監視社会とは?問題点・メリットデメリット・コロナとの関連・事例をわかりやすく解説

各国の政府がスマートフォンの機能を使って新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した可能性を通知する「感染者追跡アプリ」の開発を進めたり、中国が信用スコアによって人を評価する施策をはじめたり、SNSでの誹謗中傷事件が話題になったりと、この社会では「個人情報」の取り扱いがいま大きなテーマとなっています。

個人情報の取り扱いと大きく関わるのが「監視社会」論です。監視社会とは「一定の権力を持つ個人や組織によって個人の行動が常に監視されている社会」を指します。監視カメラ、住民記録、信用情報などの個人情報も監視に含まれます。

この記事では監視社会の基本的な情報を解説するとともに、メリットデメリット・問題点についても従来の研究をもとに検討していきます。監視社会は良い側面危険な側面両方あるからこそ議論が難しいテーマですが、この記事をキッカケに皆さんの監視社会に対する考えが深まっていったら幸いです。

この記事の内容は音声でもお楽しみいただけます。日常のスキマ時間や移動時間に学びたい方はこちらをどうぞ。

監視社会とは?定義・意味 英語では?

監視社会とは「社会が情報化するにつれて、情報というものの価値が理解され高まり、さまざまな技術を駆使して情報の監視に積極的になるようになった社会の1つの形態」「一定の権力を持つ個人や組織によって個人の行動が常に監視されている社会」です。

用いる学者によって用法や定義は微妙に異なるため曖昧な部分もありますが、1つ確実なことは監視社会の浸透は私たちの生活における利便性を高め豊かにする一方で、プライバシーを侵害するものでもある点です。恩恵も危険性も両方ある、それが監視社会の特徴です。

監視社会は英語で複数の言い方があります。ジョージ・オーウェルの名作『1984』に出てくる独裁者とかけて「Big brother society」と言われたり、著者のオーウェルとかけて「Orwellian society」と言われたり、監視を意味する単語を使って「Surveillance society」と言われたりします。

監視社会の歴史

「監視」という概念自体はここ数十年の間に生まれたものではなく、古くはジェレミ・ベンサムのパノプティコン(中央に高い塔を置きそれを取りまくように監房をもつ円形の刑務所施設。のちにミシェル・フーコーが管理システムを例える際に用いた)を提唱した1700年代後半~1800年代前半に起源があるといわれています。

欧米においては1990年前後から、とくに監視カメラ(CCTV)の設置や生態認証システム、マーケティングなどにおけるデータベースの活用といった新たなテクノロジーの導入が社会に与える影響を分析するものとして、「情報社会」の議論とあわせて「監視社会」が議論され始めました。

日本においては監視社会を取り扱ったD. ライアンの名著『監視社会』の翻訳版が2002年に発刊され、2001年9月11日の同時多発テロ事件から「対テロ戦争」の機運が高まる2002年以降に、監視社会に関する議論が活発化しました。

今日では「監視社会」概念は広く用いられるようになり、犯罪学・都市論・メディア論・社会学・政治学・法学などさまざまな分野で批判的に検証されるようになっています。SNS普及以降の個人情報の取り扱いと誹謗中傷の問題や、コロナ後の感染者情報の管理特定の議論などとも関連する監視社会概念は、2020年最もホットな社会的議論の対象ともいえるかもしれません。

監視社会の問題点・メリットデメリット

監視社会のメリット

監視社会が学術的に取り扱われる際、多くの場合は批判的眼差しでデメリットを分析しますが監視社会にはメリットも存在します。第1に監視カメラの設置やプロファイリング/生態認証が進むことで、犯罪リスクが低下しより安心安全な社会が誕生するという議論があります。

