1月12日の東洋経済オンラインの記事『40代男性「生活費8000円」田舎暮らしで得た快感 20年間憧れていた暮らしに踏み切った結果』が話題を呼んでいる。
1か月の生活費は約8000円という40代男性の田舎暮らしは、老後資金が約2000万円足りなくなるとの金融庁の報告書が波紋を広げた2019年のニュースに対する1つの解答としてプラスに捉えられる一方で、極端な田舎暮らしの事例で共感性がないといった声も聞かれる。
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生活費の節約にはゴールがない
「目標だった1万円は割と簡単に達成できたので、次は経費節減がどこまで進められるのか。5000円が次の目標になる。こんな暮らしをどこまで続けられるのかというのも興味がある」
東洋経済オンライン|40代男性「生活費8000円」田舎暮らしで得た快感 20年間憧れていた暮らしに踏み切った結果
男性は田舎で暮らすなかで、生活費を極限まで節約し経費節減することを楽しんでいる。その楽しさは「今月はこんなに節約できた!」「今月は8000円で暮らせたから先月よりも生活費が2000円浮いた!」という目標達成からくるものだろう。
「○○円で1か月暮らす」という数字として示された目標は「生活費を節約する=お金をできる限りつかわずに暮らす」という目的を表している。産業革命以降「資本主義のシステムから逃れ自然の近くでお金を使わずに暮らしたい」という層は、いつの時代も一定数いる。
「倹約・節約」と「たくさん稼ぐこと」は本質的に同じ
「節約する」という目的は、お金から逃れようとしながら結局逃れられない人間の姿を表している。
お金はもともと物と物を交換するための手段であった。しかし資本主義経済が発展する中で、手段であったお金を増やし貯蓄することが「目的」になった。これが、資本論でK, マルクス指摘した資本主義の本質的な問題点である。
男性の「生活費をできるかぎり節約する」という目的は、結局お金から逃れられていない。お金を増やすことを目的にする苦痛からは解放されたかもしれないが、お金というモノサシを自身の快感の指標としていることに変わりはないのである。男性の快楽は田舎暮らしによってもたらされたものではなくお金によってもたらされた快感なのだ。
大切なのは自分なりの幸福のモノサシを持つこと
本記事は決して記事の男性を批判することを目的としたものではない。お金にとらわれない生き方の実践を目的に田舎暮らしをすることは、大都市でお金を増やすことを目的に生きることと本質的には変わらない。都市にいても田舎にいても資本主義のシステムから逃れることは現代日本では難しく、お金がある一定ラインの幸福を担保する面もある。
大切なのは「今の自分には、どの程度のお金が必要か」を1度じっくり考えてみることである。田舎暮らしにあこがれ地方に移住したいと思っている方は、ぜひ1度「大切にしたいことは何か=自分が何に価値見出すのか」を整理してみてほしい。人生のモノサシは1つじゃない。
※本記事をキッカケに議論になっている「田舎と都会どっちのほうが生活するのにお金がかかるのか?」にはここでは触れなかったが、それも個々人のライフスタイルと実現したい生活レベルと住む地域によるとしか言えないので「どちらが」と議論することにはあまり意味がないように思う。
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