2020年地方移住動向を東京圏在住1万人対象インターネット調査結果から読み解く

政府はこの度、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)在住の1万人を対象にしたインターネット調査の結果をまとめました。調査結果では「東京圏以外の地方で暮らすことに関心を持っているとの回答が全体の49.8%を占めたほか、若い層ほど関心が高い傾向も浮かんできたとのこと。しかしこの数値だけみても過去の数値より低いのか高いのかよく分かりません。

本調査の概要は未だ公表されていませんが、コロナ後の地方移住に関する国の広報戦略にも活かされる今回の調査結果と2018年の類似した調査の結果を比較検討することで、2020年2月時点での地方移住動向を読み解いていきます。なお本記事では教頭通信社他複数メディアの調査結果を寄せ集めて分析材料としています。

コロナ後の地方移住について興味関心がある方はこちらの記事もご覧ください。

政府の地方移住に関するインターネット調査結果の概要

政府は2020年1月30日~2月3日に東京圏に住む20~50代を対象にアンケートしました。(本アンケートの調査対象者に10代と60代以上が含まれていない点は注意が必要)

この調査の中で地方暮らしに「関心がある」と答えたのは15.6%、「やや関心がある」が15.5%、「気にはなっている」が18.7%、「関心がない」「あまり関心がない」は計47.0%でした。

地方移住への具体的な行動に関する設問では、地方移住を具体的に計画している「計画層」は222人(対象者全体の約2.2%)、情報収集している「検討層」は1147人(対象者全体の約11.8%)、興味はあるが行動していない「関心層」は3612人(対象者全体の約36.1%)、関心のない「非意向層」は4697人(対象者全体の約47%)でした。

それぞれの平均年齢をみていくと、非意向層が41.3歳、検討層が40.4歳、関心層が40.1歳なのに対し、計画層は35.7歳と最も低く、年齢が若いほど移住の意向が高い傾向がうかがえます。

地方暮らしに関心を持つ人に複数回答で理由を聞いたところ「豊かな自然環境がある」が54.8%でトップ。つづいて「生まれ育った地域で暮らしたい」が16.2%、「東京圏での生活が合っていない」11.1%となりました。

過去の調査結果との比較分析

2018年10月に行われた『東京都在住者の今後の暮らしに関する意向調査』との比較を通して、今回の調査結果を分析していきます。

地方移住への興味関心については過去の調査より約10%上昇

2018年の調査では東京都から地方へ移住した人が計38.4%でした。具体的には10年以内の移住希望が9.4%、5年以内が6.1%、1年以内が1.2%となっており、漠然と地方移住に興味関心ある層は約4割にのぼるものの、具体的に計画している人は全体の約7%~約16%でした。

最新の調査結果では、地方暮らしに「関心がある」「やや関心がある」「気にはなっている」の合計が49.8%となっており、調査対象年齢や規模に違いはあるものの約11%の増加がみられます。

地方移住への具体的な行動をとっている人の割合は過去の調査と大きな変化なし

2018年の調査は年数から具体性を換算し、今回は行動から具体性を換算しているため単純な比較はできないことを断ったうえで地方移住への具体性についてもみていきます。

最新の政府による調査では、地方移住を具体的に計画している「計画層」は対象者全体の約2.2%、情報収集している「検討層」は対象者全体の約11.8%、興味はあるが行動していない「関心層」は対象者全体の約36.1%でした。

2018年の調査では10年以内の移住希望が9.4%、5年以内が6.1%、1年以内が1.2%でした。最新調査の具体的な行動を行っている「計画層」と「検討層」の合計は14%、2018年の調査で10年以内の移住希望者合計は16.7%、5年以内の移住希望者合計は7.3%だったことを踏まえると、具体的な行動を行っている層には過去の調査とそこまで変化がないことが多少強引ですが読み取れます。

これらの比較から各種メディアが地方移住を取り上げることで地方移住自体の認知度が上がり地方移住への興味関心をいだく層が増えた一方、具体的な行動に移る層の数はそこまで変わっていないことが予想できます。地方移住をさらに加速させるためには、地方移住興味関心層を行動に移す施策が国や地方自治体には求められます。

地方暮らしに関心を持つ理由は

最新の調査では、地方暮らしに関心を持つ理由は上位から「豊かな自然環境がある」が54.8%、「生まれ育った地域で暮らしたい」が16.2%、「東京圏での生活が合っていない」11.1%の順となりました。こちらは2018年の調査ではどうだったのでしょうか。

2018年の調査では東京都以外への移住を検討した理由について「出身地であるから」が36.2%、「スローライフを実現したいから」が31.9%、「食べ物や水、空気が美味しいから」が23.2%、「東京は生活コスト(物価、光熱費、住居費など)が高いから」が21.9%と1位~4位までつづいていました。

2つの調査では設問も対象者も異なるため単純に比較はできませんが、自然環境以外の理由でどちらも「生まれ育った地域で暮らしたい/出身地であるから」と「東京圏での生活が合っていない/東京は生活コストが高い」が入っていることから、Uターン促進施策や東京圏にネガティブな感覚を持つ層への直接的なアプローチ(首都圏での移住相談説明会)などの施策が今後も効果的であることが予想されます。

まとめ-新型コロナウイルス後の地方移住動向に注目-

政府の1万人を対象としたインターネット調査は新型コロナウイルスが日本で本格的に拡大する前に実施されたため、新型コロナウイルスによって広まったリモートワークや都市生活のリスク顕在化の影響はあまり反映されていません。私のまわりで地方移住の相談に乗っている人のもとには、コロナ前よりも多くの相談がきているといった声も聞かれています。今後の地方移住動向に注目です。

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。