出席率6割の成人式は自治体にとって若者に振り向いてもらう最後のチャンスかもしれない

「成人式に出席したけどつまらなかった」「偉い人たちの話を聞くために地元にいる時間を犠牲にしたくない」そんなこえが毎年、成人式出席者から聞こえてくる。自治体は多くの若者が地元に集まっている時間を無駄にしてはならない。

本記事では、出席率6割をいまだに超える成人式が自治体にとっていかに貴重な場であるかを確認すると同時に、実際に地域をよりよくするために自治体にできることを提案する。(筆者は実際に成人式での講演経験とワークショップ・アンケート調査の実施経験があるが、成人式での意味あるコンテンツの実施効果は絶大であることを最初に保証する)

※写真は筆者が2019年に長野県のある自治体の成人式で参加者全員参加型のワークショップを実施している様子

成人式には都市部で5割~6割、地方市町村では7割~8割以上の若者が参加する

「成人式の出席率が年々下がっている」そんな嘆きを自治体関係者からこの時期になるとよく聞くが、実際のところ出席率はどの程度なのか。有限会社きものと宝飾社が全国9市を対象に実施した調査の結果は以下のようになっている。

平成30年成人式参加率
北海道富良野市  72.0%
東京都調布市   54.3%
東京都多摩市   56.8%
千葉県市川市   53.5%
埼玉県さいたま市 76.0%
京都府京都市   50.5%
大阪府堺市    68.6%
岡山県倉敷市   61.2%
愛媛県松山市   73.2%
合計       63.1%

傾向として都市部のほうが出席率は低く地方に行くほど出席率は高くなる。着目すべきはさいたま市や京都市のような大きな市でも出席率は5割を超えていること。筆者が聞いたところでは本調査結果には載っていない地方の町や村に行くと出席率が8割を超えるところも多くある。

成人式の出席率は依然と比べると低くなっている。しかし2020年現在も成人式は、その自治体に住んでいるもしくは出身の若者が約6割出席するイベントなのである。お祭りでも初詣でもこんな高い割合は記録できない。

成人式は自治体にとって若者に地域の魅力をPRしつながる最後のチャンス

どれだけ頑張って自治体がUターン施策を実施したり地域に愛着をもってもらう教育を小中高で実施したりしても、なかなか結果が出ないと叫ばれる昨今。自治体がハガキ1枚送るだけでたいしておもしろくもないイベントに地域内外から約6割を超える若者が集まるという事実は、とてもすごいことではないだろうか。

自治体は成人式という千載一遇のチャンスを逃していいのか?成人式を逃すともう一生、地元に来ることはない人だって多くいるだろう。成人式のために地元に戻って来ても式に出席するだけで何もほかにすることがない人だって多くいるだろう。

こたえは簡単。自治体や地域は成人式というせっかくのチャンスをとことん生かすべきだ。

成人式で自治体ができることはたくさんある

では具体的に、成人式をキッカケに地元に戻ってきた若者とその地域に住んでいる若者で構成される成人式出席者に自治体はどんなふうにアプローチすればいいのだろうか。ここでは具体的に3つの方法を提案する

成人式出席者の連絡先を更新し継続的に地域とつながれる仕組みをつくる

1つ目の提案は住所以外の連絡先を出席者から得ることである。成人式の案内は通常、実家がある住所に送られることが多い。しかしこれでは定期的に地域の情報を若者に届けることはできない。そこで重要なのはメールアドレスやLINEなど本人に直接定期的に連絡できる方法を確保することである。

こうすることで定期的に地位の情報を発信できるだけでなく、なにか非常事態が地域に起きたり支援が必要な状態になったとき全国に散らばった若者に支援を求めることができる。今は地元に住んでいなくても成人式に出席した若者はなんらかの理由で地域に対して思いがあると考えられる。彼らの思いはいざというときにネットワークとなり力を発揮するだろう。

若者が思っている以上に地域には選択肢が多様にあることを伝える

2つ目は成人式出席者に対して「この地域にはみんなが思っている以上に選択肢が多様にあるよ」と伝えることである。小中校を地元で過ごし地域を離れた若者や高校を卒業してすぐに就職した若者は、地域の産業や就職口の情報をそこまで知らないことが多い。また地元にあるという理由だけで敬遠している可能性もある。

しかし高校卒業後数年を経て迎える成人式の場に出席する若者は、働き始めたり地域を離れたり大学に進学したりしたことで地域に対して客観的なまなざしを身につけつつある年ごろである。このタイミングで、多様な就職先や多様なライフスタイルの在り方を示すことは将来の彼らの選択に少なからず影響を与えるだろう。

出席者へのアンケート調査を実施する

これは実際に筆者がとある長野県の市町村と連携して行ったことである。1度地元を離れた若者の意見を自治体が聞くことは難しいが、成人式の場であれば地元を離れた若者が集まっている。「なぜ地元を離れたのか」「どんなものがあれば戻ってきたくなるか」「どの程度の頻度で地元に帰ってきているか」などの質問は、なかなか外に出た人に聞けないが自治体としては得たい質問である。

成人式の場を活用し5分でも式が終わる前に時間をとり参加者にアンケート調査することは、大きな効果を発揮する可能性がある。実際に筆者が関わった市町村でも、その後の議会答弁である議員さんが成人式と若者が集まる場での情報発信と金銭的補助について提案することにつながった。

まとめ-成人式に出席した若者に魅力的な地域だと思ってもらうために-

せっかく遠方から来た成人式参加者に「つまらない式だった」と感じさせるようなコンテンツを提供する自治体は、式をやめたほうがいいだろう。式の時間も友達との交流や地域の懐かしい知人との会話に充ててもらうほうが、よっぽど地域にプラスな印象を持つだろう。

しかしそれでも成人”式”を行うのであれば、自治体は少しでも自分たちにメリットがあり参加者にもメリットがあることをしなければならない。両者が共通して願うのは「この地域がもっとよくなればいいな」ということ。地域がよりよくなるために成人式の時間を有効活用してみてはどうだろうか。

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この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.