新しい働き方「複業」「ワーケーション」「ポートフォリオワーカー」とは?企業に属しながら本業以外にコミットする可能性

近年、首都圏の企業で働く一部のサラリーマンや先進的な取り組みを行う地方市町村、人材不足の地方中小企業で注目されている新しいライフスタイル・働き方が「複業」「ワーケーション」「ポートフォリオワーカー」です。言葉によって意味することは少しずつ違いますが、共通しているのは「本業もしくは仕事を複数する」こと。

企業によって労務管理の仕組みや外部での仕事が可能か不可能かには差があるのが現状ですが、国が複数のような複数の職をこなすライフスタイルどんどん進めています。また、企業も社員の複業を許可することが自社の利益になる面がある!ということに少しずつ気が付いてきた(職種や企業によるが…)側面もあります。

この記事では、2019年11月18日に岡山県新庄市がNTT DATAのBESTA FINTECH LABで開催したイベント「地域×複業人材 ~ワーケーションという新しい働き方」から学び考えたことをまとめたいと思います!

長野県千曲市×株式会社ふろしきや×一般社団法人Work Design Lab×KAYAKURA

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企業に属しながら他の仕事ができる?複業が意味することの背景と本質は何か

複業とは「複数の仕事を持っている」ことをざっくり意味します。副業が「本職をやりながら行う仕事」という意味で、従来、悪いイメージがあったり企業としても認めづらい部分があったりした一方で、複業には「趣味的な仕事」や「ボランティア」なども広義で含まれます。本業を複数持っている人もいれば、本業+ボランティア活動複数という人もいれば、フリーランスでプロジェクトベースで様々な仕事をこなすという人もいる、この幅の広さが複業のポイントです。

企業は社員を雇用することへの抵抗感や社内のブレイクスルーのため複業を解禁しつつある

複業がここ数年間で一気に注目を浴びるようになった理由として、企業の雇用控え、国の後押し、仕事の多様化などがあります。企業は雇用してしまうと固定費になってしまうが新規事業部などで多様な能力を持つ戦力は欲しい。そんなときに、複業実践者が活躍する事例は多くあります。

新規事業担当者と外部の人材がコミュニティを通してつながることで、新たなプロジェクトが生まれビジネスへとつながっていく。自前主義から脱却し、仕事は企業や業種の壁を超えたプロジェクト型へと向かっていくことにメリットを感じる企業は確実に増えてきています。

また、日本の会社に属する社員の仕事へのモチベーションは世界ランキングで137国中135位という散々たる現状があります。複業を認めることで社員のモチベーション向上や社内のブレイクスルーにつながるかもしれないという文脈で複業を解禁する企業も増えてきているのです。

これまでの働き方や社会モデルに危機感をいだく国や行政が複業を後押ししている

国も複業を後押ししています。従来の日本的な「一企業で終身雇用!」みたいなモデルが破綻していくことが予見できる中で、個々人が生き残っていけるようなモデルを作る必要があるため、今から少しずつ複業やフリーランスなどの多様な働き方を後押ししています。

厚労省が発表している2035年の会社のあり方によると、「会社は解体していくだろう」「プロジェクトベースでメンバーが集まって仕事を行うスタイルが増えていくだろう」ということがしっかり明文化されています。(複業やフリーランスが増えても税金や個々人の情報の管理がしっかりとできるように国はマイナンバー制度やキャッシュレス決済をなんとかして広げようとしているわけですね。)

国レベルでなく地方市町村でも複業人材が求められてきています。今回のイベントを主催した岡山県新庄村は人口940人の岡山県で最も小さな市町村です。限られたリソースではできないことがあるときに、複業人材とプロジェクトごとに連携することで行政の人材や村内のResourceでは解決できない問題が解決できるようになります。

地方の中小企業も人材不足から複業人材を求めている

地方の中小企業は、いま、圧倒的な人材不足に悩まされています。しかし、大企業でも躊躇してしまう雇用を中小企業が簡単にできるわけはありません。そこで、都内に住む複業人材に週1,2日だけ地方に来てもらって専門的なアドバイスをもらったり、複業人材と連携して新しいシステムを開発することで人材不足を補っていこうとする動きがあるのです。

中には「1日社長募集!」など、尖ったアイデアで全国から百人単位応募を受ける企業もあります。上記2つのテーマともつながってきますが「人材のサブスクリプション化」が複業を考えるうえでの一つのキーワードなのです。

いくつも本業がある?ポートフォリオワーカーの意味と実態とは?

ポートフォリオワーカーは、複業ほどまだ知られていない言葉ですがポートフォリオワーカーに当てはまる働き方をする人は確実に増えてきています。 世界的なベストセラーになった『Life Shift』 の中に出てくるワードで、意味は「先行き不透明な今の時代に、ひとつの活動や会社に依存することなく、様々な活動に同時並行で取り組む」ライフスタイルです。

人生100年時代、1つの仕事、1つの企業だけで食っているほうが珍しい時代になっていくでしょう。リスクが多く先が見えない時代だからこそ、本業をいくつも持ち時代と状況に合わせて自身の立ち位置を変えていく必要があります。1つの企業に属して働くのと比べて柔軟性やバランス感覚が求められますが、トレーニングと経験でできるようなるはずです。

私もポートフォリオワーカーです。大学院で研究をしながら、フリーランスとして仕事をこなしていますが1つのスキルに頼った仕事ではなく案件によって仕事の内容は全く異なります。実践していて感じるのは、自分で自分の働き方をコントロールできることの快適さです。その日の気分や置かれた状況によってやりたいことややらないといけないことが変るので、自分ですべてを決めて行えることが組織で動くよりも合っているなと感じています。

長野県や和歌山県の取り組みが熱い!導入する企業が増えているワーケーションとは?

