【インタビュー】ゲーム性が話題のふるさと納税寄付サイト「みよたんクエスト」はこうして誕生した | 長野県御代田町

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長野県御代田町のふるさと納税寄付サイト「みよたんクエスト」が話題を呼んでいる。みよたんクエストは、ふるさと納税推進の新たな取り組みとして町の妖精「みよたん」をモチーフにはじまった。

サイトは2020年9月下旬のサイトリリース時には生まれたばかりでレベル0のみよたんが、ふるさと納税額が基準額に達するごとにレベルが1ずつ上がり進化していく仕様。(2020年12月中旬現在、みよたんのレベルは19まで上がっている。)

みよたんのレベルが1成長するたびに、あらかじめ選定された町の事業が1つずつ実現し、寄附者はバーチャルにまちづくりに参加している感覚が得られる仕組みになっている。

ふるさと納税寄付サイトとは思えないポップさとクオリティの高さからリリースと同時に注目を集めたみよたんクエスト。みよたんクエスト誕生までの制作チームの秘話や苦労、こだわり、そしてプロジェクトを通して得たものとは。

今回はみよたんクエストを企画発案者でもある長野県御代田町町長の小園拓志さん、みよたんクエスト総合ディレクターの小島美里さん、Webデザイン担当の小田航平さんにお話を伺った。

前半は小園町長へのインタビューをもとにみよたんクエストが立ち上がるまでの経緯や思い、政策上の位置づけなどをお届けし、後半では制作面で中心的な役割を果たした小島さん、小田さんへのインタビューをお届けする。

御代田町町長 小園拓志

1977年(昭和52年)生まれ。御代田町(児玉区)在住。元北海道新聞記者。2018年9月に御代田町に移住し、2019年2月から御代田町町長を務めている。

みよたんクエスト総合ディレクター クリエイティブディレクター/ライター 小島美里

1989年生まれ。東京都の広告代理店で務めたのち結婚・子育てを機に長野県御代田町へ移住。妊娠出産を経て2020年1月にteam OHAYASHIを設立し、仲間と共に広告制作・広報コンサル業を展開している。

みよたんクエストWebデザイン 小田航平

1989年生まれ。愛知県出身、大学を出て就職を機に東京へ。雑誌の編集プロダクション、システム開発会社、編集者、ライター、不動産会社を経て、3年前に長野県に移住。現在はWEB制作やプロジェクトのディレクションなど事業を円滑に進めるための”翻訳者”として活躍している。

みよたんクエストはシムシティから着想を得た

小園 みよたんクエストの発想の根底にあるのは、シムシティという30年前くらい流行ったゲームでした。そのまちの市長になりまちづくりを運営するゲームは当時画期的でとても人気だったのですが、ちょうど2019年~2020年がゲーム発売から30年の節目だと昨年秋に気がつき「ふるさと納税でシムシティのようなことができないかな」と思ったのです。

しかしシムシティは若い世代には伝わらない。そこでスマホRPGが昨今流行っているのに着想を得て、ドラゴンクエストのようなお金や経験値が貯まり数値化されて、かつキャラクターが成長するようなものができないかと思い「みよたんクエスト」が誕生しました。御代田町のご当地キャラみよたんはオーソドックスでかわいいので、担当職員と話す中で展開可能性も強く感じました。

みよたんがレベルMAXになるために必要な金額は2億円

市長自身もゲームの「おさ」としてサイト上に登場する

小園 御代田町のふるさと納税は、私は就任する前の2018年度時点で4300万円ほどでした。それまでは6000万円台でしたが大阪府泉佐野市のニュースや返礼品の割合が4割→3割に落ちたことが要因です。他にも課題として御代田町はもっと掘り出せば魅力的な物産がたくさんあるのに掘り起こされていなかったり、人気商品が年度末前に欠品したりすることがありました。

昨年は返礼品の掘り起しによる新商品の開発と欠品しやすい人気商品の在庫管理などを行うことで、4,300万円ほどだった寄付額を1億900万円まで増やすことに成功しました。しかし満足することなくさらに寄付額を増やすために新たな展開をしなければならないと考え、みよたんクエストなどの新しい取り組みを2020年度は始めたのです。