第2に2020年5月27日に採択されたスーパーシティ法案に関する議論でも触れられたように、個人情報を集約し活用することで地域における暮らしの利便性を向上させることができます。個々人の移動をデータ化していくことで自動運転の実現に近づいたり、スマートフォン1つで公共交通が全て使えるようなMaaSの実現も監視社会によって扱われるような技術が無ければ達成しません。スーパーシティ法案、MaaSについてより詳細を知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

監視社会の問題点・デメリット

監視社会に対する批判は山本によれば以下の3つに類型できるといいます。

  1. 監視が不均等に配分されている事態に対する「監視と権力性」の問題
  2. 監視がプライバシーの侵害につながる私的領域の侵犯に対する問題
  3. 監視が法維持的に作動することで、法が内に向かう道徳律が反復され自明の物として固定されるという問題

また監視について語る際に重要な2つの役割を果たすのが「リスク」です。例えば、監視はリスクを最小限にし可能な限りリスクを回避する手段として正当化できます。事前に知ることで障害や危険に先手をうてることは社会にとってよいことです。

しかし一方で監視はリスクの原因、私生活への政府の不当な介入の可能性や、個人的消費活動の商業的管理の原因とみることもできます。マンションに設置される監視カメラは外部からの侵入者というリスクを防ぐ目的で設置されています。

他方、設置されている同じ監視カメラがマンション内の住民自身の逸脱した行動を映し出したとき、それは当初監視カメラを設置した目的とは異なるリスクを発見したことになるのです。映されたくないプライベートなものまで映る可能性を心地よく思わない人は多くいるでしょう。

インターネットが普及した現代において私たちはネットショッピングに親しんでいますが、実はネットでの消費行動にも監視は大きな影響を与えています。個人情報が企業の手に渡りそれをもとに個々人に最適化された広告が表示されることで、私たちはついつい欲しいと感じて買ってしまいます。このとき、果たして私は本当に自分自身で欲しいと判断して買っているのでしょうか?

企業に提供した情報/顧客を監視することで得た情報によって、個人的な消費活動が商業的に管理され買わされているともいえるのです。監視社会=情報を得たものたちによって情報を提供した側が知らないうちにコントロールされる未来へとつながり、自立した個人を壊す可能性もはらんでいるのです。リスク社会についても知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

監視社会を取り扱ったおすすめの小説・学術書

監視社会の研究は約30年前から進んでおり社会学を中心に名著が多数出版されています。また監視社会はその性質から学問分野だけでなく小説のテーマにもなっており、特にジョージ・オーウェルの『1984』はいまも読み継がれる名著です。

まとめ-監視社会は日本においてどう進んでいくのか-

監視社会概念は今後も情報の価値が高まる時代の中で、常にキーワードなり常に私たちに考えることを投げかける概念です。それ自体をすべて悪いものと批判することは簡単ですが、ぜひ事例ごとにメリットデメリットを比較してより理想的な監視社会のありかたを考えていかなければと思います。

KAYAKURAではまちづくりに関する講座や勉強会の講師・WSのファシリテーション、まちづくりと関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンド・移住関連事業のサポート/コーディネートを行っております。お困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

参考資料
・Lyon, David, 2001, Surveillance Society: Monitoring Everyday Life, Buckingham: Open University Press.(2002, 河村一郎訳『監視社会』青土社.)
・野尻洋平, 2012, 「後期近代における監視社会の背景・過程・帰結—個人化・リスク・社会的排除—」『応用社会学研究』54: 237-249.
・山本奈生, 2010, 「監視社会への理論的考察」佛教大学総合研究紀要, 17: 127-137.
・小川貴之, 「監視社会をめぐるプライバシー問題-監視カメラ社会におけるプライバシー保護-」

-ラジオ版KAYAKURA-

ラジオ版KAYAKURAは毎回1つのテーマについて5分~10分で深堀する音声コンテンツです。テーマは社会課題・最新ニュース・地方創生・観光インバウンドなど。スキマ時間の学びを思考を促す内容となっていますので、ぜひ聴いてみてください。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.