【書評】『共感資本社会を生きる-共感が「お金」になる時代の新しい生き方-』から考える「幸せ」

共感資本社会

本書で対談する株式会社ポケットマルシェ代表取締役CEO/「東北食べる通信」創刊編集長の高橋博之氏株式会社eumo代表取締役/鎌倉投信株式会社ファウンダーの荒井和宏氏が、一貫して語っているのは幸福論である。金銭的に豊かになってきた私たちは果たして幸せなのか、不確実性と多様性を排除して残るものは私たちに幸福をもたらすのか、両者の答えはNOである。

副題は『共感が「お金」になる時代新しい生き方』だが、多様な尺度がある中の一つがお金であって共感がお金になるというよりも、共感もお金も○○も△△も…と多数の尺度が機能する世の中になるための方法が両者の体験に基づいて展開されている。

大手メディアによる資本主義の限界に関する特集が話題になったり、多額のお金によって狂わされた人々のニュースがあふれたりするこの世の中に対して疑問を抱く人におすすめの本書。本記事では本書の中で特に響いた4つのポイントを抜粋しわかりやすくかみ砕き伝えていく。

お金の量をものさしに生きている人々は測れなくなることが怖い

お金は一つの尺度に過ぎないが、資本主義経済が世界中に広まった今の世の中ではお金で測れるものが価値あるものであり、お金の量が多いものがより価値があるものということになっている。

お金という尺度で社会を測る代表はGDPである。しかしGDPは病人が増えれば増えるほど拡大するし、犯罪率が増えれば増えるほどGDPも拡大する。これではモノが増えることが幸せだった時代には豊かさを測れたが、モノが満ちてきたこの世の中では正確なものさしとして機能しない。

これまで多くの日本人は お金をものさしに頑張ってきた。自分たちが頼りにしていたものさしが使えなくなってきているという事実は、多くの人にとってある種の怖さを感じることだろうと高橋は述べる。なぜなら、そのものさしの中で勝ち組の人にとってものさしをひっくり返すことは、その人の人生そのものを否定することになるからである。

これはKAYAKURA読者の興味関心にひきつけると、地域でも同じことが起こっているし観光でも同じことが起こっている。

人口増加と所得税の増加だけを目的に運営してきた行政、観光客数を増やすことだけを頑張ってきた観光事業者、新しい道路と鉄道を通すことだけを目標に頑張ってきた地域の有力者、彼らはこの指標が住民の豊かさと幸福度を測るものさしとして機能しにくくなっていることに気がついていない。いや、気がついていても怖いから気がつかないふりをしているだけかもしれない。

私たちは、ものさしをアップグレードする勇気を持たなければならない。

良好な人間関係が幸福や人生の豊かさをもたらすという事実

新井氏は本文の中でハーバード・メディカル・スクールが75年以上にわたって実施している「成人発達井研究」を引用している。この研究によると、幸福や人生の豊かさをもたらすものとして、他のいかなる要因よりも「よい人間関係」にかかっていることを示している。

多様性がある世のなかにおける関係性にフォーカスしていかなければ私たちは幸せになれないことは、世界で最も権威あるメディカル・スクールの研究によって証明されている。しかしこの世の中はお金や各種合理化によって、その関係性を奪うような行為やめんどくさい行為を排除しようとしている。

すべては関係性。人と人の関係性を分断するような仕組みは変えていかなければならないと両氏は主張する。

共感のスタートは知ること、知ることで多くは解決する

共感の正反対にあるものは差別や偏見だろう。では、なぜ差別や偏見は生まれるのか。それは知らないことによる恐怖感である。人は知らないものは恐く感じ、知っているものはあまり恐く感じない傾向にある。本書の主題にもなっている共感がお金になり新しい資本になる社会をつくるためには、多くを知り視野を広げることが何よりも重要だと両氏は言う。

大きな災害が起こったとき、多くのボランティアが被災地を訪れ多くの人が募金をする。それは彼らが被災地の現状をメディアやマスコミを通して知ったからである。災害が起こっていることを知らない人はボランティアに行かないし募金することもない。

人種差別や偏見も同じである。東京都新宿区大久保にある多くの人種の子どもが通う学校で行われた調査によると、子どもの頃から多様性ある社会で育つと子どもたちは人種で偏見や差別をすることが少なくなるという。

知り合いに肌の違う子がいたり、話す言葉が違う子がいたり、異なる家庭環境の子がいたりと、自分と異なる人がたくさんいて考え方や価値観が違うという事実=多様性が世の中にあることを知ることが偏見や差別をなくすための第1歩であり共感資本社会への第1歩なのである。

お金の切れ目が縁の切れ目じゃなく、お金の切れ目が縁の始まりになるように

新井氏は「強い共感というのは、お互いがお互いを尊重、リスペクトする関係性から生まれてくる」と強く感じているという。それは、買ってもらう、お金を出す、決済する、モノを渡すという行為には存在しないものである。

関係性にフォーカスすることが大切だと高橋氏との議論を通してより強く思ったという新井氏は、関係性を強めるために何か活動していくことが必要だという。それは、お金の切れ目が人間関係の始まりになるようなもの、つまりお金が無くても存在する関係性をつくることなのだろう。

いままでは「お金の切れ目が縁の切れ目」といわれてきたが、そうじゃなくて「お金の切れ目が縁の始まり」になるような仕組みや活動がもっと広がっていったら、もっと幸せで本当の意味で豊かな社会が訪れる。もちろん、お金は今のままあってもいい。ただ、お金以外の選択肢があったらもっとよくなるんじゃないだろうか。

これは紛れもない事実であり、多くの人が理解していることだろう。なぜなら「あなたにとって一番大切なものはなんですか?」と問われたときに「お金・財産」と答える人はたったの4%に過ぎないことが統計数理研究所の調査で明らかになっている。「家族」「命」「友達」と答える人のほうが圧倒的に多いのがみんなの本心なのである。

共感を切り口に応用性が高い議論が展開される本書は多くの人におすすめ

共感資本社会

「共感資本社会」と文字列だけ見ると難しそうと思う人もいるかもしれないが、本書は全く難しい本ではない。ページ数もそこまで多くなく文字も大きい、2人の対談で進んでいくので難し言い回しも出てこない。

「お金」とタイトルに入っているからタイトルだけ見ると「自己啓発とか新種のビジネス本か?」と思う人もいるかもしれない。しかし本書は1つのカテゴリーに括られない応用性が非常に高い内容であることを保証する。自身がいま興味関心を持っていることにひきつけて読んでみるのがおすすめだ。

中には従来の価値観や一般的な価値観では「え?」と思う部分も多くあるだろう。これも多様性である。何が正しいとか何が間違っているわけではなく「今の時代にこういう考え方の人もいるんだなぁ」と読んで思うだけでも価値があるだろうし、批判的に読むことで得られるものは多くある本書。ぜひ1度読んでみてはいかがだろうか。

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この記事を書いた人

KAYAKURA 編集部

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