美麻 長野県

ワーケーションは、複業やポートフォリオワーカーとは少しベクトルが異なります。この言葉は「Work」と「Vacation」の造語です。つまり「働きながら休みもとる」「やすみながら働く」ことを意味します。

外部に仕事が持ち出せる企業だったり、PC1台あればこなせる仕事に従事している人であれば、会社の決まったオフィスに毎日行く必要はありませんよね?どうせPC1台あれば仕事ができるなら、せっかくだからリゾート地や日常とは離れた場所で仕事をしようじゃないか!これがワーケーションです。

長野県や和歌山県がワーケーションの取り組みを積極的に推進しており、企業が数十人単位で地方市町村に行って仕事しつつ新たなつながりをつくったり、ワーケーションできた人材に高校で進路の授業をしてもらったり、ワーケーション用の施設で仕事をした様子を首都圏で発信してもらったりと両者Win-winになるような取り組みを進めています。

ワーケーションの本質は、従来は目的ごとに分断されていた時間を、目的をベースに時間を共有するという考え方です。仕事は会社で、旅行は家族といったカタチで分かれていたものを「家族で1週間、長野に宿泊してお父さんは5日間仕事、子どもは5日間現地の学校で授業を受けたり仕事についていったり、お母さんは子どもと一緒に過ごしたり自分の仕事をこなしたりして、最後の2日間はみんなでキャンプ!」のように、仕事と家族の時間をミックスすることで、みんなハッピーになれるというわけです。

2019年に設立されたワーケーション自治体協議会(ワーケーション自治体協議会(ワーケーション・アライアンス・ジャパン:WAJ)には約65市町村が加盟し、市町村側の注目度も高い取り組みなのです。

「複業」「ポートフォリオワーカー」「ワーケーション」に関する意外と知られていないこと

  • 時間の拘束にお金を払っていて、アウトプットに対して払っているわけではないという考え方だと複業は難しい。
  • 地方だと規模の経済で考えるとどうしても収入が小さくなってしまうから、他の物差しで測る必要あり。非金銭的な部分!
  • 地方だと、近隣在住よりも首都圏在住のほうがイザコザなく進められることがある。
  • 趣味を複業にする可能性。本業と複業が遠いほうが会社は嬉しい。本業との整理がつきやすい=好きだからできる
  • 会社にいても発揮できないパフォーマンスが発揮できる
  • 人とのつながりが地方で新しくでき、仕事以外でも仲良くなって遊びに行ったりする
  • 市町村の職員も、副業は禁止ではなく制限なので複業ができる

企業に属している人が複業しようとした場合、一番のネックはやはり会社からの視線や制限ですよね複業は副業と違い、会社に禁止されているわけではない活動も含まれるので、積極的に外にまずは出てつながりを作り成果として示していくのが一番の近道なのかもしれません。また、保険をどうしようとか税金をどうしようといった制度的な部分の整備がまだ進んでいないのが現状なので、そこもネックになる可能性はあります。

逆に企業に属していない人、ポートフォリオワーカー、フリーランス、学生にとってはこれらの流れは確実にチャンスです複業OKの流れがあるということは、プロジェクトや達成課題によっては自社の社員じゃなくてもいいという判断をする企業が増えているということです。これらの企業はまだまだ一部に限られますが、そういった企業の新規事業部門担当者や一部の社員は積極的に会社の外に出ていっているので、様々なコミュニティに参加し彼らと出会うことは最大の営業です。

会ったときに営業できるような資料を常日頃持ち歩くこと、今回講師でお話された石川 貴志さんが代表を務める一般社団法人Work Design Labのような複業家が多く集まるコミュニティに参加すること、ポートフォリオワーカーやフリーランス向けの求人が出されるサイトへの登録や自身のサイトを作り検索で見つかる可能性を高めること、などすることで企業とのお仕事につながるかもしれませんね!持っているスキルによって名刺を複数枚作るのもおススメです👍

まとめ ー新しい働き方の可能性は地方にあり!-

「複業」「ワーケーション」「ポートフォリオワーカー」3つに関連するのは、首都圏/都会にいなくても仕事ができることです。ビルの中に1日中拘束されてする仕事と、さわやかな風が吹く森の中のコワーキングスペースでゆったりとする仕事、あなたはどちらがいいですか?「森の中で1年中仕事なんか嫌!」という人はもちろんいると思います。複業やワーケーションなら、首都圏で仕事しつつ休暇だけ地方にいったり、本業じゃない仕事で地方に行ったりと様々な選択ができます。

地方は市場として小さい部分は確かにありますが、地方でしかできないことや地方だからこそ眠る可能性もあります。新しい働き方を通して自身のライフスタイルを転換させると共に、地方と新たなつながりをつくりビジネスへとつなげていくモデルがこれからどんどん増えていくはず。そんな流れを担う一部にあなたも、ぜひなってみませんか?

KAYAKURAでは地方移住・新しい時代のライフスタイル/ワークスタイルに関する講座や勉強会の講師・WSのファシリテーション、執筆、関連した地域活性化・地方創生・観光インバウンドなど関連事業のサポート/コーディネートを行っております。お困りの方はお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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最後に、効率よく学ぶために本を電子版で読むこともオススメします。

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この記事を書いた人

Masato ito

長野県出身、日本学術振興会特別研究員、武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所客員研究員、一橋大学社会学研究科所属。専門は社会学、政策学。2017年・2021年に創設に関わった2つのまちづくり事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。後者は同年公民館アワードも受賞。現在は地方移住やまちづくり、地域政策に関する研究を行う傍ら、関連する分野のコンサルティングやアドバイザー、講師講演執筆などを行っている。毎日新聞、AERA、Oggi、Abema Prime Newsなど寄稿出演多数。