消防団の特徴を社会学的に分析する-地方で今でも多く残る消防団のメリットデメリット-

この記事を読んでいる人の多くは消防団について何をしている団体か知らないか、もしくは誘われたのでどんな団体か知りたい人が多いと思う。消防団は日本の地方で今でも多く残る火災や災害時に消火活動や救助活動を行う団体である。

「地域を守るために必要」「時代遅れの団体でいらない」「高齢化が問題」などメリットデメリットがいろいろささやかれる消防団。本記事では、社会学者ゲオルグ・ジンメルの小さな社会圏の議論を引用して、社会学的に消防団を分析していく。体験者や経験者の声ではなくより客観的な消防団の評価を知りたい人にぜひ読んでもらいたい。

社会学者ゲオルグ・ジンメルの小さな社会圏の議論を用いて消防団を分析する

ジンメルの小さな社会圏とは大都市と比較した差に次のような特徴をもつ集団を指す。

  • 固く閉ざされている
  • 緊密に凝集
  • 個人成員の個性発達や自由な自己責任に基づく運動は×
  • 自己保存のための境界と求心的な一体性が重要

ジンメルが100年以上前にとなえた小さな社会圏の特徴は、今の時代でも集団分析で効果を発揮する。そこで本記事ではジンメルのこの4つの小さな社会圏の特徴を消防団に当てはめながら消防団の実態を検証していくこととする。

消防団とは火災や災害時に駆け付け消火活動や救助活動をする組織

消防団は専門職である消防職員とは異なり、火災や災害発生時に自宅や職場から現場に駆け付け、その地域を知っているからこそできる消火活動や救助活動を行う集団である。

地方では、最寄りの消防署まで数キロ以上離れている地域も多く災害時に消防職員が駆けつけるのを待っていては消火や救助が間に合わない。そこで、各町内会や自治会ごとに消防団を組織しいつでも対応できるようにしているのである。

消防団という仕組みが、ただ非常時に火を消したり災害救助したりするためだけの団体であれば問題はない。しかし消防団という組織に加入すると付随して様々な活動に参加することを求められる。

これらの活動はジンメルが主張する小さな社会圏の特徴に当てはまる点が多く、都会人的で近代的なパーソナリティを子どもの頃から身につけつつある現代の若者や都会から移住してきた人にとっては息苦しさや障壁を感じるものになっているのである。以下では消防団で実際に散見される状況をジンメルの小さな社会圏の研究をもとに分析していく。

消防団とは固く閉ざされている組織なのか

消防団は自治会や町内会ごとに団がわかれており、原則として団がある地域以外の人は入団することができない仕組みとなっている。活動の特性上、若者を中心とした組織体系となっており多くの消防団が定年を定めている

もう一つの特徴としては、近年は女性が消防団に関わるケースも増えてきているが、原則、男性しか入団できない。筆者がフィールドとしている長野県の町では、数年前から女性消防団員も活動をするようになっているが、男性と共に練習をすることはなく女性消防団は女性消防団として独自に活動を行っている。

これは若手で特定の地域に住む男性のみという伝統的な慣習のもと固く閉ざされた消防団の特徴を表している。

消防団とは緊密に凝集している組織

消防団は緊密な凝集性を持った組織である。その特徴の一つに体育会系のノリが一部に残る飲み会の存在がある。消防団は20歳~40歳くらいの団員が多い団体のため、長いメンバーは約20年所属している。長年所属しているメンバーが先代から受け継いできた慣習は下の代にも受け継がれていくのである。

次の見出しで触れる消防操法大会に向けた練習が夜の行われると、そのまま飲み会が行われる団も多い。近年は仕事と両立しやすくするために飲み会を減らすホワイト消防団もあるが、一方で昔のままの慣習が残りアルコールハラスメントギリギリの飲み会が行われている場合も少なくない。

組織の特性上、年功序列がハッキリしており地域と密着しているため嫌われると地域での生き心地が悪いものになる可能性も高く断ることが難しいという面もある。新しいメンバーが入り替わる組織もあるが、消防団は強制加入では無いためそもそも嫌な人は加入しない。結果として慣習がより維持されやすいのである。

緊密な凝集性を維持し続けるためのシステムがいまだに一部で残り続けているのが消防団の特徴である。

消防団では個人成員の個性発達や自由な自己責任に基づく運動は基本NG?

消防団には、6月もしくは10月に消防操法大会という消防車に乗降し消化するまでのタイムや技術を競う大会がある。この大会は地方予選から始まり全国大会まである大掛かりなもので多くの消防団が参加している。大会ということで消防団同士が競いあう場となっており、大会での成績は「自分たちの地域はすごい!」という地域アイデンティティを育む場ともなっている。

大会前数週間は平日の夜もしくは朝早くに数時間の練習をする団体が多く、この練習の大さとツラさが消防団に対する印象を悪くしている面は多くある。1チーム数人のメンバーでできる限り早いタイムを目指す練習は運動部の活動さながらでもある。

防災という特性と地方に特に力を入れる消防団が多い大会に向けた練習は、個人成員の個性発達や自由な自己責任に基づく運動は認めない。消防方法を覚えるためを大義名分としつつ辞めるキッカケが無く慣習的に出場している場合もあり、知性ではなく心で動いている(元消防団の視線や地域の視線を気にする)点で小さな社会圏的である。

加えて統一された服装で決まった掛け声を決め素早くきれいに動く一連の動作も、ジンメルが指摘した通りの小さな社会圏の特徴をもっているといえるだろう。

消防団には自己保存のための境界と求心的な一体性が重要

自己保存のための境界は最初に触れた年齢制限・性別制限・地域制限によって保たれているため、ここでは求心的な一体性について検討する。消防団は伝統的な催事と並んで「地域の若者が社会性を身につける場」として機能してきた歴史がある。

ここでの社会性とは、地域で生きていくうえで身につけておいたほうがいいルールを指す。ルールの一つが先輩後輩関係をまもるというものである。消防団は厳格なピラミッド型の組織である場合が多く、基本的には年功序列となっている。40歳前後の団長がいうことは絶対であり、ときに地域や消防団のルールに背くと×が与えられることもある。

消防団が求心的な一体性をもつことを表すものとして、消防団の動員力が選挙時に大きな影響を与えるケースがある。筆者が関わっているとある地域で議会議員選挙に立候補し現在も議員を務めているある人にに以前インタビュー調査を行った際に、以下のような発言があった。

「この地域で町議会議員になるなら、商工会青年部と消防団に入ることは必須かな。そのときにできたつながりがあったから議員になれたと思うよ」

消防団は商工会青年部ほどの全国的な政治的動員力はないが、自治体レベルの選挙だと大きな影響力がある。消防団出身者がいれば消防団出身者にとうひょうすることは絶対という場合も多く、いまだに動員力をもった求心的な一体性がある組織である。

まとめ-消防団への入団を考えている人はいろんな人に相談して決めよう-

本記事ではWeb上の文章ではあまり見られない消防団を社会学的に考察するという実験を行った。今回の分析とそれに基づく消防団の特徴の説明は、筆者の一意見に過ぎない。

消防団への入団を検討している方は、実際に入っている先輩や周囲の人にその地域の消防団の特徴を聞いたうえで判断してほしい。記事内でも書いたように近年は、地域によって消防団の在り方が大きく異なってきておりホワイト消防団とブラック消防団の差が激しくなってきているからである。

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KAYAKURAは「新しい地域と観光を考える」をコンセプトに、地域と地域にまつわる言葉や動向を深く考える地域考察メディアです。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.