2020年12月中旬現在、みよたんクエストで約7500万円が貯まっています。

さらに、みよたんのレベルがMAXの30に到達するには累計でおよそ2億円が必要です。つまりこの物語が終わるためには、どうしても2億円集める必要がある。特にラスボスを倒すためには6,000万円が必要です。年度末まで追加の策は行う予定なので、目標達成までの努力は手を緩めることなく行っていきたいと思います。

皆さんも、ぜひみよたんクエストで私たちと一緒に御代田町のまちづくりに参加してみてください。

みよたんクエストのはじまり

小島 町長のアイデアをもとに、私たちは構想をどう実現させるか考えながらサイト制作を進めました。

集まったお金が何のために使われているかが一目でわかる。ここまで使途を明確にしている自治体は全国でも珍しい。

小田 はじめにみよたんクエストの構想を聞いたとき、純粋に「おもしろそうだな」と思いました。この企画の目的は第一に「ふるさと納税の寄付金を集めること」、第二に「集めたお金の使途を見える化すること」とのことでした。

これまでゲームのサイトを作ったことはありませんでしたが、サイトを訪れた人がふるさと納税したくなるためにはどうすればいいかなと考えながら、町長や役場の皆さんの企画をもとにデザインを進めていきました。

キャラクターの進化と連動して現在の寄付金額を見える化していくことも決まり、Webデザインの方向性が決まりました。

小島 ふるさと納税の寄付サイトで行政がここまでエンタメ色強いことをやるのは全国初ではないかと思います。町長が掲げる「納税の見える化」という大事なテーマを崩さずに、見た人がおもしろいものをつくる。

「行政の真面目さ」と「ゲーム性」のバランスがどちらかに傾くとこの企画は成立しないので、デザイン面ではギリギリを詰めていくのがとても難しかったです。

Twitterの公式アカウントをフォローしておけば、いつでもキャラクターの進化や寄付の集まり具合がわかる

小田 つくる過程では苦労もありましたが、最終的には寄付金額が増えることでキャラクターが進化するのを楽しみに何度も訪れてもらえるサイトになったかなと。見て楽しんでもらえるようにTwitterのタイムラインを埋め込んだり、ボタンをゲームっぽくしたりしました。

限られた予算の中で見た人がハマる要素をどう作れるかは制作チームにとって難しい問いでしたが、やりがいも反響もありおもしろい仕事でしたね。

スキルをもつ移住者による協業がみよたんクエストのデザインのおもしろさにつながった

総合ディレクターの小島さん

小島 同年齢の移住者の皆さんと協業できたのは、とても貴重な経験でした。総合ディレクターの私も、Webデザインの小田さんも、ロゴを作ってくださった鈴木さんも、プログラマーも移住者。多様なスキルをもってこの地に集まった人が、一緒にひとつのものを作り上げたという経験は、次のステップにつながる大きな資産になりました。

田舎だとあの人も競合あの人も競合となってしまいがちですが、これからの時代は独立や独占ではダメで、協業しないと続かず成長も生まれないと思います。

小田 普段、小島さんと僕はディレクションという同じ仕事をしているので、お互い悩みがよくわかるんです。行政の仕事は、なかなか想像を超えるのが難しいものです。

だからこそ、制作チーム一同「こだわって協業でつくれば話題のサイトになるんだ」と示したかった。これがモデルケースになって全国でおもしろい取組が増えたらいいなと思います。

みよたんクエストリリース後の反響

小島 「めっちゃおもしろい!」「こんなの見たことない!」「新しい!」と多くの方に言っていただいています。また首都圏からも「納税したくなる!」という声が届いています。

小田 御代田町の町長はTwitterを画期的に使う方です(2020年12月15日現在のフォロワーはおよそ2,400人)。みよたんクエストはゲームサイトなので、ゲームが好きな人たちに情報を届けるため、町長のアイデアでNGT48のメンバーも巻き込んでTwitterを主戦場に盛り上げていきました。この戦略は結果的に成功し、見た人にはサイトのゲーム性を楽しんでもらい、ふるさと納税もしてもらっています。

小島 みよたんクエストはふるさと納税寄付サイトなので、基本的には外向けのサイトです。プロジェクトのおもしろさや魅力が、町に暮らしている人たちにも届いたらいいなと。そこは今後の課題かな感じています。

