンフランシスコ市では、警察や行政機関による監視カメラなどの顔認証技術の利用を禁止する条例案が可決されるなど、企業だけでなく行政による生態認証の普及にもNOをつきつける声が高まりつつあります。スーパーシティ構想の実現には住民合意を得ていくことが必要なため、個人情報の収集や利用についてどう合意を得ていくのか、人権の観点からも検討していく必要があります。

まとめ-スーパーシティ構想にはメリットもたくさんある!-

4つの観点からスーパーシティ法案が批判される理由、問題点をみてきました。この記事だけを読むと「危険でヤバい法案だな!」と思う方もいるかもしれませんが、スーパーシティ法案の真の目的は住民生活の利便性を向上させることであり、より暮らしやすい未来都市をつくることです。

スーパーシティ法案/構想にデメリットしかないのであればそもそも法案を通そうとすることもなく、実現を目指す必要はありません。メリットデメリット両方あるからこそ議論が活発にされているのが現状です。現住民や将来世代がよりよい暮らしを地域で営めるようにするために、今後もスーパーシティ法案のメリットデメリットについて多くの人が考え発信することが重要になってくるでしょう。

KAYAKURAではまちづくりに関する講座や勉強会の講師・WSのファシリテーション、まちづくりと関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンド・移住関連事業のサポート/コーディネートを行っております。お困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

参考資料
・WIRED:グーグルがトロントで夢見た「未来都市」の挫折が意味すること
・朝日新聞:与党急ぐスーパーシティ法案 規制緩和だけではない問題
・毎日新聞:「スーパーシティ」法成立 年内にも区域指定 個人情報保護に懸念 制度設計はこれから
The IBM Security: Future of Identity Study
・監視カメラの「顔認証」利用 サンフランシスコ市が禁止へ

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.