「若者の移住」調査結果から読み解く-地方移住を妨げている要因とは?-

美麻 長野県

地方への移住に興味関心があっても、なかなか一歩踏み出せない人は多いかと思います。ある調査によると東京都に住む人のうちおよそ5割前後の人が、地方移住をしたい、もしくは興味関心があると答えています。しかし、実際に地方に移住する人は限られているのが現実です。つまり、そこには「潜在的な移住希望者層」と「実際に移住した層」があり、この二つ(アクションするかしないか)には大きな差があるということが分かります。

そこで、本記事では2017年に一般社団法人 移住・交流推進機が株式会社共同通信社に委託して実施した「若者の移住」調査結果レポートを参照しながら、地方移住したいけど妨げている要因を検討していきます。 (参照資料はこちらに掲載されています。)

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地方への移住を妨げている大きな要因をカテゴリー別に分類すると…

仕事関連と人間関係関連が共に5割弱

地方移住に関心を持ちつつ移住に至らない要因について尋ねたところ、カテゴリー別に要因として数値が高いものから見ていくと、仕事関連が48,4%人間関係関連が44,2%、情報不足関連が34,8%、コスト関連が25,4%、よく考えるとそもそも移住が不要が11,2%という結果になりました。

他の調査でもよく指摘されますが、昨今は住まいよりも仕事関連が移住を妨げる最大の要因となることが多くあります。移住先では求める給料水準に達する仕事が無かったり、移住先では専門性を生かせないというのがその内訳です。

仕事関連につづいて移住に至らない要素になっているのが人間関係に関連するものです。田舎の人間関係が不安だったり、子育て環境が変化することへの不安だったり、現在の人間関係を維持したかったりとその要因は様々です。移り住むということは、移った先での関係性に対する心配もさることながら、これまでに構築されてきた関係性をどう今後扱うかという課題も浮かんできます。これは、移り住んだ先と元々住んでいた場所の距離もよるかと思いますが、バランスのよい人間関係の維持ができることばかりではないことを頭に入れておく必要はあるかもしれません。

移住に踏み出すために大切なのは「取捨選択」と「順位付け」

新しい土地に移り住むときに、上記のようなものが実際のアクションを妨げる要因となることが明らかになりました。ここで押さえておきたいのは、何かを選択する場合、何もかも手に入れることはできないので取捨選択する必要があるということです。「東京での給与水準」をあきらめる代わりに「よりスローな働き方が実現できる」かもしれないですし、「東京での質の高い教育と子育て環境」をあきらめる代わりに「自然の中でのびのび自由に子どもが遊べる環境」が手に入るかもしれません。

先ほどは触れなかった移住を妨げる要因の中に「移住したい気もするけど、どこから手を付けていいのかわからない」という項目を21,2%の人が選択していました。何事もはじめは「なんとなく」からスタートします。この「なんとなくのモチベーション」を「実際にできることから行動する」際の手助けとなるのが「順位付け」です。

「何のために移住したのか」という目的をまずしっかりと設定したうえで、「何の項目が自分は譲れないのか(仕事、給料、人間関係、家の種類、都会との距離など)」を順位付けしましょう。そして、実際に移住先を選ぶ際は優先順位が高い項目から理想と合っているかを照らし合わせ確認すると同時に、譲れる部分に関しては取捨選択の必要を念頭に置き切り捨てることもときには必要です。そのときには後悔もあるかもしれませんが、のちのち生活し始めてみると案外気にならなかったりもします。

「取捨選択」と「順位付け」を通して移住を妨げる要因をつぶす

移住者を受け入れる側の地方市町村は、これまで見てきたような順位付けと取捨選択には個人差があり多様性があることを認識したうえで、多様なパターンの移住を可能にするような道を常にいくつか選択肢として用意しておくことが重要になります。

全体の25,4%しか妨げる要因ではないといったコスト関連ですが、4人に1人はコスト関連の課題を抱えているということにもなります。この場合のコストとは、家を購入するコストのこともあれば、子育て教育にかかるコストのこともあれば、交通費のようなコストのこともあるでしょう。コストの多様性を場合分けして検討しそれぞれの対策と補償を常に用意しておくことで、要因をつぶし移住へのハードルを低くすることが可能になります。

移住を妨げる要因が「なぜ要因なのか」を考えよう!

最後に、ここまで見てきた移住を妨げる要因が「なぜ要因となるのか」を再検討することが大切です。「東京での生活と比べた際に収入の減少が要因」とか「田舎の人間関係の内実がよく分からないから不安」といったように、なぜそれが要因なのか、本当にそれは妨げる要因なのかを再検討することで実際にするべきアクションが明らかになると思います。少しでも移住へのハードルを低くするために、要因が一つずつ解決されていくといいですね!

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この記事を書いた人

Masato ito

国際大学GLOCOM研究員/講師。1996年、長野県出身。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科、日本学術振興会特別研究員を経て2024年より現職。専門は地域社会学・地域政策学。研究分野は、地方移住・移住定住政策研究、地方農山村のまちづくり研究、観光交流や関係人口など人の移動と地域に関する研究。多数の地域連携/地域活性化事業の立ち上げに携わり、2事業が長野県地域発元気づくり大賞を受賞。日本テレビDaydayやAbema Prime News、毎日新聞をはじめ、メディアにも多数出演・掲載。