学生がつくった質の高いキャラクターも見どころのひとつ

岡学園トータルデザインアカデミーの学生さんがつくったキャラクターデザイン

小島 学生さんにはすごく感謝しています。今回は、学生さんにみよたんクエストでレベルアップすると登場する計31体のキャラクターの制作を依頼していますが、実はまだ31体全ては出来上がっていません。

ただ当初の予定よりも納税が早く集まり、スピードを上げてキャラクターを完成させてもらわないといけない状況にあるため、少し前にそのことを学校に提案しました。「今回はクオリティよりもスピード重視で…」と。そうしたら学校の先生から「自分たちは手を抜かないと生徒が言っています。なのでクオリティを落とすことはできません」「学生は授業を犠牲にして頑張っているから、何を得て何を捨てるのかの状態で頑張っています」とお返事がありました。

それを聞いたとき、涙が出そうになりました。皆さん、もうすでにプロの魂を持っているなと。引き続き一緒に頑張っていこうと思いましたし、学生の皆さんからはみよたんクエストをよりよいものにしていくパワーをもらっています。

小田 学生の皆さんの画のクオリティがとても高いので、それはみよたんクエストの見どころのひとつです。寄付がしっかり集まってキャラクターを全部公開できるかだけが心配ですが、30体全部見られるように引き続き頑張っていきたいですね。

小島 今回はコロナ禍のプロジェクトだったので、学生とのやり取り・アートディレクションは全てオンラインでした。全てのキャラクターにふるさと納税の特産品を持たせるというアイデアが途中で浮上し、プロジェクトが進み始めてからデザインの方向性を変更するなどオンラインではコミュニケーションがとりづらいこともありましたが、「オンラインでもここまでできるんだ!」ということもわかったプロジェクトでした。

まだ1度も学生さんとは会えていないのでプロジェクトが終わってコロナが落ち着いたら、直接会えるのが今から楽しみです。

御代田町から発信されるふるさと納税の新しい可能性

Webサイトでみるとこの龍が動いている。細かい部分へのこだわりがサイト全体のクオリティを高いものにしている

小田 みよたんクエストのWebデザインで皆さんに注目してもらいたいのは、動く龍、キャラクターたちが持っている納税品、そして進化していくキャラクターのデザインです。携わったメンバーのこだわりが細かいところに凝縮されています。

みよたんクエストの目的はふるさと納税の寄付を集めることと寄付金額の可視化なので、寄付金額に伴うキャラクターの進化もぜひ引き続き注目してほしいです。

御代田町役場の町民ホールで話す小島さん、小田さん

小島 小さな町でもかっこいいクリエイティブが成功したよ!ということを、多くの皆さんにみてほしいです。みよたんクエストの事例をみて、「行政と民間と学生が連携することでおもしろいアイデアが実現できる!」と、そんな刺激を全国の人に届けられたらなと思います。


官民学連携というと言葉は固いが、みよたんクエストはどのアクターが欠けても実現しなかった。新しいことを企画し挑戦していくエネルギーにあふれる町長をはじめとする行政、実践的な学びの中で成長していきたい学生、そしてスキルをもって移住し地域のためになる仕事をしたい移住者。それぞれが強みを発揮し弱みを補い合ったことで完成した「みよたんクエスト」は、制度開始から約10年が経ったふるさと納税の新たな可能性を全国に示した。

2021年3月末までに目標金額を全て集め、みよたんのレベルが30になる姿を見られるのか本記事だけでは伝わらないみよたんクエストのおもしろさはまだまだあるので、ぜひ実際にサイトから寄付をして皆さんにもみよたんクエストというゲームのパーティの一員になってみてほしい。

ふるさと納税についてもっと知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

この記事を書いた人

Masato ito

1996年長野県生まれ。大学在学中に自身が代表を務める事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。現在は一橋大学社会学研究科にて国内移住に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県を主なフィールドに観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・プランニング・調査・PRを多数手がける。2019年からは都内の企業と地方の企業や自治体をつなぐ新たな取り組みも開始。訪日観光客向け観光情報発信サイトNAGANO TRIP運営。池田町第六次総合計画審議委員。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など寄稿多数。2019年4月から東京都国立市と長野県池田町の2拠点居住実践中.