近年その言葉を聞くことが増えているサーキュラーエコノミー。サーキュラーエコノミーは廃棄物量を押さえたり、シェアリングしたり、再活用や資源のリサイクルを促進したりする循環型経済を指す概念です。
欧米諸国を中心にさまざまな企業も取り入れるサーキュラーエコノミーですが、いまだ日本では認知度も低くあまり取り入れる企業も多くありません。そこでこの記事ではサーキュラーエコノミーの基本情報を押さえると共に、日本企業の取り組み事例や日本の地方発のサーキュラーエコノミーの可能性を探ります。
また記事の中の各項目と関連するサーキュラーエコノミー関連本も適宜紹介していきます。興味ある方はぜひ購入して読んでみてください!まず初めにサーキュラーエコノミーの基本情報・概要を広く知りたい方はこちらの本がおすすめです。
サーキュラーエコノミーとは?-循環型経済-
サーキュラーエコノミーとは直訳すると「循環型経済」を意味します。消費社会を生きる私たちはこれまで、資源を掘り出し→つくり→使い→捨てるという「直線型経済」で暮らしてきました。サーキュラーエコノミーは、この直線の最後にある「捨てられるもの」を「新たな資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させるリユース経済を指すのです。
サーキュラーエコノミーは3R (Reduce減らす、Reuse再利用する、Recycleリサイクル)とは少し異なります。原材料を調達し製品をつくる段階から回収や資源の再利用を前提としており、廃棄ゼロを目指すのがサーキュラーエコノミーなのです。この循環型の製品設計は「サーキュラーデザイン」と呼ばれます。
ではなぜサーキュラーエコノミーに注目が集まるのでしょうか?大きな理由は人口増による資源の不足です。国連の推計によると2050年に世界人口は98億人になると推計されています。人口が増え今よりも豊かな人が増えれば、地球上の資源は足りなくなり持続可能な発展が難しくなるでしょう。今のままの直線型経済だと人類の危機と地球の危機を招くため、サーキュラーエコノミーが注目されているのです。国連が2030年を目標に達成を目指すSDGsとも密接に関わります。
サーキュラーエコノミー5つのビジネスアプローチ-アクセンチュアレポートより-
大手コンサルタント企業アクセンチュアは、120以上の企業を分析したうえで、サーキュラーエコノミーをビジネスに応用する方法を5つにまとめました。日本でも少しずつ広まりつつあるサーキュラーエコノミーは、ほぼすべてこの5つのどれかに当てはまるため新しい事業を考えたり先行事例を調べたりする際に参考にしてみてください。
- 再生型サプライ:100%再生・リサイクル可能、もしくは生物分解が可能な原材料を用いること
- 回収とリサイクル:従来は廃棄物とみなされたものを他の用途に活用することを前提に生産・消費する仕組みをつくる
- 製品寿命の延長:製品の回収と保守・改良を繰り返し行うことで、長く使えてかつ新しい価値を生み出す
- シェアリング・プラットフォーム:使用していない製品の貸し借り、共有、交換によってより効率的な製品・サービスの利用を可能にする
- サービスとしての製品:顧客を所有せずに利用に応じて支払う
サーキュラーエコノミー日本企業の実践事例
ここからは上記の内容に当てはまる事業を展開する日本の企業を紹介します。
株式会社ADDress 定額住み放題 多拠点生活プラットフォーム
1つ目は株式会社ADDressの定額住み放題 多拠点生活プラットフォームADDressです。「住宅」という消費経済で最も大きな商品は、地方の空き家増加により在り方が問題視されています。ADDressが実施する定額住み放題サービスはサーキュラーエコノミーアプローチの1つ「シェアリング・プラットフォーム」にあてはまります。使用されていない住宅をリノベーションし貸し借り・共有を実現することで地方の空き家問題を解決するADDressの事例は、シェアリングエコノミーの可能性を感じさせてくれます。
株式会社カネカ 生分解性ポリマーPHBH
2つ目は大阪に本社を置く株式会社カネカの事例です。カネカは海水中で分解される性質がある生分解性ポリマー「カネカ生分解性ポリマーPHBH」を開発しました。これは微生物が植物油を摂取して体内にためたポリマーで、微生物がつくる新しい時代のプラスチックといえます。自然界に存在する多くの微生物が分解し、最終的には炭酸ガスと水になる優れもの。再生型サプライアプローチを用いたサーキュラーエコノミーの事例として注目されています。
パレ・フタバ株式会社TAKUMIBA 洗える超伸縮フィットマスク
3つ目の事例は大阪府吹田市にあるパレ・フタバ株式会社線維製品部TAKUMIBAの事例です。TAKUMIBAは2020年3月に、コロナによる全国的なマスク不足緩和に向けて新しいマスクを販売しました。パレ・フタバは老舗日本製パンツメーカーであり、本業のストレッチパンツの素材を活用して「洗える超伸縮フィットマスク」を販売開始しました。
従来、マスクは使い捨てが主流でしたがコロナをキッカケに「洗って繰り返し使えるマスク」が普及しました。TAKUMIBAの事例は日本の地方企業のスキルを生かしたサーキュラーエコノミーアプローチだといえます。コロナのような社会的な危機はこれまでの経済の在り方を見直す機会になります。TAKUMIBAのようにコロナという社会的危機をきっかけにサーキュラーエコノミーを実践する企業が増えることに期待です。
最後に-サーキュラーエコノミーと日本企業・地方の可能性–
2020年時点では日本の地方企業がサーキュラーエコノミーを前面に押し出した取り組みは、まだあまり多くありません。取り組みが増えない1つ目の理由は認知度です。日経×TECHの調査によると、約6割の人がサーキュラーエコノミーを知らない実態があります。
2つ目の課題はコストです。サーキュラーエコノミー実現のために新たに投資をする余裕が無かったり、投資をしたとしてもそれがどれだけ利益に結び付くか不確実だったりすることが理由として挙げられます。
しかし実は日本の地方は伝統的にサーキュラーエコノミーを取り入れ生活を豊かにしている側面もあります。農業での家庭ごみの堆肥化や発酵食品産業は最たる事例です。伝統的な技術を生かしたサーキュラーエコノミーのアプローチが今後、日本の地方から誕生していくことに期待です。
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参考資料
・日経×TECH
・パレ・フタバ株式会社TAKUMIBA
・株式会社カネカ
・アクセンチュアレポートレポート
・国連推計