ビデオ通話の利用拡大は地方にとって武器となる-戦略的に媒体を使い分ける、移住促進を例に-

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ビデオ通話は地方にとって移住促進の新たな武器となる。

コロナ禍に大都市の脆弱性とリスクが露呈し地方移住に興味関心を示す人が増えた。4月からオンライン移住セミナーを開始した長野県伊那市は従来の対面式セミナーでは約10人だった参加者が、2020年5月には60人を記録。

10月に初のオンライン開催をした国内最大の移住マッチングイベント「第16回ふるさと回帰フェア2020」は、過去最高1万5436人の動員を記録した。

一方、これまでオフラインのイベントに頼ってきた自治体担当者からは、リアルな体験会や交流会が開催できず苦心する声も聞かれる。

「何を伝えたいか」によって手法を変えることの重要性

杉谷陽子氏によれば、正確な情報伝達をする際に非言語的手掛かりの重要性は低く、時には非言語的手掛かりが正確な情報伝達を疎外する。にもかかわらず、多くの人は対面のほうが正確な情報伝達ができると思い込んでいる。

移住相談を例に考えると、自治体情報や制度説明など正しい情報伝達が求められる場面ではリアルよりビデオ通話のほうがむしろ適しており、移住相談の入り口として効果を発揮するといえる。

ビデオ通話では雰囲気が醸成されない

一方、ビデオ通話で伝達しにくいのは雰囲気が重要な機能を果たす「楽しさ」や「高揚感」だ。

雰囲気は模倣と伝染によって醸成される。1人の感情表出行動を他者が五感で感じると模倣が始まり、感情表出が伝染していく。感情表出の伝染が集団内で循環すると「楽しさ」「高揚感」といった雰囲気は醸成されるのである。

しかし現在、どれほど優れたビデオ通話でもタイムラグが存在する。タイムラグで模倣と伝染が寸断されるビデオ通話では雰囲気は醸成しにくく、むしろ雰囲気が共有できないことがストレスにもなる。

社会学者E. デュルケームは1912年『宗教生活の原初形態』の中で、集団で湧いた状態を「集合的沸騰」と表し、人間が経験しうる最高の至福だと指摘した。集合的沸騰によって自分と他者の壁が壊れ一つになるような感覚は、アルコールにも似たある種の依存性と快楽をもたらす。

最後に-ビデオ通話を入り口にリアルにつなげる戦略を-

地方自治体による地方移住促進施策で重要なのは、いかに移住のハードルを低くし興味関心ある人に足を運んでもらうかである。コロナ禍のビデオ通話による移住相談の拡大は、移住の入り口である移住希望者と行政担当者がつながる機会を増やした。

ビデオ通話での移住相談を経て関係性が構築されたら次のステップとして、オフラインの移住体験ツアーや交流会等への参加を促すことが重要だ。ビデオ通話では難しい地域のイベントでの集合的沸騰と雰囲気の醸成によりつながりが生まれ、次の来訪や関係人口化に結びつく。

つまりビデオ通話の強みを活かし弱みを補うような移住相談のプロセスを戦略的に構築することで、ビデオ通話による移住相談という選択肢がほぼ存在しなかったコロナ前には思いもつかなかった移住促進が可能となる。

ビデオ通話は、創意工夫によって地方に人々を惹きつける新たな武器となる。

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.